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夏祭り

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「迦具土、踊りっていつまで続くの?」

「祝詞はもう終わりだが、いつ終わるのやらな……」

「え?」

「踊らせておけば大人しいから何も言うなよ?」

「言うも何も……そこにほぼ裸の女の人が……」

指を指すと、「ゲッ!」と言って席を立って俺の後ろに隠れてくるのはいいが、しっかりと焼きそばは確保している。

「相も変わらず失礼じゃのぅ。して、この子供はなんじゃ?」

「うるせー!服を切ろ服!」

「あぁ、大国殿から服の支給はあったのじゃが、暑苦しそうじゃったから……」

「頼むから着てくれ……」

仕方ないと、どこから出したのか薄い水色の浴衣を着て、迦具土の座っていた場所にちゃっかりと座っている。

「あ、天宇受売命様ですよね?踊りは……?」

「ちぃっと休憩じゃ。今は姿を現しておるから人にも見える。その食べ物はなんじゃ?」

まだ開けていなかった焼きそばと割り箸を渡すと、蓋を開けて一口食べて、美味じゃ!と今度は見た目と違ってがっついているのを、みんなで見ているしかなかった。

この人が天岩戸を開けた天宇受売命 あめのうずめのみこと

確か借りた本には、ほぼ裸状態で何も隠さずに大胆に踊ったとか、大国さんと同じ国産みの方へと変わったとかなんとか……あれ?結婚したんだっけ?

「坊主、もしや私のことを考えておるのか?」

「え?いや、天岩戸を踊りで開けた人なんだなぁって」

「まあな。八意のジジイの作戦で、矛や鏡なんかを作る者、岩戸を開けるものと色んな神が来ておったが、本に書いてあることと事実は違う所もある。その棒に刺さっておるのはなんじゃ?」

「フランクフルトと言って、このケチャップとマスタードを……あああああ!」

言い終わる前に、赤と黄色のボトルを二つ持ち、ブチューッと思いっきりかけ、パクッと一口。

「かっらー!辛い!目がっ!目がっ!」

「大丈夫でございますか?お茶をどうぞ」

「すまぬなご婦人」

ぐびぐびと飲んで、これはなんの辛だ?とボトルを見ながら文句を言い、続けて迦具土を見る。

「こいつ、翔平が十七代当主だ。で、この二人が翔平の祖父母で、あっちに座ってるのが兄の純平と石長比売 いわながひめだ」

「ほぉ、二人ともいい男よの。じゃが、迦具土。何故逃げたのじゃ?」

「逃げた?迦具土が?」

「そうじゃ。こやつが殺される前にしたことを、えーと、翔平じゃったか?そなたは聞いたのか?」

「あ、はい。簡単に……火の中で一週間いたとか」

「そうじゃ。それほどこの家族が好きじゃったのだろうが、その時に私が、あまりにも苦しい顔をしておるのでな、舞を舞ってやってたのに、こやつ、文句ばかりでのぅ。つまらんことばかりいいよって!」

いやいや、かなり怖がっていた火の中に一週間いて、それを邪魔されたなら普通は怒るだろう?

神様たちは一体何をやっているのやら……

祖父母も挨拶を済ませると、「そんなに畏まらずとも良い」というその姿は、本で読んだのとかなり印象が違い、かなりフレンドリーだが、迦具土だけは根に持ってるのかずっと不貞腐れていた。
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