67 / 103
旅
.
しおりを挟む
鍛治職人の部屋を出て、外の広場へと出る。ここは前にも来たので記憶にはあるが、改めて高台になっている庭から下の景色を見ると、城の周りはたくさんの建物が建っていて、賑やかそうに見える。
「ノアの家もこの辺りにあるの?」
「はい。普段姫様がいない時はこちらの方で生活をしていました。それに、私はまだ祖父について学んでいた時期でもありましたので、城の図書室などよく利用したものです」
「いつから出かけるか決めてる?」
「何時からでも奏太様の体調次第でと考えてますが」
「だったら、今から行こうか!」
「いまからですか?私は構いませんが、幻界の事をもっと知ってからでも良いのでは?」
「人間界にはゲームってのがあって、冒険者のゲームは何も分からないところから始まるんだ。武器もご飯もなくて、レベル上げながら進んでいくんだけど、何かそれの現実バージョンみたいでさ」
「はぁ……では1度陛下の元へ挨拶に行かないといけません」
「分かった」
王の間に行き、すぐに出かけたいと話をすると、思った通りと言われ、地図と小さな袋に入ったお金。こちらの一般の服が渡された。
「人間界の服では目立ちます。着替えてから行きなさい。お金は幻通貨。ノアに聞くといいでしょう。地図も同様に。あなたが成長して帰ってくるのを待っていますね。それと、これを……」
渡されたのは銀色の掌ほどの札。
「本当に困った時に使いなさい。各地域に人間界でいう役場があります。それには私の刻印がおしてあるので、必ず助けてくれます。使うも使わないも自由。ノア、あとは頼みましたよ。何かあればすぐに帰還しなさい」
「御意」
そのままお礼を言って、部屋に戻って着替え、馬車のある所まで行く。
馬2頭に農家で使われるような荷台に上だけ雨が降っても良いように丈夫な布がかけられている。
積荷は水・パン・毛布・天幕・着替え一式のみ。
前に座り、手網をノアが持って城を出る。
「御者台にも上に雨避けがあってよかったね」
「はい、東は春の場ですが、夏のところへ行くと必ず日除けは必要になりますし、雨の多い地域もありますので」
「ノアは全部行ったことはあるの?」
「大抵は。奥の方まで入ったことはありませんが」
その後、四つにわかれたエリアの大まかなことを聞き、ノアが家によって残りの必要なものを取りに行くと言うので家の近くに馬車を止め一緒に中までついていく。
「あら?ノアじゃない?」
まだ若い女性が洗濯物を取りこんでいる手を止め、こちらに向かって走ってくる。
「やだ、どうしたの?その子誰?待ってて、母様呼んでくるから」
止める間もなく家の中へと入っていってしまったので、誰?と聞くと、「姉です」と言われた。
中へ入ろうとした所で少しふっくらとした女性が出てくるなりノアに抱きつく。
「あの……離してもらっていいですか?」
「あ……あんたお暇出されたのかい?」
「何を言ってるんですか!荷物を取りに来ただけです。置きっぱなしにしていた……」
「その子は?」
「父上から聞いてませんか?奏太様です」
「ノアの家もこの辺りにあるの?」
「はい。普段姫様がいない時はこちらの方で生活をしていました。それに、私はまだ祖父について学んでいた時期でもありましたので、城の図書室などよく利用したものです」
「いつから出かけるか決めてる?」
「何時からでも奏太様の体調次第でと考えてますが」
「だったら、今から行こうか!」
「いまからですか?私は構いませんが、幻界の事をもっと知ってからでも良いのでは?」
「人間界にはゲームってのがあって、冒険者のゲームは何も分からないところから始まるんだ。武器もご飯もなくて、レベル上げながら進んでいくんだけど、何かそれの現実バージョンみたいでさ」
「はぁ……では1度陛下の元へ挨拶に行かないといけません」
「分かった」
王の間に行き、すぐに出かけたいと話をすると、思った通りと言われ、地図と小さな袋に入ったお金。こちらの一般の服が渡された。
「人間界の服では目立ちます。着替えてから行きなさい。お金は幻通貨。ノアに聞くといいでしょう。地図も同様に。あなたが成長して帰ってくるのを待っていますね。それと、これを……」
渡されたのは銀色の掌ほどの札。
「本当に困った時に使いなさい。各地域に人間界でいう役場があります。それには私の刻印がおしてあるので、必ず助けてくれます。使うも使わないも自由。ノア、あとは頼みましたよ。何かあればすぐに帰還しなさい」
「御意」
そのままお礼を言って、部屋に戻って着替え、馬車のある所まで行く。
馬2頭に農家で使われるような荷台に上だけ雨が降っても良いように丈夫な布がかけられている。
積荷は水・パン・毛布・天幕・着替え一式のみ。
前に座り、手網をノアが持って城を出る。
「御者台にも上に雨避けがあってよかったね」
「はい、東は春の場ですが、夏のところへ行くと必ず日除けは必要になりますし、雨の多い地域もありますので」
「ノアは全部行ったことはあるの?」
「大抵は。奥の方まで入ったことはありませんが」
その後、四つにわかれたエリアの大まかなことを聞き、ノアが家によって残りの必要なものを取りに行くと言うので家の近くに馬車を止め一緒に中までついていく。
「あら?ノアじゃない?」
まだ若い女性が洗濯物を取りこんでいる手を止め、こちらに向かって走ってくる。
「やだ、どうしたの?その子誰?待ってて、母様呼んでくるから」
止める間もなく家の中へと入っていってしまったので、誰?と聞くと、「姉です」と言われた。
中へ入ろうとした所で少しふっくらとした女性が出てくるなりノアに抱きつく。
「あの……離してもらっていいですか?」
「あ……あんたお暇出されたのかい?」
「何を言ってるんですか!荷物を取りに来ただけです。置きっぱなしにしていた……」
「その子は?」
「父上から聞いてませんか?奏太様です」
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
下宿屋 東風荘 3
浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※
下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。
毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。
そして雪翔を息子に迎えこれからの生活を夢見るも、天狐となった冬弥は修行でなかなか下宿に戻れず。
その間に息子の雪翔は高校生になりはしたが、離れていたために苦労している息子を助けることも出来ず、後悔ばかりしていたが、やっとの事で再会を果たし、新しく下宿屋を建て替えるが___
※※※※※
下宿屋 東風荘 5
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆
下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。
車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。
そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。
彼にも何かの能力が?
そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__
雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!?
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。
下宿屋 東風荘 6
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*°☆.。.:*・°☆*:..
楽しい旅行のあと、陰陽師を名乗る男から奇襲を受けた下宿屋 東風荘。
それぞれの社のお狐達が守ってくれる中、幼馴染航平もお狐様の養子となり、新たに新学期を迎えるが______
雪翔に平穏な日々はいつ訪れるのか……
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆
表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。
天満堂へようこそ 6
浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚
寂れた商店街から発展を遂げ、今やTVでCMも流れるほどに有名になった天満堂薬店。
その薬は人間のお客様は、天満堂薬店まで。
人外の方はご予約の日に、本社横「BAR TENMAN」までお越しください。
どんなお薬でもお作りします。
※材料高価買取
※口外禁止
※現金のみ取り扱い(日本円のみ可)
※その他診察も致します
天界で王子のお披露目の最中に起こった出来事。
新王子奏太が襲われ、犯人は過去に捕えられ狭間の世界へと送りこまれたリアムだったが……
天満堂へようこそ5の続編となります。
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚
天満堂へようこそ 7 Final
浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚
寂れた商店街の薬屋から始まり、今は全国チェーンにまで発展した天満堂だが、人でないものの薬はやはりバーの奥にある専用の薬屋へ。
全ての界がやっと落ち着き日常に戻った奏太達。
次に待ち構えるのは魔物か!それとも薬局にやってくるおば様軍団か!
ほのぼのコメディファンタジー第7弾。
※薬の材料高価買取
※症状に合わせて薬を作ります
※支払いは日本円現金のみ
※ご予約受付中 0120-×××-○○○
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚
天満堂へようこそ 5
浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚
寂れた商店街から発展を遂げ、今やTVでCMも流れるほどに有名になった天満堂薬店。
その薬は人間のお客様は、天満堂薬店まで。
人外の方はご予約の日に、本社横「BAR TENMAN」までお越しください。
どんなお薬でもお作りします。
※材料高価買取
※口外禁止
※現金のみ取り扱い(日本円のみ可)
※その他診察も致します
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚
妖古書堂のグルメな店主
浅井 ことは
キャラ文芸
裏路地にある小汚い古本屋
店主はいつもテーブルに座って本を読んでいるだけ。
立ち読みにはいいかと寄ったのが運の尽き。突然「うちで働いてみませんか?」と声をかけられたのは良いものの、本の整理をするバイトだと思っていたら____
下宿屋 東風荘
浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。
ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。
その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで?
妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。
※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。
※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。
読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。
エブリスタ様にて。
2017年SKYHIGH文庫最終選考。
2018年ほっこり特集掲載作品
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる