天満堂へようこそ 3

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
56 / 103
モデル

.

しおりを挟む
久しぶりに副社長室に行き、今日のスケジュールを聞く。
このスケジュールを持ってくるオジサンに体の方は大丈夫かと聞かれたので、そう言えばそういう事になっていたなと思いだし、大丈夫とだけ告げる。

「本日は完成品が手元に来るそうですので、10時から全員で放送を見た後、次の商品について話し合いが行われます。その後昼食を挟み、開発部の部長と商品について話がありますが、形だけの挨拶でしょう。その後は前の天満堂の方へ行くようにと社長から連絡が入っています」

「え?何かあったのかな?」

「資料もなにもないのですが、ただ行くようにとだけありますので……」

「わかった。ちょっとコーヒー飲む時間ぐらいある?」

「お待ちください」

少ししてアイスコーヒーが出てくる。

「ホットでも構わないんだけど」

「汗をかいていましたので」

「あぁ、これね。スーツって暑くない?あ!そのタイピンしてくれてるんだ!」

「はい。兄もしておりました」

会議室へ行くと、10人の役員とルーカス、ニコルも揃っていて、すでにテレビは着いたままにしてあった。

「副社長もモデルデビューですな」

「はい?」

「これが届いたんだ。昨日の今日で一応見本だってさ。あとこれが商品」とカレーポットなどがテーブルに並んでいる。

ルーカスに渡されたのは昨日撮影したカタログ。
表に付箋が張ってあり『昨日はお疲れさまでした。見本となりますのでご確認ください。まさか副社長だなんて知らなかったからごめんねぇ』と書かれていたので。即刻取り外しノアに渡す。

「昨日?」

「やめて!傷口に塩を塗る発言な気がする!」

「ノア?」

「ルーカス様がお帰りになられた後__」と事細かに報告するのを聞いて吐き気さえ覚えてしまった。

ルーカスはのんきに笑っているがこちらはそれどころではない。

「毎月一回は会うんだよ?俺一人じゃ無理だし、ムーもいいなって言ってたからさ、一緒だと安心かもと思って」

「おばさまに囲まれるよりましだろ?」

「気持ちがわかった気がするんだけど」

「俺も昼から前の天満に行くように言われてるから、終わったら連絡くれ」と頭を指差す。

「でも俺うまくできないかも。ムーとは慣れてるからできるんだけど」

「何でも練習。ほら、結月が来た。座れ!」

促された場所は社長席のとなり。結月は静かにしてみていろと一括してテレビに食いついている。

俺とルーカスだけ下を向きまともに見ることはできないが、みんなが拍手しているのだけはわかる。

「この放送は朝の6時半頃、10時、15時に行われる。すでに2回分放送は終了したが、今回だけは数量は決めていなかったため一番目の放送ですでに注文数が500を越えた。この開発に携わったのは副社長だ。前回のお玉やこの食器などもだ。まだまだ子供だとバカにしているものもいると思うが、これが結果だ!今後結果も出さずに胡座だけかいている奴はいらんからそのつもりでいろ」

「結月さん……」

「ここでは社長だ馬鹿者。なんだ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆ 下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。 車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。 そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。 彼にも何かの能力が? そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__ 雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!? ☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆ イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。

天満堂へようこそ 7 Final

浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚ 寂れた商店街の薬屋から始まり、今は全国チェーンにまで発展した天満堂だが、人でないものの薬はやはりバーの奥にある専用の薬屋へ。 全ての界がやっと落ち着き日常に戻った奏太達。 次に待ち構えるのは魔物か!それとも薬局にやってくるおば様軍団か! ほのぼのコメディファンタジー第7弾。 ※薬の材料高価買取 ※症状に合わせて薬を作ります ※支払いは日本円現金のみ ※ご予約受付中 0120-×××-○○○ ♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

天満堂へようこそ

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 『寂れた商店街にある薬屋、天満堂。 昼夜を問わずやって来る客は、近所のおばぁちゃんから、妖怪、妖精、魔界の王子に、天界の王子まで!? 日常と非日常の境界に存在する天満堂にようこそ!しっとりほのぼのファンタジー!』 エブリスタにて。 2016年10月13日新作セレクション。 2018年9月28日SKYHIGH中間発表・優秀作品100に入りました。 ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. *薬の材料高価買い取り *秘密厳守 *お代金は日本円でお願いします。 *返品お断りいたします。

妖古書堂のグルメな店主

浅井 ことは
キャラ文芸
裏路地にある小汚い古本屋 店主はいつもテーブルに座って本を読んでいるだけ。 立ち読みにはいいかと寄ったのが運の尽き。突然「うちで働いてみませんか?」と声をかけられたのは良いものの、本の整理をするバイトだと思っていたら____

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

処理中です...