天満堂へようこそ 3

浅井 ことは

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BAR TENMAN

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「今からだが、客は後一人だけだ。ムーは心配だろうから帰るか?」

「いいの?」

「爺が見てはいるだろうが、お前の方がいいだろう。帰ったらフレッドにムーの診察頼んで診てもらえ」

「うん、ありがとう。今から行っても良い?」

「あぁ、明日はここ任せるからな!」

「わかった、ニコルさんご馳走さま!また作ってね!ノア、行こう」

それだけ言うと車が来る時間さえも待ち通しく、急いで自宅に向かう。

ただいまと言いながらも部屋へ急ぎ、ベッドで寝ているムーに近付く。

「お帰りなさいませ。今連絡をしようと……」

「ムーは?」

「また呼吸が浅くなり、姫様に連絡をと思っていたところでして……」

「フレッドさん!」

「すぐに見ます。すみませんが、熱湯をいただけませんか?洗面器に二つ分ほど」

「すぐにご用意致します」

「何で?朝水ちゃんと飲んだのに」

「どのくらい飲みました?吐いたりは?」

「吐かなかった。その水差しで半分無いぐらいは飲んだよ」

「取り合えず包帯を外しますが……」

「俺大丈夫だから、ムーの近くにいる」

フレッドが包帯を取り外し傷口を見ていく。

傷口は見た感じはちゃんと縫われていておかしな所は無いように思える。
聴診器をあて、フレッドが色々と見ているが、医学の事は全くわかっていないためただ見ているしかない。
お湯がきて、綺麗に傷口を洗った後、消毒をし包帯を巻く。

「湯タンポなどはありませんか?体が冷えているのでとにかく暖めた方がいいと思います。このまま下がればそのまま……」

「田中さん!ある?湯タンポ」

「ペットボトルなどにお湯をいれてタオルで巻くのでも良いです。いくつか用意してほしいのですが」

「すぐに」

「私も手伝ってきます」とノアも出ていく。

「なんで?ムー大丈夫だって言ってたのに……」

「熱が下がって一気に体が冷えたことによるものだと思いますし、犬ですので人間のように食事などの管理も大変です。うちのドラゴンも大分時間がかかりましたので」

「暖めてどうしたら良い?」

「しばらくこちらにお世話になれませんか?」

「俺は良いけど」

「湯タンポとペットボトルのお湯をいれたものです」とノアが持ってきてくれたものをムーの側にいくつも置いていく。

「犬の体温は38度から40度近くあります。それが普通なのですが、かなり冷えているのでこまめに取り替え、脱水が怖いので今から点滴を致します。結月さんが戻られたらまた指示を仰ぎますが、一先ずはこまめに取り替えて暖めてあげることです」
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