天満堂へようこそ 3

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
32 / 103
BAR TENMAN

.

しおりを挟む
「なぁ、何でみんなあんなにお金あるの?前も聞いたことあるけど」

「ここに来る奴らは何かしら質屋に入れたりして金を作る者もいるが、大半は人間界で仕事してる奴が多い。あの玉藻は高級クラブのママだから金には困らないだろう」

「そんなもんなの?」

「万能薬で1回分が10万。これは常連の値段だが、新規の客はその3倍と手数料をもらう。高いのはやはり材料費だな……私がたまに幻界に帰る約束で定期的に材料を運んでもらえることになった。天魔界も同様にな。ただ、手に入れるのが難しい材料は値段も高くなる」

「何となくわかるけど」

「奏太、これだけはよく覚えておけ。ここは薬屋だ。1つ配合を間違えれば毒にもなる。客の要望は必ず聞かなくてもいい。察しろ!眠る様に死ぬ薬と言われたら、眠剤を出せばいい。文句がきても、人によって効き方が違うとでも言えばいい」

「でもそれってさ、詐欺じゃん」

「ものは考えようだ。ノア、そう言う事だ」

「分かりました」

「俺、ぜんっぜん分かんないんですけど?」

「なぁ……」

「なんだルーカス?」

「俺バーの方行ってくる」

「あぁ。ニコルに後で奏太紹介するから」

「じゃあ奏太もつれてくぞ?ノアも来い」

「ですが……」

「いいから行け。次の客はこちらでしておく」

扉を開けてすぐのカウンターに腰を下ろす。
カウンターは10席程で、丸いテーブルが3つ置いてあり、程よいスペースが取られている奥にはソファ席。

「ニコル、こいつが奏太。ニコルは俺の配下で本来はお付なんだ」

「そう言えばルーカスさんのお付きみたことなかったけど」

こいつだ、と指を指す。

「ご挨拶が遅れて申し訳ありません。いつもこのバカ王子がご迷惑をおかけしまして……」

「バカ王子?」

「はい。ルーカス様の事ですが何か?」

「お付きの人って言わないよね?俺も言われたことないし、結月さんも……」

「そりゃそうだ。こんなこと言うのこいつぐらいだからな」

「そうですね。と言うか、今日の予約。今からくるお客様のこと話したんですか?」

「忘れてた……」

「ボケ王子ですね!いつもそうだから馬鹿だ阿呆だと言われるんです!」

「お前なぁ、一応でいいから敬え!」

「敬ってますよ?あ、奏太様はコーラでよろしかったですか?」

「あ、うん。ありがとう」

「ほら、これが王子です!」

「あーわかったわかった。俺ビールな」

「まだ夜ではありません」

そう言うとコーラの瓶を栓がついたまま置く。
俺にはちゃんとグラスが付いてきたのに。

「ノア様は……」

「ノアで結構です」

「では私のこともニコルと。剣の腕は魔界まで聞こえてます。紅茶でいいですか?冷えたものしかありませんが」

「ありがとうございます。剣の方はニコルさんも同じく噂を……」

「なんだ?お前ら知り合いか?」

「違うが、同じ剣を扱うと各界で名が知れ渡るもんだ。覚えとけバカ王子!」

「あの、今から来るお客って?」

「私が一応受付をし、販売客と買取客と時間の予定を組んでいます。今からは買取ですが、持ち込みといえば持ち込みですが、ちょっと特殊でして」

「どういうこと?」

「見られますか?」

「話だけでいいよ。見たらダメな気がするから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※ 下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。 毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。 そして雪翔を息子に迎えこれからの生活を夢見るも、天狐となった冬弥は修行でなかなか下宿に戻れず。 その間に息子の雪翔は高校生になりはしたが、離れていたために苦労している息子を助けることも出来ず、後悔ばかりしていたが、やっとの事で再会を果たし、新しく下宿屋を建て替えるが___ ※※※※※

下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆ 下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。 車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。 そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。 彼にも何かの能力が? そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__ 雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!? ☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆ イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。

下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*°☆.。.:*・°☆*:.. 楽しい旅行のあと、陰陽師を名乗る男から奇襲を受けた下宿屋 東風荘。 それぞれの社のお狐達が守ってくれる中、幼馴染航平もお狐様の養子となり、新たに新学期を迎えるが______ 雪翔に平穏な日々はいつ訪れるのか…… ☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆ 表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。

天満堂へようこそ 6

浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚ 寂れた商店街から発展を遂げ、今やTVでCMも流れるほどに有名になった天満堂薬店。 その薬は人間のお客様は、天満堂薬店まで。 人外の方はご予約の日に、本社横「BAR TENMAN」までお越しください。 どんなお薬でもお作りします。 ※材料高価買取 ※口外禁止 ※現金のみ取り扱い(日本円のみ可) ※その他診察も致します 天界で王子のお披露目の最中に起こった出来事。 新王子奏太が襲われ、犯人は過去に捕えられ狭間の世界へと送りこまれたリアムだったが…… 天満堂へようこそ5の続編となります。 ♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚

天満堂へようこそ 7 Final

浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚ 寂れた商店街の薬屋から始まり、今は全国チェーンにまで発展した天満堂だが、人でないものの薬はやはりバーの奥にある専用の薬屋へ。 全ての界がやっと落ち着き日常に戻った奏太達。 次に待ち構えるのは魔物か!それとも薬局にやってくるおば様軍団か! ほのぼのコメディファンタジー第7弾。 ※薬の材料高価買取 ※症状に合わせて薬を作ります ※支払いは日本円現金のみ ※ご予約受付中 0120-×××-○○○ ♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚

妖古書堂のグルメな店主

浅井 ことは
キャラ文芸
裏路地にある小汚い古本屋 店主はいつもテーブルに座って本を読んでいるだけ。 立ち読みにはいいかと寄ったのが運の尽き。突然「うちで働いてみませんか?」と声をかけられたのは良いものの、本の整理をするバイトだと思っていたら____

天満堂へようこそ 5

浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚ 寂れた商店街から発展を遂げ、今やTVでCMも流れるほどに有名になった天満堂薬店。 その薬は人間のお客様は、天満堂薬店まで。 人外の方はご予約の日に、本社横「BAR TENMAN」までお越しください。 どんなお薬でもお作りします。 ※材料高価買取 ※口外禁止 ※現金のみ取り扱い(日本円のみ可) ※その他診察も致します ♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚

下宿屋 東風荘

浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。 ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。 その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで? 妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。 ※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。 ※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。 読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。 エブリスタ様にて。 2017年SKYHIGH文庫最終選考。 2018年ほっこり特集掲載作品

処理中です...