上 下
10 / 40
天満堂薬店

.

しおりを挟む
今まで高笑いばかりして、何を開発していると思っていたら、胃薬……

材料は聞かない方がいいと思い、ひとまず麻袋から出して中を見る。

「くっさ!」

「あ、それは今日の予約の客の薬だ。丸薬はこっち。七日分、一日一粒だ。五万以下で売るなよ?顧客リストの上客……黒のファイルの客には三万で売れ。一月分を三万で十二万にはなるし。それと、その薬の期限は一月と言え。次に買いに来る時どこか悪ければ、ほかの薬も売れる」

「まぁ、適当に売るけど……バラ売りは?」

「無い」

「あのさ、これ売るのはいいんだけど……やっぱり俺が売るの?」

「当たり前だ!ルーカスも一度は向こうに戻らないといけないから私と交代だし、売れるうちに売って置かんとな!ハーッハッハッハ」

先が思いやられると思いながらも作業場に荷物を運んで、リストを見ながら仕分けし、材料の補充をしていく。

新しい粉もあり、それぞれに効能が書いてあったので、ノートに分量など書き写し、いつもの場所にしまう。

終わった!と言ってカウンターからコーラを出して、パンパンに氷を入れたグラスに注いで飲む。

「ただいま戻りました」

「あ、コーラもらったよ。ごめんね、馬鹿な姉で……本当は休みなのに」

「いえ、病院にいてもすることもないので。それに帰ってからのことを話し合って、産後との事もあるので魔界へ帰します」

「ニコルさんはどうするの?」

「着いていきますがすぐに帰ってきます」

「そーたー!この馬鹿者がぁー!」との大きな声に裏へ行くと、前に邪魔だったので万能薬の入った小鍋を違うところに移したからか、妙に怒っている。

「何?」

「これはここなんだ!動かすな!それと、このノートはなんだ!」

「薬の作り方のノートだけど?」

「私のより綺麗に書くなぁ!」

「そんな事言われてもさ……中身は間違ってないじゃん!ちゃんと作ってるんだから文句言わないでよね!」

「ちくしょう!ニコル、私はそんなに雑か?」

「ど、何方かと言えば……細かいことは苦手なのではないかと」

「まぁ、冗談は置いておいてだな……」と次は知らん顔をしながら、あの二人が来る。と言われて身構える。

「へ、蛇の人たち……」

「そうだ。かなり溜まってるらしくてな、毒を出し切っても、顎の腫れを引かせる薬が必要になる。毒出しの間にお前が作れ」

「えー!」

「字が綺麗なバツだ!」

その後もグチグチ言われそうだと一度家に帰って着替え、エールラに晩ご飯はいらないと伝えて家を出る。

車で移動するのは楽だが、スーツではなく普通のジーンズ姿で高級車に乗るのは気が引けるとノアと苦笑いし、結月が来たことによって明るくなったと話している間に店につく。

「ちょっと!何一人だけ食べてるの?」

「ん?腹ごしらえだ。何かと作り置きしたくてな。ここで少し作る」

「あの小鍋で?」

「奥にもう少し大きい鍋があるからそれで。煙は出ないようにするから問題は無いだろう?」

そう言ってエビピラフをガツガツと食べている姿はやはり姫……女王陛下では無い。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あやかし旅籠 ちょっぴり不思議なお宿の広報担当になりました

水縞しま
キャラ文芸
旧題:あやかし旅籠~にぎやか動画とほっこり山菜ごはん~ 第6回キャラ文芸大賞【奨励賞】作品です。 ◇◇◇◇ 廃墟系動画クリエーターとして生計を立てる私、御崎小夏(みさきこなつ)はある日、撮影で訪れた廃村でめずらしいものを見つける。つやつやとした草で編まれたそれは、強い力が宿る茅の輪だった。茅の輪に触れたことで、あやかしの姿が見えるようになってしまい……! 廃村で出会った糸引き女(おっとり美形男性)が営む旅籠屋は、どうやら経営が傾いているらしい。私は山菜料理をごちそうになったお礼も兼ねて、旅籠「紬屋」のCM制作を決意する。CMの効果はすぐにあらわれお客さんが来てくれたのだけど、客のひとりである三つ目小僧にねだられて、あやかし専門チャンネルを開設することに。 デパコスを愛するイマドキ女子の雪女、枕を返すことに執念を燃やす枕返し、お遍路さんスタイルの小豆婆。個性豊かなあやかしを撮影する日々は思いのほか楽しい。けれど、私には廃墟を撮影し続けている理由があって……。 愛が重い美形あやかし×少しクールなにんげん女子のお話。 ほっこりおいしい山菜レシピもあります。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 令和のはじめ。  めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。  同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。  酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。  休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。  職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。  おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。  庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。

【NL】花姫様を司る。※R-15

コウサカチヅル
キャラ文芸
 神社の跡取りとして生まれた美しい青年と、その地を護る愛らしい女神の、許されざる物語。 ✿✿✿✿✿  シリアスときどきギャグの現代ファンタジー短編作品です。基本的に愛が重すぎる男性主人公の視点でお話は展開してゆきます。少しでもお楽しみいただけましたら幸いです(*´ω`)💖 ✿✿✿✿✿ ※こちらの作品は『カクヨム』様にも投稿させていただいております。

お狐様とひと月ごはん 〜屋敷神のあやかしさんにお嫁入り?〜

織部ソマリ
キャラ文芸
『美詞(みこと)、あんた失業中だから暇でしょう? しばらく田舎のおばあちゃん家に行ってくれない?』 ◆突然の母からの連絡は、亡き祖母のお願い事を果たす為だった。その願いとは『庭の祠のお狐様を、ひと月ご所望のごはんでもてなしてほしい』というもの。そして早速、山奥のお屋敷へ向かった美詞の前に現れたのは、真っ白い平安時代のような装束を着た――銀髪狐耳の男!? ◆彼の名は銀(しろがね)『家護りの妖狐』である彼は、十年に一度『世話人』から食事をいただき力を回復・補充させるのだという。今回の『世話人』は美詞。  しかし世話人は、百年に一度だけ『お狐様の嫁』となる習わしで、美詞はその百年目の世話人だった。嫁は望まないと言う銀だったが、どれだけ美味しい食事を作っても力が回復しない。逆に衰えるばかり。  そして美詞は決意する。ひと月の間だけの、期間限定の嫁入りを――。 ◆三百年生きたお狐様と、妖狐見習いの子狐たち。それに竈神や台所用品の付喪神たちと、美味しいごはんを作って過ごす、賑やかで優しいひと月のお話。 ◆『第3回キャラ文芸大賞』奨励賞をいただきました!ありがとうございました!

八百万の学校 其の弐

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. 神様にお仕えする家系の第十七代目当主となった佐野翔平。 引退した祖父に、勘のいい祖母。 鈍感な兄をも巻き込み、家族みんなで神様のお悩み相談!? そして家事を極めんとする火之迦具土神。 そんなほのぼのファンタジー其の弐!開幕!!! ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:.. ※イラストの無断使用は禁止です。

天満堂へようこそ 2

浅井 ことは
キャラ文芸
寂れた商店街から引っ越した薬屋。 前までは近所のおばぁちゃんしか来ないような小さな薬屋が今では奥様から人外にまで人気の薬屋に。 昼夜関係なく色々なお客が訪れ、 色々な薬を買っていく。 風邪薬から惚れ薬。 その他ご要望にお応えします。 *薬の材料高価買い取り *秘密厳守 *お代金は日本円でお願いします。 *返品お断りいたします。 そう書かれた部屋に入った人たちの願いは叶うのか?

処理中です...