下宿屋 東風荘 4

浅井 ことは

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夏休み~狐の国の異邦人

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「僕は血が繋がってないし」

「それは関係ないんですよね?私の子、現役の天狐の子と言うだけで狙われます。子供やめます?」

「やだ!やめないし、赤ちゃんも守るもん!」

「ホホホッ!おじいさんの負けですねぇ。私達は先に上がって、東屋におりますからね」

「腹の子は冷やすなよ!」

「ほほほほほ」

「あの笑い方の時、おばあちゃんの勝ち!って感じがするんだけど」

「婆さんには儂も勝てん……」

「私も栞さんには負けますね……」

「二人共お酒ばっかり飲むからだよ……幸さんの赤ちゃんに、お爺ちゃんお酒くさいって言われたらどうするの?冬弥さんもパパ臭いって言われたら、栞さんと僕達で赤ちゃんに会わせないからね?」

「そ、それは困ります!」

「雪翔の勝ちじゃな。それより、雪翔よ。あの髪の色は外国人じゃからか?」

「お母さんがね、外国の人なんだよ。お父さんは日本人。航平ちゃんはお母さんに似てるよ?髪の色は薄目だと思うけど」

「染めておるのかと思うたわ」

「抜いたらダメだからね?痛いんだから」

「雪翔とよく似た力か……となると、昴がここに連れてきたのも分かるのぅ」

「僕もうのぼせそう。出てもいい?」

「ひとりで行けるのか?儂等も出よう!」

ゴシゴシと体を拭いて服を着て、なにか飲み物ないかなとキョロキョロしていたら、周太郎がペットボトルの冷たい水をくれた。

「ありがとう、これどうしたの?」

「那智様が大量に送ってくださいまして、浮遊城にも何本か持ってきて、ここの裏の川で冷やしておきました」

「儂等にもくれ。茶はないのか?」

「ございます。少しお待ちください」と走って出ていく。

「那智も気が利くようになりましたねぇ」とお茶を飲みながら冬弥が言うと、祖父は早く嫁を貰わんと……と見合いの話があると冬弥に言っている。

「那智さんて、なんで結婚しないの?」

「那智はですねぇ、狐の国ではアイドルですよ?『アレ』がアイドル!」

「お爺ちゃん……意味わからない……」

「この国は四つに分かれておって、数年に1度各地で美男美女コンテストとか言うものが昔からあるんじゃ。各エリアから選ばれた四人の男女で中心の城の前で決めるんじゃが、那智は幼少・少年・青年の三冠王者よ」

「凄い。カッコイイもんね!」

「栞さんも、少女の部で一度優勝してますよ?」

「えーと、幼少は幾つまで?とかあるの?」

東屋に向かって進みながら話を聞くと、幼少は6~12歳。少年少女が13~18歳。青年が20~25歳と分けられているという。

「冬弥さんは出なかったの?」

東屋に着いて、お婆ちゃん達もペットボトルを持っていたので、ちゃんと水分はとっているんだと安心してから栞さんを見る。

「冬弥はねぇ、違う年に参加させて、ちゃんと五冠王ですよ?」

「母上!」

「いいじゃないの。昔のことでしょう?」

「五冠王って、えーーー!」

「那智と違う年に無理やり応募されていましてねぇ、家の一族で総取りだなどと父上たちに巻き込まれたんですよ。私と那智は」

「その時の冬弥は凛々しかったのにねぇ……那智も可愛かったのに」

「私の出た少女の部と、冬弥様の出た青年部が同じ年で、それで私お父様にお願いして見合いを……」

「栞さんの一目惚れだったのー!なんですぐ結婚しなかったの?冬弥さん待たせるだけ待たせるなんて酷い!」

「そう言われてもですねぇ……総合優勝で那智も私も三冠王者と五冠王ですよ?終わったあとは逃げるんです。それに人間界にすぐ帰りましたから、最初全く知らなくてですねぇ……」と頭をかいている。

「じゃあ、狐の国一番の美男美女の夫婦って事?」

「そうなるの?」

「だから那智のところにもお見合い写真だけは売るほど来てますよ?」

「美男美女だなんて……ふふっ」

「栞さん……」

「あ!忘れてました。私、那智様の追っかけ隊をお祭りの時に見ました。また増えたなぁって思っていただけなんですけど、そんなにこちらに来れるものなのでしょうか?」

「何ですかそれは!私のところにはきませんよ?」

「来てました!お酒を飲んで後ろ向いてるからわからなかったんじゃないですか?」

「全く、女に興味が無いのぅ。お主ら二人は……」

「お爺ちゃんが浮気者みたいに聞こえちゃうよ?」

「はっはっは!ばぁさん以上の美人しか相手にせんわ!」

「居なかったんでしょう?ほほほ」

「お婆ちゃんが怖い!」
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