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港町
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那智も見に来て、珍しいが飼うことは出来ないので森に返してやれというので、仕方なく近くの木に止まらせる。
「今から爺さんが海から壺を引き上げるが見るか?」
「うん、見る!」
みんなのいるところまで行くと、金と銀は一本ずつ紐を持って頑張って引き上げており、上がってきた壺の中にはイカやタコによく似た生き物が入っていた。
「タコとイカ?」
「見た目もよく似ているし味も変わらんぞ」
「僕も手伝ってくる!」
そう言ってみんなと一緒に残りの壺を引き上げ、中を出してからまた海の中に放り込む。
「大漁だね」
「今日はよく掛かっておる」
「いつもは?」
「必要な分だけとった後は壺の中で活かしておいて、毎日捕れた順から食べておった」
「入らない日もあるの?」
「そりゃある。だから、干して干物にして置いてあるぞ?」
「何でもできるんだね」
「だから不自由はしておらん。たまに見に来る船乗りは那智の家のものもおるで、米や調味料は運んでくれるし、裏には畑もあるでな。野菜にも困らん」
「後で見に行ってもいい?」
「明日の朝にとるからその時でいいじゃろう?今の時間からはイルカが沖の方に帰るでそれを見たらいい」
日が沈みかけてきて、イルカが時折ジャンプしながら沖に帰っていくのを見てから那智のところに戻る。
「今日はいいもの見れたろう?」
「うん、海に落とされた時はどうなるかと思ったけど」
「明日も落としてやる」
「泳げないって言ってるのに!」
「イルカがいるだろう?」
「でも……」
それより、中に入ってくれと言われて中に入ると、ちゃんと晩御飯ができていて、魚介をふんだんに使った炊き込みご飯に、イカ素麺。野菜のサラダにも茹でたエビが乗っていて、味噌汁にも貝が入っている。
「凄い!」
「南ならではだがな」
いただきますと言ってから、すぐ翡翠がオネダリしてくるのでまたエビだろうと小さくちぎる。
「爺さん、東の話は聞いたか?」
「聞いておるよ。島には来た形跡がないで大丈夫じゃろ?」
「俺では全体はわからんからな……」とちらっと重次を見る。
「まだ調査中です」
「ここも広いからな……」
ご飯を食べていると白い貝殻を綺麗に蓋したキーホルダーを貰って、中でなにか音がすると言ったら、真珠が入っているという。
「そのカバンについているのと同じようなのがいいと思って短くしたが、まだ何も施してはおらん」
「施す?」
「その中に自分の念を込めておくのじゃ。お守りになる」
「ありがとうございます」
真っ白な貝殻のキーホルダーをカバンにつけて、ご飯を食べてから、ずっと気になっていたことを聞く。
「那智さんとお爺さんの関係って……」
「俺から見て曾祖父だ」
「ええ?そうだったの?」
「気づくだろう?」
「全然?みんなの話からは全く……知り合いなのかなって」
「元々、爺さんと婆さんでは種が違ったんだ。それは特に問題もなかったんだが、これでもかなりの高齢だからな、みんな戻すことに躍起になっている」
「僕から見たらひいひいお爺さん?冬弥さんのお父さんのお父さんのお父さん……」
「深く考えんでも良い。儂ももう術はそうそう使えんし、動きも鈍い。だが、まだ耄碌しておらん。ここでゆっくり時が来るのを待ちたいのじゃ」
そう聞くと少し悲しくなるが、お爺さんの願いであるなら聞いてあげた方がいいのかもしれない。
「今から爺さんが海から壺を引き上げるが見るか?」
「うん、見る!」
みんなのいるところまで行くと、金と銀は一本ずつ紐を持って頑張って引き上げており、上がってきた壺の中にはイカやタコによく似た生き物が入っていた。
「タコとイカ?」
「見た目もよく似ているし味も変わらんぞ」
「僕も手伝ってくる!」
そう言ってみんなと一緒に残りの壺を引き上げ、中を出してからまた海の中に放り込む。
「大漁だね」
「今日はよく掛かっておる」
「いつもは?」
「必要な分だけとった後は壺の中で活かしておいて、毎日捕れた順から食べておった」
「入らない日もあるの?」
「そりゃある。だから、干して干物にして置いてあるぞ?」
「何でもできるんだね」
「だから不自由はしておらん。たまに見に来る船乗りは那智の家のものもおるで、米や調味料は運んでくれるし、裏には畑もあるでな。野菜にも困らん」
「後で見に行ってもいい?」
「明日の朝にとるからその時でいいじゃろう?今の時間からはイルカが沖の方に帰るでそれを見たらいい」
日が沈みかけてきて、イルカが時折ジャンプしながら沖に帰っていくのを見てから那智のところに戻る。
「今日はいいもの見れたろう?」
「うん、海に落とされた時はどうなるかと思ったけど」
「明日も落としてやる」
「泳げないって言ってるのに!」
「イルカがいるだろう?」
「でも……」
それより、中に入ってくれと言われて中に入ると、ちゃんと晩御飯ができていて、魚介をふんだんに使った炊き込みご飯に、イカ素麺。野菜のサラダにも茹でたエビが乗っていて、味噌汁にも貝が入っている。
「凄い!」
「南ならではだがな」
いただきますと言ってから、すぐ翡翠がオネダリしてくるのでまたエビだろうと小さくちぎる。
「爺さん、東の話は聞いたか?」
「聞いておるよ。島には来た形跡がないで大丈夫じゃろ?」
「俺では全体はわからんからな……」とちらっと重次を見る。
「まだ調査中です」
「ここも広いからな……」
ご飯を食べていると白い貝殻を綺麗に蓋したキーホルダーを貰って、中でなにか音がすると言ったら、真珠が入っているという。
「そのカバンについているのと同じようなのがいいと思って短くしたが、まだ何も施してはおらん」
「施す?」
「その中に自分の念を込めておくのじゃ。お守りになる」
「ありがとうございます」
真っ白な貝殻のキーホルダーをカバンにつけて、ご飯を食べてから、ずっと気になっていたことを聞く。
「那智さんとお爺さんの関係って……」
「俺から見て曾祖父だ」
「ええ?そうだったの?」
「気づくだろう?」
「全然?みんなの話からは全く……知り合いなのかなって」
「元々、爺さんと婆さんでは種が違ったんだ。それは特に問題もなかったんだが、これでもかなりの高齢だからな、みんな戻すことに躍起になっている」
「僕から見たらひいひいお爺さん?冬弥さんのお父さんのお父さんのお父さん……」
「深く考えんでも良い。儂ももう術はそうそう使えんし、動きも鈍い。だが、まだ耄碌しておらん。ここでゆっくり時が来るのを待ちたいのじゃ」
そう聞くと少し悲しくなるが、お爺さんの願いであるなら聞いてあげた方がいいのかもしれない。
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