栗花落と姫と妖と……

水の神

.

「おい！」

「秋穂さん」

「寛ぎすぎだろう」と栗花落のコーヒーを取り上げて疲れと一気に飲む。

「おかわり！」

「甘めにします」

「森だが、目が覚めるまでは病室に移すのはやめておく」

「珍しいな」

「怪我酷いんですか？」

「怪我はそうでも無いんだ。体温が低いから少しづつ温めていてね。あ、命に別状は無いよ。彼はかなり体力もあるし。ただ、窓からかな？ガラス片が刺さっていたのは窓を割って川に沈む前に逃げ出した時のだろうけど、足にも深い傷があって、それがガラス傷と一致しない」

「葉子にも話したのか？」

「話した。気丈な人だよ。命が無事なら足の一本や二本て笑ってたから」

「それで、事故という事で処理は父がすると思いますが……」

「ツテを使って警察にもちゃんと根回しだろ？」

「私、難しい話わかんないから、葉子さんの所行ってもいい？」

「三階のナースセンター前にいますよ」

「姫、必要なものを取りに一度帰ると思うので、一緒に帰ると伝えてください。車は葉子さんの私物なので」

「わかった！」

院長室を出てエレベーターで三階を押して降りると、ナースセンターの前で手続きをしていた葉子さんが気付いてくれた。

「姫愛様」

「必要なもの取りに帰るでしょ？みんなで帰ろうって」

「はい。心配をおかけしました」

「森さん、何があったんだろう」

「栗花落様が調べてくださいますから」

目は赤くなっていたが、すぐに取りに帰りたいというのでみんなに連絡をして車で戻り、落ち着くまでは家の事はいいと栗花落が言ったので、冷水筒の水を持って行ってもらって葉子さんはそのまま車でまた病院へ。