上 下
186 / 215
水の神

.

しおりを挟む
リビングに行くと春が栗花落と電話をしていて、スピーカーにしてくれる。

『姫、疲れなどありませんか?』

「無いけど」

『私はまだ帰れないんです。今日は春とどこかで食事してきてください。春はお酒禁止で』

「分かってる。森はどうだ?」

『全く連絡がつきません。調べてますからすぐ分かると思ったんですが』

「そうか。電車の件は話した通りだ。後から疲れが出る場合もあるから近くで飯は食うが……初デートだな」

『それは許しま……』

ツーッツーッ

「意地悪」

「栗花落の反応が面白い」

どこに行きたいか聞かれたが、また着替えるのも嫌なので、「ファミレスとかないの?」と聞く。

「ちょっと待ってくれよ」

地図を出してマンション付近を見ると、ファミレスが二軒。
近い方で良いかと歩いて行ったが、電車のこともあり着いた時にはちょうど夕食に来ている家族連れも多い。

「懐かしい!ドリンクバーとサラダバーがあるー」

「それは付けるとして、何にする?」

「悩むなぁ。このチーズハンバーグセットにする」

注文を済ませてドリンクとサラダを取りに行き、チーズハンバーグも堪能する。

「たまにはいいかも。葉子さん達にもたまには休んでもらってみんな出来たらいいんじゃない?」

「そうだな。それにしてもこんなに連絡つかないってのが俺は気になるんだが」

「うん、いつも時間通りなのに……」

食後のドリンクにコーヒーではなくコーラを持ってきて、春に今日のことを聞いてみる。

「あの水なんだけど、川の水があんなに沢山来てたって事は、川が干上がったりしてないかな」

「無い無い。多少俺の力を加えてたとはいえ、あれは姫愛の力だ。水神、龍の化身と言われてる瀬織津姫ならば川の水程度は風呂桶みたいに扱えるだろ」

「風呂桶……」

「そのペンダントの石のおかげだな」

「そうだね。まだ信じられないけど」

あまり考え込むなと言われ、会計をしてのんびりと歩いていると春に着信が入る。

「もしもし」

こちらをチラチラと見ていたが、直ぐに「今から向かう」と言ってマンションの葉子さんの家に行く。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

下っ端妃は逃げ出したい

都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー 庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。 そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。 しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

小さな幸せで良かったのに

みおな
恋愛
 小さな幸せを望んでいただけだったのに。  幸せを望んではいけなかったのでしょうか?

処理中です...