栗花落と姫と妖と……

水の神

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「カフェか。寄るか？」

「いい……聞いてたでしょ？」

「まあ……な。気にすんな、あれは姫愛のせいでは無い」

「そうだとしても、あんなことがなかったら友達とこんなオシャレな所で喋ったり、美味しい物食べたりしてたのかなって」

「まだ二年近くあるだろ？そのうち来れる」

「うん」

駅から一度葉子さんに電話をすると、森さんとは連絡がつかないと心配そうな声。

「俺だ。今日は家の方は良いから自宅で待機してろ」

『ですが……』

「構わん。何かあれば連絡してくれ」と切ってしまう。

「いいの？」

「俺達もだが、あの夫婦は神でもなんでもない普通の人間だぞ？」

「どうしたんだろうね森さん」

「気にはなるが……。おい、マンションの方はこっちだ」

つい実家の方の改札前に行ってしまったが、マンションは反対方向。

春について行って改札で切符を買って久しぶりに電車に乗るが、下校時なので色んな学校の生徒が乗っていて思っていたより混雑している。

「結構遠いね」

「姫愛の家は電車だと一駅か」

「うん。だから歩いて登校してたの。混むのも苦手だから」

「購買も嫌いだもんな」

「昔から嫌いというか、苦手。あと何駅？」

「五駅……」

春が周りから当たらないように前に立ってくれているので息苦しくは無いが、あと五駅は自分からしたらかなり遠い。

車での送迎じゃなかったらと思うと……

「春さん……」

「どうした？」

「電車ってこんなに早かった？」

「え？」

窓から外を見ていたが、どんどんと早くなる気がして春に聞いただけなのだが「着いてこい」と手を引っ張られて先頭車両まで引っ張っていかれる。

「どうしたの？ここ、運転手さんの……」

「見てみろ」

よく見ると、運転手さんは普通なのに、手元が黒い霧のようなもので覆われている。

「まさか……」

「そのまさかだが、このドアは車掌しか開けられないだろうな」

「どうするの？もうすく駅だよ？」

焦っていると、駅も早いスピードで通過してしまい、乗客も騒ぎ始める。