栗花落と姫と妖と……

出会い

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このような時はお客様の年代などを見た方が良いし、雰囲気だけでもと頑張って見てみるが、濃いグレーのスーツで黒髪の短髪でとても清潔感がある感じ。

彼女にでも贈る花なのだとしたら……

「こちらのフリージアなどどうでしょう。色によって香りが違いますが」と白と黄色を見せると、少し香りを嗅いだあと、「黄色にします」と言うので、店長に「贈り物だそうです」と伝えて包んでもらう。

お会計の時に花言葉を聞かれたので、「あどけなさ・無邪気・純潔という意味がありまして、悪い花言葉の無いお花です。気に入っていただければ良いですね」と伝えて花を渡すと、「ありがとうございます。では、この綺麗な花束をあなたに」と渡され、「え？」と驚いていると、「お客様ご冗談はその辺で」と店長の助け舟。

「いえ、本当に彼女に」

「でも……」

「昨日のお礼です」

昨日……

「本の……」

「ええ。席が空いてなくて相席をお願いしたんですが、すぐ眠られてしまって。本を落とされた時もぐっすりと。起こしてしまいましたが、あまりにも無防備で……」

「わ、私こそ失礼してしまいました！でも花束はちょっと」

「お礼です」と言ったあとすぐに立ち去ってしまったので、カウンターに花を置いてすぐ店の前の道を見るがどこにも居ない。

大通りに面していて、脇道などないのに……

少し道の真ん中がボヤっと蜃気楼のように見えたが、夏でもないので見間違いだろう。

「すぐお店出たのに……お花どうしよう」