下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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退学

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病院に戻り、雪翔に申し訳ないと思いながらも、もう会うことは無いと心の中で伝え、目が覚めるまでずっとついていた。

下宿は母と栞、父に任せ、目が覚めたのは四日目の昼。

みんなに連絡をし、目が覚めたと伝える。

「雪翔……よく頑張りましたね」

「どうなったの?僕……」

「ストレスですよ。普段あんなに大きな声出さないでしょう?それと、力が目覚め始めているかも知れませんねぇ」

「夢で……金と銀が大きくなってて、紙人形持ってた……」

「はい」

「関係ある?」

「多分。そのような力は、うまく使えばいいんです。呪いの道具にもなります。人助けにもなります。私にも分からないことが多いので、これから勉強していくしかありません」

「うん。僕ね、大見栄切っていっぱい言ったし辞めないって言ったけど……繰り返されるなら辞めるよ。学校……逃げたって思われるかもしれないけど」

「試験があるのでそれを取れば大学にも行けます。夢は諦めなくていいですよ」

「本当?ダメだったら僕棟梁の弟子にでもなろうかと……」

「暫くゆっくりしながら、勉強を続けましょう。その間にストレスとか無くなって必ず歩けるようになります」

「うん」


その後の検査で問題がないと言われたが、結局一月入院することになった。

「藍狐、紫狐と変わってください」

紫狐が出てきて、ちょこんと横に座り雪翔は頭を撫でている。

「冬弥様、使いの方が見えてますけど。昴様と言う方です」

「入ってもらってください」

「よう!元気か?」

「ええ、相変わらずですね」

「この子が雪翔か……成る程なぁ。どれ、ちょっと手を貸してみろ」

「え?あの……」

「この方は天狐ですから大丈夫です。性格以外は」

「おいおい、師匠とでも呼べよ」

「昴でいいと言ったじゃないですか」

「それよりも、手!」

「はい……」

「何か感じるか?」

見た目には天狐にしか分からないが、気を送っている。

「えっと、温かいです」

「どんな風に?」

「春に眠くなる感じ?」

「これはどうだ?」

「冷たい……痛いです。ヒリヒリする感じ」

「今、会いたいものはいるか?」

「金と銀……心配で」

「待ってろ」

「冬弥様?これは何を……」

ひゃうー!

ポンポンと小狐が二匹出てきて足の上に落ちる。

「いててて。誰?おじちゃん」

「おいら寝てたのに!」

「おじちゃんでもいいけど、お前達寝過ぎだ!そろそろ起きろ。お前達が呑気に寝てるから、雪翔が力の制御出来ないじゃないか」

「そうなの?兄ちゃん知ってた?」
「知らない!でも、飛べる感じがするからそうなのかも」
「僕もだよ?フワフワするよ?」

「遊ぶのは後だ。お前達の中にある記憶を呼び覚ましてやる。雪翔の力になれ。そして従え」

「う!分かったよ」
「約束だもんね」

全体を暖かな光が包み、それがだんだんと小さくなると小狐たちは少し大きくなり、白い着物を着て小さな帽子をかぶっていた。
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