下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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全ての始まりと終わり

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喜んでいると、学校に慣れてからだぞ?釘を刺される。

「どうした?」

「隆弘、お前文系だろ?英語の採点頼む!」

「どれ……」

問題集を見て、全問正解だと言われさらに喜ぶ。

「雪翔は賢いですからねぇ」撫で撫で撫で撫で……

「それは分かってるけどさ、頭撫ですぎ」

「久しぶりだからいいんじゃないか?」

もっと止めてと思いながら、三年生の進学コースの問題も解いたと言うと、文系・理数系のふたりが部屋に行って戻ってきて、受験の時の参考書と問題集を渡してくる。

「まだまだ先だよ?」

「お前ならできる!暇な時にやってみたらいい」と二人が言ってくれるので、参考書などをもらうが、「先に海都君の受験の方が早いと思うんだけど」と言うと、あいつはまずテストからだよと言っていた。

参考書はかなり分厚く、普通は何年生からするのかと聞くと、塾と自宅学習で、早い子では二年の年明けからは本格的に始めると聞く。

「大学も学校の授業だけで出来ればいいのにね」

「テスト内容は殆どが応用ばかりだった気がするな……」

「あぁ、入れたことよりも今は、俺も本格的に内定もらえないとヤバイ」

「俺は今年から就活活動入るんだけど、賢司さんやってたの?」

「何社か説明会にも行ってたし、秋からは忙しいの通り越して倒れるかも」

「どこ希望?」

「笑うなよ?」

「なに?」

「その就活先なんだがな、高校で教育実習だ!」

「どこの高校?」

「お前らのとこ。卒業生は母校でするんだよ。去年は中学の教育実習受けてた」

「僕楽しみになってきちゃった。先生になるの?」

「迷ってたんだけどな、お前のこともあったし、色々考えて出した答えだ」

何の話?と起きてきた海都に教育実習の話をすると、うちのクラスには来ないで!と懇願していた。

「ほらほら、その話面白そうなので酒のアテにしますから、お風呂行ってください。雪翔も銭湯行きます?」

「いいの?」

「大分としゃがめるようになったので、もう平気でしょう?ただ気をつけてくださいね」

「うん、行ってくる!」

賢司が学校の先生になると聞き、それにも資格を取らなければいけないから、時間のある時に図書館で勉強をしていると聞いて、晩御飯の時には雪翔の担任になってくれたら下宿にいてもいいと冬弥が馬鹿なことを言い出し、海都は相変わらず頭を抱えていた。

それからすぐに次の週になり裁判所へと行き、聞かれたことだけを答えてすぐに終わったので、残りの新学期までの時間を午前中は棟梁に頼まれた彫り物をして、昼からは問題集などして過ごし、あっという間に新学期になった。

「本当に行けますか?」

「うん。帰りは一人で帰れるから。棟梁の家によって帰ってくるね」

「藍狐をつけていますが、何方かと言えば守り狐ですから気をつけてくださいね」

「平気だよ」

校長室で待ち、二時間目が始まる時に先生と教室へ向かう。

渡すのを忘れていた問題集は帰りに渡せばいいと思い、前のドアから先生と入ると、騒がしかった教室はシーンと静まり返っていた。
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