下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
65 / 102
江戸屋敷

.

しおりを挟む
「後聞いたぞ?土間で朝餉の支度を手伝ったとか」

「いつもしてたからつい。怒らないであげてよ」

「雪翔のしたいようにすれば良い。神社はどうじゃ?」

「気持ちよかった」

「そうか!とにかく城に行くのにその格好でいいが、城まで飛んでいく。車椅子は置いていくしかないし、周太郎も連れていけんのじゃ」

「這って歩いてくよ」

「前は会うだけじゃと言うておったのに、いきなり条件付きとは、すまんの」

「お爺ちゃんのせいじゃ無いもん。何か考えがあるのかも。いつ行くの?」

直ぐじゃと言い、このままでいいならとカバンに薬が入ってあるのを確認して、そのまま城まで飛んでもらう。

「大丈夫?」

「このくらいはな。みてみろこの階段。毎回ウンザリじゃよ」

その後腰に手を回してまたかなり長い階段を飛んでくれる。

「凄い。山のてっぺんにある感じ?」

「まあな。天狐は御簾の後ろにいる。顔を見せることはまずないだろう。冬弥がいれば影は六つ。居なければ五つじゃ。準備はいいか?」

「う、うん。」

兵に書状を見せ中に通してもらい、すぐに面会となった。

「そなたが雪翔か。たしかに不思議な力を持っておるの。話は聞いておる、こちらでゆっくりするが良かろう」

「あ、ありがとうございます……」

「して、この子供どうするつもりじゃ?」

「今日はいきなり本題じゃの?どうもせん。儂の孫じゃ。家族で面倒見ていく」

「ここに住みその力我らに貸す気は無いか?」

「力って言っても僕は何もできません」

「雪翔は遊びに来たんじゃ。それをいきなり面会にしおって……」

「前から決めておったことじゃ。元天狐は黙って居れ」

「あの、お爺ちゃんにそんなこと言わなくてもいいと思います。僕は人間だし、今は記憶はないし、いろんなこと言われても困るし、夏休み中に遊びに来ただけなので、用事がそれだけなら、僕帰ります」

お爺ちゃんに帰ろうと言って部屋を出るのに襖を開けようとするがびくともしない。

「座れ」と、男性の低い声がしたが、座らずに御簾の影を数える。

5人だから冬弥さんはいないのだろう。

「もう一度だけ言う。そこに座れ!」

「嫌です!」

怒ったからか、ピシッといくつか音が鳴る。

「無自覚か。まぁ良い。そのうち嫌でも頼ってくるのはそなたじゃ。その時は助けぬが良いのか?」
はい!そう答えて部屋を出る。

「お爺ちゃんごめんね?僕、あんな言い方嫌いだったから」

「構うものか。あいつらとは昔から合わなんだ。雪翔が嫌な思いをする方がよっぽど嫌じゃよ。しかしまぁ、そんなにはっきりと言える子だとも思わなんだ」

「___僕、前にもこんなことがあった気がするんだ」

「そうか……」捕まっておれと言われて、しがみついて家まで帰ると、横になってた方がいいと言われ、畳に座っていて疲れた足を周太郎がマッサージしてくれる。

「周太郎さん、ここはお狐様の世界だよね?お殿様とかいるの?」

「城は中心の山頂にありますけど、そこにはいつも天狐様が交代で居るようになっただけで、殿様はいませんが、狐界のことを考えて動いてくださるので、殿様といえばそう見えるかも知れませんが……」

「仕組みがイマイチ分からないよ。まだ読んでる途中だけど」

その本を読めばだいたいんかると言われ、マッサージが終わってから、また読み始める。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

下宿屋 東風荘 5

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*゜☆.。.:*゚☆ 下宿屋を営む天狐の養子となった雪翔。 車椅子生活を送りながらも、みんなに助けられながらリハビリを続け、少しだけ掴まりながら歩けるようにまでなった。 そんな雪翔と新しい下宿屋で再開した幼馴染の航平。 彼にも何かの能力が? そんな幼馴染に狐の養子になったことを気づかれ、一緒に狐の国に行くが、そこで思わぬハプニングが__ 雪翔にのんびり学生生活は戻ってくるのか!? ☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆ イラストの無断使用は固くお断りさせて頂いております。

下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは
キャラ文芸
※※※※※ 下宿屋を営み、趣味は料理と酒と言う変わり者の主。 毎日の夕餉を楽しみに下宿屋を営むも、千年祭の祭りで無事に鳥居を飛んだ冬弥。 そして雪翔を息子に迎えこれからの生活を夢見るも、天狐となった冬弥は修行でなかなか下宿に戻れず。 その間に息子の雪翔は高校生になりはしたが、離れていたために苦労している息子を助けることも出来ず、後悔ばかりしていたが、やっとの事で再会を果たし、新しく下宿屋を建て替えるが___ ※※※※※

下宿屋 東風荘 6

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*°☆.。.:*・°☆*:.. 楽しい旅行のあと、陰陽師を名乗る男から奇襲を受けた下宿屋 東風荘。 それぞれの社のお狐達が守ってくれる中、幼馴染航平もお狐様の養子となり、新たに新学期を迎えるが______ 雪翔に平穏な日々はいつ訪れるのか…… ☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*°☆.。.:*☆.。.:*゚☆ 表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。

下宿屋 東風荘

浅井 ことは
キャラ文芸
神社に憑く妖狐の冬弥は、神社の敷地内にある民家を改装して下宿屋をやっている。 ある日、神社で祈りの声を聞いていた冬弥は、とある子供に目をつけた。 その少年は、どうやら特異な霊媒体質のようで? 妖怪と人間が織り成す、お稲荷人情物語。 ※この作品は、エブリスタにて掲載しており、シリーズ作品として全7作で完結となっております。 ※話数という形での掲載ですが、小見出しの章、全体で一作という形にて書いております。 読みづらい等あるかもしれませんが、楽しんでいただければ何よりです。 エブリスタ様にて。 2017年SKYHIGH文庫最終選考。 2018年ほっこり特集掲載作品

「お節介鬼神とタヌキ娘のほっこり喫茶店~お疲れ心にお茶を一杯~」

GOM
キャラ文芸
  ここは四国のど真ん中、お大師様の力に守られた地。  そこに住まう、お節介焼きなあやかし達と人々の物語。  GOMがお送りします地元ファンタジー物語。  アルファポリス初登場です。 イラスト:鷲羽さん  

佐世保黒猫アンダーグラウンド―人外ジャズ喫茶でバイト始めました―

御結頂戴
キャラ文芸
高校一年生のカズキは、ある日突然現れた“黒い虎のような猫”ハヤキに連れられて 長崎の佐世保にかつて存在した、駅前地下商店街を模倣した異空間 【佐世保地下異界商店街】へと迷い込んでしまった。 ――神・妖怪・人外が交流や買い物を行ない、浮世の肩身の狭さを忘れ楽しむ街。 そんな場所で、カズキは元の世界に戻るために、種族不明の店主が営むジャズ喫茶 (もちろんお客は人外のみ)でバイトをする事になり、様々な騒動に巻き込まれる事に。 かつての時代に囚われた世界で、かつて存在したもの達が生きる。そんな物語。 -------------- 主人公:和祁(カズキ)。高校一年生。なんか人外に好かれる。 相棒 :速来(ハヤキ)。長毛種で白い虎模様の黒猫。人型は浅黒い肌に金髪のイケメン。 店主 :丈牙(ジョウガ)。人外ジャズ喫茶の店主。人当たりが良いが中身は腹黒い。   ※字数少な目で、更新時は一日に数回更新の時もアリ。  1月からは更新のんびりになります。  

白鬼

藤田 秋
キャラ文芸
 ホームレスになった少女、千真(ちさな)が野宿場所に選んだのは、とある寂れた神社。しかし、夜の神社には既に危険な先客が居座っていた。化け物に襲われた千真の前に現れたのは、神職の衣装を身に纏った白き鬼だった――。  普通の人間、普通じゃない人間、半分妖怪、生粋の妖怪、神様はみんなお友達?  田舎町の端っこで繰り広げられる、巫女さんと神主さんの(頭の)ユルいグダグダな魑魅魍魎ライフ、開幕!  草食系どころか最早キャベツ野郎×鈍感なアホの子。  少年は正体を隠し、少女を守る。そして、少女は当然のように正体に気付かない。  二人の主人公が織り成す、王道を走りたかったけど横道に逸れるなんちゃってあやかし奇譚。  コメディとシリアスの温度差にご注意を。  他サイト様でも掲載中です。

胡蝶の夢に生け

乃南羽緒
キャラ文芸
『栄枯盛衰の常の世に、不滅の名作と謳われる──』 それは、小倉百人一首。 現代の高校生や大学生の男女、ときどき大人が織りなす恋物語。 千年むかしも人は人──想うことはみな同じ。 情に寄りくる『言霊』をあつめるために今宵また、彼は夢路にやってくる。

処理中です...