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記憶
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みんなの答えは一緒で、大人しいが言いたい事はちゃんと言える子。
朝も夕方も境内の掃除を進んでやっている。
本が好きでたまに没頭するが、たまに読みながら寝てることもある等、勉強もよく出来ると言ったことはどれも本当のことだ。
入学したからもういいよと宮司に言われていたが、それでも日課になっているのでと、掃き掃除は一日も怠らず、手伝いも積極的にしてくれていた。
商店街の人の評判もよく、挨拶もちゃんと出来ると買い物の度に言われ、嬉しく思っていた。
「そうか……ここのみんなはお兄さんといった感じなんじゃな?」
「そうですね。たまには甘えてもいいのにと思う時もありましたけど、性格なのかなって思ってて今回も気づくことができませんでした……」
隆弘も可愛がっていたので、言いながら箸が休んでしまう。
「ほら気にしないで食べましょう。お婆ちゃんの作った煮物だから若い人の口に合えばいいんだけどねぇ」
「うん、美味しい!冬弥さんのと似てる!」
「そう?たくさん食べてね?お爺さんは、お酒はもう……」
「ビールを久しぶりに飲んだらうまくてな、ほら、みんなも食べて飲んで。儂もまだまだ若いもんに負けてはおれんわ」とほろ酔いでご機嫌だった。
翌朝は叩いた梅と刻んだ大葉を入れたお粥にし、洗濯物を片付けてから病院へ行こうと言うことになったが、仕事に出かけた堀内と、学校へと行った海都を除き、大学生の隆弘と賢司と今後について話し合うことになった。
「あのね、私とお爺さんと栞さんで雪翔の事は見ていくことにしようと思うの。もちろんあなた達にも手伝ってもらうけど。でもまだ学生でしょう?無理しない程度にしてもらいたいの」
「俺達がバイトがない時は、交代で車出しますし、雪翔は大事な弟分なので何でも言ってください」
「すまんな……冬弥がもっとしっかりしておれば良いのじゃが。今はどうしても戻れんのでな」
「それなんですけど、俺達は雪翔の前では話をしないようにしようって言ってて」
「あ、これなんだけど……」とメモ帳を開いて置く。
「今まで話した時に、雪翔君が暴れたり泣いたりした時の言葉が書いてあるの。今は冬弥様の名前を出しても大丈夫だけど、思い出話は記憶が曖昧かも……だから、メモを取っておいたらみんなわかりやすいと思って」
「みんなが見えるところに置いておいてください。毎日帰ったらみんなで見るようにします」
「じゃあ、行くとするか。賢司君だったかな?君も行くかね?」
「はい。雪翔が読んでる本のアニメがあるので、レンタルしてきました。これで退屈しないと思ったんで。早く渡してやりたいです」
小さく戸を叩き扉を開けて中に入ると、丁度看護婦さんが来ていて、ナースセンターまで来て欲しいと言われた。
みんなに任せ、隆弘についてきてもらって話を聞くのに隣の部屋に入り座る。
「また何かあったんでしょうか?」
「いえ、昨日の夜から機嫌も良くて、食事も食べれました。熱も下がってきたので、だいぶ楽になっていると思います」
「良かった……」
「ただ、夜中の見回りに行った時に泣いてまして……私が当直だったのですが、やはり拘束を解いて欲しいと。先生は点滴はもう外してもいいと言っていたので、一度外してみようかとの話になり、ご家族が見えたら外すことにしたんです。ただ、また暴れたら拘束という形にはなりますが……」
「外してやってください。辛いと思うし、また暴れたら仕方ないけど……」
「では今から外します。また繰り返すようなら書類を書いてもらわないといけませんが」
「構いません」
病室に戻って外してもらえると言ったら、雪翔はもちろん、みんなも喜んでくれた。
朝も夕方も境内の掃除を進んでやっている。
本が好きでたまに没頭するが、たまに読みながら寝てることもある等、勉強もよく出来ると言ったことはどれも本当のことだ。
入学したからもういいよと宮司に言われていたが、それでも日課になっているのでと、掃き掃除は一日も怠らず、手伝いも積極的にしてくれていた。
商店街の人の評判もよく、挨拶もちゃんと出来ると買い物の度に言われ、嬉しく思っていた。
「そうか……ここのみんなはお兄さんといった感じなんじゃな?」
「そうですね。たまには甘えてもいいのにと思う時もありましたけど、性格なのかなって思ってて今回も気づくことができませんでした……」
隆弘も可愛がっていたので、言いながら箸が休んでしまう。
「ほら気にしないで食べましょう。お婆ちゃんの作った煮物だから若い人の口に合えばいいんだけどねぇ」
「うん、美味しい!冬弥さんのと似てる!」
「そう?たくさん食べてね?お爺さんは、お酒はもう……」
「ビールを久しぶりに飲んだらうまくてな、ほら、みんなも食べて飲んで。儂もまだまだ若いもんに負けてはおれんわ」とほろ酔いでご機嫌だった。
翌朝は叩いた梅と刻んだ大葉を入れたお粥にし、洗濯物を片付けてから病院へ行こうと言うことになったが、仕事に出かけた堀内と、学校へと行った海都を除き、大学生の隆弘と賢司と今後について話し合うことになった。
「あのね、私とお爺さんと栞さんで雪翔の事は見ていくことにしようと思うの。もちろんあなた達にも手伝ってもらうけど。でもまだ学生でしょう?無理しない程度にしてもらいたいの」
「俺達がバイトがない時は、交代で車出しますし、雪翔は大事な弟分なので何でも言ってください」
「すまんな……冬弥がもっとしっかりしておれば良いのじゃが。今はどうしても戻れんのでな」
「それなんですけど、俺達は雪翔の前では話をしないようにしようって言ってて」
「あ、これなんだけど……」とメモ帳を開いて置く。
「今まで話した時に、雪翔君が暴れたり泣いたりした時の言葉が書いてあるの。今は冬弥様の名前を出しても大丈夫だけど、思い出話は記憶が曖昧かも……だから、メモを取っておいたらみんなわかりやすいと思って」
「みんなが見えるところに置いておいてください。毎日帰ったらみんなで見るようにします」
「じゃあ、行くとするか。賢司君だったかな?君も行くかね?」
「はい。雪翔が読んでる本のアニメがあるので、レンタルしてきました。これで退屈しないと思ったんで。早く渡してやりたいです」
小さく戸を叩き扉を開けて中に入ると、丁度看護婦さんが来ていて、ナースセンターまで来て欲しいと言われた。
みんなに任せ、隆弘についてきてもらって話を聞くのに隣の部屋に入り座る。
「また何かあったんでしょうか?」
「いえ、昨日の夜から機嫌も良くて、食事も食べれました。熱も下がってきたので、だいぶ楽になっていると思います」
「良かった……」
「ただ、夜中の見回りに行った時に泣いてまして……私が当直だったのですが、やはり拘束を解いて欲しいと。先生は点滴はもう外してもいいと言っていたので、一度外してみようかとの話になり、ご家族が見えたら外すことにしたんです。ただ、また暴れたら拘束という形にはなりますが……」
「外してやってください。辛いと思うし、また暴れたら仕方ないけど……」
「では今から外します。また繰り返すようなら書類を書いてもらわないといけませんが」
「構いません」
病室に戻って外してもらえると言ったら、雪翔はもちろん、みんなも喜んでくれた。
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