下宿屋 東風荘 2

浅井 ことは

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学校

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翌日、熱はだいぶと引き、顔の腫れもかなり良くなってきていた。

歩く時に歩行器を使うものの、トイレに行くだけでかなり疲れてしまう。
ギプスをはめているので足先は付けないし、膝は曲げ伸ばしができない。かと言って看護婦さんに世話してもらうのがとても嫌だったので、我慢してトイレに行っていたが、ちょっと限界かもしれない。

熱さえ下がれば帰れるから、家のトイレに行く方が近いし楽だなと思いながら、早く帰りたいがために朝ごはんを頑張って三分の一ほど食べる。

下げに来た看護婦さんに、「先生の診察はありますか?」と聞くと、今日は回ってくるので部屋にいるようにと言われ、問題集を出すと怒られるなと思って本を広げる。

丁度、人間界に帰ろうとして帰れずに、魔界編に突入して次の巻に移るところで気になっていたので、すぐに本の世界に入ってしまう。

回診の時間になってすぐ体を見てもらい、熱も下がってきていて、少し食べられるようになったので、せめてテストを受けに外出だけでもと聞くと「来週だったよね?熱が下がっていて、車椅子のまま移動するのなら許可してもいいけど、学校がいいって言わないとね」と言われる。

「聞いてみます!」

「それ、参考書?頑張るのも程々にしないと婦長に取り上げられるよ?」とこそっと教えてくれた。

先生が出ていってから、那智と栞にラインを送って、良くなってきていて学校が良いならテスト受けに外出できると打ち込んで送ると、すぐに那智からは『学校に問い合わせる』と返事が来て、栞からは『無理しちゃだめだからね』と返事が来る。


昼には紫狐が人型になって車椅子を押してくれ、少しの時間だけ庭に出ることが出来た。

「気持ちいいね」

「はい!今年は早目の梅雨入りだと、お天気お姉さんが言ってました」

「そっか。でも僕、雨も好きだよ?」

「紫狐はお天気のいい春がやはり好きです。ポカポカしてお昼寝に丁度いいので」

「それもいいよね」

「……ゆっきーと同じ制服を着た子がいます」

キョロキョロと周りを見回している男女。よく見るとクラス委員の二人だった。
その事を紫狐に伝え、車椅子を押してもらう。

「あ、早乙女くん!」

「こんにちは……あの……」

「あ、私達先生から入院してるって聞いたのが今日で……それに、あいつらにやられてたって知らなくて本当にごめんなさい」とふたりが謝ってくる。

「いいよ。誰も悪くないよ?僕もいつも本ばかり読んでたから……ごめんね」

「あのね、みんなで話してノートのコピー取ったの。これ今日までの分のコピー。教科ごとに分かれてて、出そうなところはチェックしてあるから良かったら使って」

「ありがとう!助かる……ついていけなくなってたらどうしようって思ってて……でも迷惑じゃない?」

「クラスで決めたんだ。早乙女君が帰ってくる迄、交代でノートのコピーを持っていこうって。塾とか行ってる奴もいるからさ、千羽鶴とかは無理かなーって」

「ありがとう」

「早乙女君、そうやって笑ってる方がいいのに」

「え?」

「みんな話しかけたかったんだよ?でもお昼にいなくなっちゃうし……」

「そうだったんだ。僕何も気づいてなかったんだね……」

「でも、お前進んで色んなこと手伝ってくれてたじゃん。男からも評判いいんだぞ?」

「それ違う意味だったらやだー!」

「僕もやだな!」

「良かった、元気そうで」

「じゃあ、毎週金曜に持ってくるから!」

またねと二人が帰っていき、部屋に戻って早速見る。
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