天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

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破壊

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「あの匂いがしだしたのはもう半年以上前です。初めは甘い匂いだったので、流行りの香水かと思っていたのですが、街の至る所でだんだんと甘酸っぱい匂いがするようになり、話では嗜好品の煙草と聞いてましたが、仲の良かった酒屋の主人も吸っていて、だんだんと言動もおかしくなって……その家にいた奥さんも働き者だったのに、外にも出なくなって。辞めるように言いましたし、取り上げたこともあるのですが、取り上げると手がつけられず……この宿から奥の市場周りはまだ出回って無いようです」

「やはり高価だということでしょうか」

「値段までは……この路地から奥のものは、もう生活も安定せず、かと言って知らない街でまた一から商売するのも怖くてひっそりと過ごす日々でして。ネルも怖くて外で遊ばせられません」

「分かりました。明日、市場に案内してもらえますか?その辺りの取り仕切ってる方とも話がしたいです」

「それが、もう仕切り役が居ないんです」

「では誰が管理を?荷が届きますよね」

「各々が。まだみんな頑張ってますが、少しずつ違う街に行くものも出だしてきました」

ひとまず休んで明日の朝から調べようと言うことになり、お風呂に入ってからスフィの横のベッドに入って朝までぐっすり眠る。

前まで旅をしていたが、やはりあちらでの生活が長くなると旅をしていた時の地面や布団の硬さをつい忘れてしまう。

「おはよう」とスフィと食堂に降りていく。

「もう体の方は?」

「すまぬ。もうなんとも無い」

「とにかくスフィも沢山食べないと。食べたら行くの?」

「それなのですが、私は武装しておりますので、この格好のまま街を歩くのはどうかと……」

「俺達の警護でいいんじゃない?」

「そうですね。返って警護が居ないと怪しまれますし」

「ではそのように」

スフィも肉の入ったスープを沢山食べ、くるみパンも三つ食べていたのでもう大丈夫だろうと気を抜くと、ワンワン!とスフィに飛びかかるネル。

念話で事情は話したが、元々狼の王であったスフィには耐え難いだろうと一瞬目をつむってしまったが、普通に子供に遊ばせている。

「我の文句も聞かそうとしなければ聞こえない。このような小さき人をどうにかするとでも?」

「ごめん、昨日からその子スフィが気に入ってるみたいでさ」

「少しなら我慢もできる」

みんなで市場へと行くと、いくつかの店が無くなっており、何とか肉や魚に果物と野菜が揃う程度だった。

「これじゃ街全体に行き渡らないよ」

「閑散としてますしねぇ。他には無いんですか?」

「すいません、ここだけなんです。三日ほど前まではまだ店も沢山あったのに……」

「それはまた減ったと言うことですか?」

「はい……」

この街でもう商売は難しいだろうと、ノアを見ると同じ考えだったようで、「今……俺の城を作ってるんだけど、その周りに街も作ってるんだ。そこに移ってこない?」

「草原の……水の城ですか?」

「水の城?」

「みんなそう呼んでます。城の八方から川が流れていて、それが街にも流れているので水の城、水の街と」

「知らなかった。橋で繋いでもらう予定なんだ。道幅も広くとってあるし、草原の民もチーズとかミルクとか売りに来やすいからお店出す予定なんだよ?あれだけの美味しい食事が出来るなら、従業員雇ってもっと大きな宿できると思うんだけど」

「行くのは構わないのです。持っていく家財もないですし。でも、資金が……宿屋をするにはそれなりにベッドや布団、浴室など金額にあった部屋を作らなくてはなりません」
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