110 / 127
破壊
.
しおりを挟む
「えー。もういいよ。俺戦いには向いてないし」
と外を見ると大きな街が見えてきた。
「あの街?」
「ええ。中にはこの人数なので入りませんが、奏太様と私達は街の中へ入ります。スカーフを身につけておいてください」
「これ夏は暑いよねきっと……」言われるままにつけて支度をしていると、馬車が止まり街まで馬で行くという。
「みんなはどうするの?」
少し離れたところに天幕を張るというので、馬に乗って門を目指す。
「うわぁ、門が大きい……」
「この街は城と草原の民の間にある一番大きな街です」
送ってくれた兵が教えてくれたのでお礼を言い、門のところに並ぶ。
「王子様、王族はいちいち並ばなくても……」
「みんな並んでるからつい……」
「こちらです。話してきますのでノア様とスフィ様とお待ちください」
守衛のいる部屋があるのか、そこまで行くのを見ていると、転がり出てくると言うのがぴったりなくらい慌てて出てきて案内してくれると言う。
「では、明日の朝またお迎えにあがります」
兵が帰っていったので着いていくと、真っ白な建物の一つに案内される。
「ここに街を管理している大臣が居られます」
「街の中心に?」
「この街は円形ですので、一番わかりやすい場所にと作られております」
門番に敬礼され中に入ると、スフィが『何か臭う……元の大きさに戻りたい』と言うので許可する。
念話はノアにも聞こえているので左手で剣を握り何があってもいいようにしているが、大臣の御前だからと武器の持ち込みは遠慮してもらいたいと言われ、それに対してノアが拒否し、スフィも威嚇しているようにも見えたので、「おじさん誰?」と返って呑気に聞いてみることにした。
「私はこの街を収めておる大臣である。王子の滞在と聞きわざわざ出迎えにここに居る」
王の間を小さくしたような部屋の真ん中に玉座のようなものがありふんぞり返っているが、その周りに漂っている甘酸っぱい匂いがとても気になる。
「俺たち街の宿に泊まるんで……一応挨拶をと思っただけで……」
「ならば宿は手配いたそう」
「ご心配なく。もう決めてありますので。では失礼致します」
そう言って部屋を後にし宮殿のような作りの門の前に立って見上げる。
「あの匂いなんだったのかな?ちょっとクラクラしたけど。スフィ大丈夫だった?」
「我らは嗅覚が鋭い。流石にあの匂いは息を止めておらねばこちらがおかしくなる」
「あれは多分、麻薬の一種ですね。なにか混ぜてあったように思いますが、甘酸っぱいあの匂いは一番癖の悪いものだったかと」
「それに……周りに誰もいなかったし、おかしくない?」
「そうですね。でも調べる前にちょっと買い物に行ってもよろしいですか?」
ノアが寄ったのは薬屋。
幾種類かの葉を調合してもらって代金を払い、宿に行きましょうと言われる。
「宿って決まってないよね?」
「はい。あそこでは嘘を……ですが、王族御用達の宿があるはずですのでそこに行こうかと思うのですが」
任せると言って付いていくと、また豪華な建物の前に着いた。旗には天界の国旗のようなものが掛けてあり、裕福層が泊まる宿ではあったがスフィがなかなか入ろうとしない。
「スフィ?」
「ここもあの匂いで溢れておる」
「ノア、普通の宿にしよう。このスカーフがあれば王子って分かるんだよね?」
「そうですが……ほかの宿でスフィが室内に入れるとは限りません」
「何とかなるよ」
町の中心から路地に入って奥に行くと、古びた宿が1軒あり、外には馬が繋がれていた。
「流石にここでは……」
「良いから。聞いてみようよ」
カランカランと鐘の音がし、新聞を読んでいた宿の親父と目が合うと同時に、カウンターから出てきて平伏される。
と外を見ると大きな街が見えてきた。
「あの街?」
「ええ。中にはこの人数なので入りませんが、奏太様と私達は街の中へ入ります。スカーフを身につけておいてください」
「これ夏は暑いよねきっと……」言われるままにつけて支度をしていると、馬車が止まり街まで馬で行くという。
「みんなはどうするの?」
少し離れたところに天幕を張るというので、馬に乗って門を目指す。
「うわぁ、門が大きい……」
「この街は城と草原の民の間にある一番大きな街です」
送ってくれた兵が教えてくれたのでお礼を言い、門のところに並ぶ。
「王子様、王族はいちいち並ばなくても……」
「みんな並んでるからつい……」
「こちらです。話してきますのでノア様とスフィ様とお待ちください」
守衛のいる部屋があるのか、そこまで行くのを見ていると、転がり出てくると言うのがぴったりなくらい慌てて出てきて案内してくれると言う。
「では、明日の朝またお迎えにあがります」
兵が帰っていったので着いていくと、真っ白な建物の一つに案内される。
「ここに街を管理している大臣が居られます」
「街の中心に?」
「この街は円形ですので、一番わかりやすい場所にと作られております」
門番に敬礼され中に入ると、スフィが『何か臭う……元の大きさに戻りたい』と言うので許可する。
念話はノアにも聞こえているので左手で剣を握り何があってもいいようにしているが、大臣の御前だからと武器の持ち込みは遠慮してもらいたいと言われ、それに対してノアが拒否し、スフィも威嚇しているようにも見えたので、「おじさん誰?」と返って呑気に聞いてみることにした。
「私はこの街を収めておる大臣である。王子の滞在と聞きわざわざ出迎えにここに居る」
王の間を小さくしたような部屋の真ん中に玉座のようなものがありふんぞり返っているが、その周りに漂っている甘酸っぱい匂いがとても気になる。
「俺たち街の宿に泊まるんで……一応挨拶をと思っただけで……」
「ならば宿は手配いたそう」
「ご心配なく。もう決めてありますので。では失礼致します」
そう言って部屋を後にし宮殿のような作りの門の前に立って見上げる。
「あの匂いなんだったのかな?ちょっとクラクラしたけど。スフィ大丈夫だった?」
「我らは嗅覚が鋭い。流石にあの匂いは息を止めておらねばこちらがおかしくなる」
「あれは多分、麻薬の一種ですね。なにか混ぜてあったように思いますが、甘酸っぱいあの匂いは一番癖の悪いものだったかと」
「それに……周りに誰もいなかったし、おかしくない?」
「そうですね。でも調べる前にちょっと買い物に行ってもよろしいですか?」
ノアが寄ったのは薬屋。
幾種類かの葉を調合してもらって代金を払い、宿に行きましょうと言われる。
「宿って決まってないよね?」
「はい。あそこでは嘘を……ですが、王族御用達の宿があるはずですのでそこに行こうかと思うのですが」
任せると言って付いていくと、また豪華な建物の前に着いた。旗には天界の国旗のようなものが掛けてあり、裕福層が泊まる宿ではあったがスフィがなかなか入ろうとしない。
「スフィ?」
「ここもあの匂いで溢れておる」
「ノア、普通の宿にしよう。このスカーフがあれば王子って分かるんだよね?」
「そうですが……ほかの宿でスフィが室内に入れるとは限りません」
「何とかなるよ」
町の中心から路地に入って奥に行くと、古びた宿が1軒あり、外には馬が繋がれていた。
「流石にここでは……」
「良いから。聞いてみようよ」
カランカランと鐘の音がし、新聞を読んでいた宿の親父と目が合うと同時に、カウンターから出てきて平伏される。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あなたの子ですが、内緒で育てます
椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」
突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。
夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。
私は強くなることを決意する。
「この子は私が育てます!」
お腹にいる子供は王の子。
王の子だけが不思議な力を持つ。
私は育った子供を連れて王宮へ戻る。
――そして、私を追い出したことを後悔してください。
※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ
※他サイト様でも掲載しております。
※hotランキング1位&エールありがとうございます!
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
白い彼女は夜目が利く
とらお。
キャラ文芸
真夏の夜、涼しい風が吹くその場所で、彼女を見つけた。
何の変哲もない男子高校生、神埼仄は小学生の頃一目惚れした少女を忘れられずにいた。
そんなある日、一人の少女がクラスに転校してくる。
その少女は昔一目惚れしたその少女とそっくりで……。
それからだった。
彼の身の回りでおかしなことが起こり始めたのは。
◆ ◇ ◆ ◇
怪異に恋する現代和風ファンタジー。
貴方はそれでも、彼女を好きだと言えますか?
毎週水・土曜日、20時更新予定!
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
イケメン歯科医の日常
moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。
親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。
イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。
しかし彼には裏の顔が…
歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。
※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。
あやかし旅籠 ちょっぴり不思議なお宿の広報担当になりました
水縞しま
キャラ文芸
旧題:あやかし旅籠~にぎやか動画とほっこり山菜ごはん~
第6回キャラ文芸大賞【奨励賞】作品です。
◇◇◇◇
廃墟系動画クリエーターとして生計を立てる私、御崎小夏(みさきこなつ)はある日、撮影で訪れた廃村でめずらしいものを見つける。つやつやとした草で編まれたそれは、強い力が宿る茅の輪だった。茅の輪に触れたことで、あやかしの姿が見えるようになってしまい……!
廃村で出会った糸引き女(おっとり美形男性)が営む旅籠屋は、どうやら経営が傾いているらしい。私は山菜料理をごちそうになったお礼も兼ねて、旅籠「紬屋」のCM制作を決意する。CMの効果はすぐにあらわれお客さんが来てくれたのだけど、客のひとりである三つ目小僧にねだられて、あやかし専門チャンネルを開設することに。
デパコスを愛するイマドキ女子の雪女、枕を返すことに執念を燃やす枕返し、お遍路さんスタイルの小豆婆。個性豊かなあやかしを撮影する日々は思いのほか楽しい。けれど、私には廃墟を撮影し続けている理由があって……。
愛が重い美形あやかし×少しクールなにんげん女子のお話。
ほっこりおいしい山菜レシピもあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる