天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
98 / 127
正月

.

しおりを挟む
「じゃあさ、俺そのへんに座ってみてるから」

「うん!」

階段に座り、最初はムーを見ていたがついウトウトしてしまい、ノアに起こされてムーが居ないことに気づく。

「またどっかいっちゃったのか……スフィわかる?」

「こちらだ」

スフィについて行くとだんだんと森の奥に入っていく。

「前にもよくこんなことがあった気がする」

「ここで匂いが消えておる」

「消えてる?他はない?」

カリカリと地面をほり匂いを嗅いで、上を見る。

同じように上を見ると、木の枝にムーがしがみついていた。

「な、何やってんの……」

「おーろーしーてー!」

「これってさ、罰として降ろさなくていいんじゃない?」

「毎回ですからね……」

「ブランー!おーろーしーてー」

ブランをしっかりとつかみ、行かせないようにしてなんでそこにいるのかと聞く。

「ふわふわしたの追いかけてたらねー、ここまで連れてこられたのー」

「奏太様……この匂い妖精のものかと」

「前も妖精追いかけてたしさ、お前誰にもついていくなって約束守れないわけ?」

仕方なくブランにおろしに行ってもらい、罰としてプリンはお預けにした。

ムーを抱えて詳しく話を聞く。

「降ろしてよー!」

「ちゃんと話したらな」

「だから、僕が遊んでたらね、小さいフワフワしたのが飛んでたの。それ追いかけてたら、いきなり木の上にヒョイって」

「どんなのか見たのか?」

「見てない……」

「全くもう!スフィ、気配は?」

「もうここには無い……多分悪戯妖精だと思うが。こんな人間界にも妖精がいるとは驚きだ」

「ムーは遭遇率が高いんだよ。前も小さいおじさんとかさ、羽の生えたお使いの妖精さんとかさ、見つけるのいつもムーじゃん」

「とにかく、何事も無かったようですし戻りませんか?」

「そうだね」

車に戻って移動し、待っててと言ってサービスエリアに入る。

「休憩ですか?」

「違う違う。ここのうどんが美味しいって書いてあったからさ、食べていこうと思って。調べたんだよ?そしたら全国各地の美味しいものランキングの所に載ってたから。運転中はまだ話す余裕ないもん」

そのうどん屋を見つけると、時間がお昼時をズレたからか少し並んでいるだけだったので、最後尾に並ぶ。

「今から楽しみ!よくテレビとかでも紹介とかしてるから、免許取ったら回ってみたかったんだよね」

「次もまた高速に慣れないといけませんね」

「トラックが怖くてさ……慣れなんだろうけど、大きい方の車選んでよかったよ。それもなれないとダメだけど」

順番が来て中に入ると思っていたよりも広く、食券を買って席に座り、ノアが注文を出しに行ってくれた。

来たのは天ぷらうどんセット。会社のとはまた違い、天ぷらが山盛り乗っていて、ご飯に漬物と金平がついてきていた。

「美味しそう!いただきます!」

麺を食べ、モチモチしてると絶賛し、食べにくかったのでエビと大葉、蓮根の天ぷらをご飯に乗せてうどんを食べ、残りはテーブルにある天つゆをかけて丼として食べる。

「二度美味しいなんて贅沢ー!」

「そうですね、こんな所で美味しいものに出会えるとは思ってませんでした」

お茶を飲んで一服していると「すいません」と声をかけられ、横を向く。

家族連れの女の子がモジモジしながら「モデルのSOUTAさんですよね?」と聞いてくるので返事をすると、「隣の方は前にテレビに出てた……」

「そうですけど……」

「私、ファンなんです!サインもらえますか?」

「え?私ですか……?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

白い彼女は夜目が利く

とらお。
キャラ文芸
真夏の夜、涼しい風が吹くその場所で、彼女を見つけた。 何の変哲もない男子高校生、神埼仄は小学生の頃一目惚れした少女を忘れられずにいた。 そんなある日、一人の少女がクラスに転校してくる。 その少女は昔一目惚れしたその少女とそっくりで……。 それからだった。 彼の身の回りでおかしなことが起こり始めたのは。 ◆ ◇ ◆ ◇ 怪異に恋する現代和風ファンタジー。 貴方はそれでも、彼女を好きだと言えますか? 毎週水・土曜日、20時更新予定!

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

処理中です...