天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

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「俺が盾を張り終わったらすぐに炎だして」

「御意」

集中して回りを盾で囲んでいく。強度がどのぐらいなのかはわからないが、なるべく厚くと思いながら全体に張り巡らせ、天辺を閉じる。

「放って!」

そう言うと口からものすごい熱気の炎が一直線に水が溜まっている方へと飛んでいく。

盾が持ってくれるといいのだが……
そう信じて爆発が起きるのを待つ。

暫くして地響きのような音が鳴り出し、火山の噴火のように勢い良く爆発が始まる。

「中が爆発してるのかな?」

「だといいのですが」

見ていると段々と木の外側にも赤い色が見えだし、爆風は来ないまでも盾を通して熱気はかなり伝わってきた。

「あ、水晶……」

忘れていたのですぐに通信し見せると、凄いなと感心してみている。

「奏太。まだ持ちそうか?」

「うん、なんで?」

「収まるまで時間がかかる。だから燃えきった頃合いで水をかけろ。ノアと珍獣がすればいいだろう」

「名前覚える気ないでしょ?」

暫く様子を見、兵のいる方を見るが、被害はないらしい。

「まだまだ時間はかかりそうだよね」

「あの木がある程度燃え尽きるまでは消火は出来ないかと」

「一旦みんなのところへ行こう」

スフィに天幕が出されているところを指さし、そこに降り立ってもらう。

森の方を見ると熱さからかかなりの動物も出てきていた。
その中に狼の群れがいたので、行かなくていいのかと聞くと、別れは済ませたと返事が返ってくる。

「でもこっち見てるよ? 」

「奏太様を見ているのだと思います」

「俺?」

ゆっくりと動物達に近付いていくが、逃げないのを確認して、ちょうど真ん中辺りに行く。

「もう少し待ってて。ちゃんとした森に戻すから」

『スフィロスをよろしく頼みます』

「え?あ、はい。後、街も作るけどこの森に被害がないようにするから……」

『有難い』

それだけ言って狼の群れは違う方向へと行き、残された動物には桶に水を入れて、どうぞと置いておく。

こちらにいると言うことは、怪我などしている者はいないのだろう。
一安心し、天幕へと戻り飲み物をもらう。

「消火が終わったら、みんなで解体しないと……中のものはもう使えなくなってるだろうし、水が出れば草原の民の井戸もまた潤うかも」

「そうですね。あまり汚染されていないといいのですが」

「最初の水は捨てた方がいいよね……」

「それもありますが、盾を貼り続けてますが大丈夫ですか?」

「なんとも無いよ?」

消火後どうするかみんなで話し合い、まずは動けるものを二手に分ける。

それから人数を数え、何とかなるだろうと怪我人と一部の兵を魔法陣で城に返すことにした。

「後することある?」

「今はまだ。休める時に休んで置いてください」

「分かった。スフィはお腹すいてない?」

「平気だが、我はどこにいれば良い?」

「俺の天幕でいいよ?」

「ならば少し休みたい」

好きなところで寝てといい、近くに桶を置いておく。
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