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街
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動くなと言われても、なにかに引き付けられるように足が勝手に進む。
まるでこちらに来いと言われているように……
目の前まできた時、瞑っていた目が開き、その目を見てしまう。
どこからどう見ても結月にしか見えない。違うところと言えば話さないとか、感情がないと言ったところだけ。
そっと、ガラスのケースに手を置いて見る。
水槽はまだ暖かく、出してくれと言わんばかりに手を伸ばしてくる。
その手の部分に触れる寸前、後ろから誰かに抱き抱えられ水槽から離される。
「奏太様!」
「王子ご無事で?」
「え?なんで?」
「あれは陛下ではありません。何があったのですか?」
「わ、わからない……でも行かなくちゃって気になって、手を伸ばしてきてそれで俺……」
「水晶を」
すぐに出たのだろう。ノアが何かまくし立てるように結月に話している。
「ですから、多分魔力が……はい。危険と判断します。ええ……はい……」
指示を聞いているのか何かやり取りをしているが、あの目を見たからか頭がぼーっとする。
「目……目を見ちゃダメだ……」
「王子?」
「目が開いて、それで目が合って……そこから何だか少し曖昧なんだけど」
「目ですね。サムさん、割れたと同時に目を潰しましょう」
「はい」
「だ、ダメ!出しちゃダメ。結月さん聞こえる?」
「聞こえてる。なんで出したらダメなんだ?」
「外から俺を操れるってことは、きっと魔力があって、意識とかあるからでしょ?」
「そうなると思うが……私が見た時は言われたことをそのまましていたように感じたが?」
「多分これ違う。勘だけど……今出したら大変なことになるような気がするんだ」
「……奏太、お前の勘を信じる。全員撤退。警備を所々に残して、引き上げろ!目は見るなよ……撤退後天幕を張れ」
何故かみんな水晶に向かって敬礼し、各々持ち場へと帰っていく。
一旦外に出て、天幕が張られるのを待ち、木陰に腰を下ろす。
「サム……ここでの天幕終わったら、草原の民を帰して、残りの兵をこっちにこさせられる?」
「可能です」
「みんな疲れてるだろうから、各班の班長だけ呼んで。残りは休憩で……」
「はい。もうあの虫は出ないでしょうか?」
「多分としか言えないけど大丈夫と思う」
すぐに取り掛かりますと言って、班長を集め、使いを出している。
「奏太様、なにか見えたんですか?」
「見えてないよ?感じただけ……。来たら食事の用意を1班でさせて、残りは怪我人の救出。あの部屋の手前にみんな集めてあるから目は見ないと思うけど、班長に伝えないと……」と眠りに落ちる。
気付けば既にみんな来ていて、ノアから伝わったのだろう。けが人が続々と集められてきていた。
それを見て余っている鍋を借りる。
ところどころに生えているのが天草。それに水。お湯を沸かして天草を入れて、緑から透明になるまで煮詰めると傷薬になるはず……それをまず飲ませなければと思い、ゆっくりと薬を作る。
もっと教えて貰っておけばよかったと思い、ユニコーンの角を削って薬にしていたと思い出し、少しだけ角を出して削る。
どのくらいの量がいいのか分からないので、ほんの少しだけ鍋に入れてまぜ、透明になったところで冷却の魔法をかける。
角の残りは小さな袋に入れればいいかと、手頃な布袋にいれてポケットにしまい、怪我人のところへ鍋ごと持って行く。
まるでこちらに来いと言われているように……
目の前まできた時、瞑っていた目が開き、その目を見てしまう。
どこからどう見ても結月にしか見えない。違うところと言えば話さないとか、感情がないと言ったところだけ。
そっと、ガラスのケースに手を置いて見る。
水槽はまだ暖かく、出してくれと言わんばかりに手を伸ばしてくる。
その手の部分に触れる寸前、後ろから誰かに抱き抱えられ水槽から離される。
「奏太様!」
「王子ご無事で?」
「え?なんで?」
「あれは陛下ではありません。何があったのですか?」
「わ、わからない……でも行かなくちゃって気になって、手を伸ばしてきてそれで俺……」
「水晶を」
すぐに出たのだろう。ノアが何かまくし立てるように結月に話している。
「ですから、多分魔力が……はい。危険と判断します。ええ……はい……」
指示を聞いているのか何かやり取りをしているが、あの目を見たからか頭がぼーっとする。
「目……目を見ちゃダメだ……」
「王子?」
「目が開いて、それで目が合って……そこから何だか少し曖昧なんだけど」
「目ですね。サムさん、割れたと同時に目を潰しましょう」
「はい」
「だ、ダメ!出しちゃダメ。結月さん聞こえる?」
「聞こえてる。なんで出したらダメなんだ?」
「外から俺を操れるってことは、きっと魔力があって、意識とかあるからでしょ?」
「そうなると思うが……私が見た時は言われたことをそのまましていたように感じたが?」
「多分これ違う。勘だけど……今出したら大変なことになるような気がするんだ」
「……奏太、お前の勘を信じる。全員撤退。警備を所々に残して、引き上げろ!目は見るなよ……撤退後天幕を張れ」
何故かみんな水晶に向かって敬礼し、各々持ち場へと帰っていく。
一旦外に出て、天幕が張られるのを待ち、木陰に腰を下ろす。
「サム……ここでの天幕終わったら、草原の民を帰して、残りの兵をこっちにこさせられる?」
「可能です」
「みんな疲れてるだろうから、各班の班長だけ呼んで。残りは休憩で……」
「はい。もうあの虫は出ないでしょうか?」
「多分としか言えないけど大丈夫と思う」
すぐに取り掛かりますと言って、班長を集め、使いを出している。
「奏太様、なにか見えたんですか?」
「見えてないよ?感じただけ……。来たら食事の用意を1班でさせて、残りは怪我人の救出。あの部屋の手前にみんな集めてあるから目は見ないと思うけど、班長に伝えないと……」と眠りに落ちる。
気付けば既にみんな来ていて、ノアから伝わったのだろう。けが人が続々と集められてきていた。
それを見て余っている鍋を借りる。
ところどころに生えているのが天草。それに水。お湯を沸かして天草を入れて、緑から透明になるまで煮詰めると傷薬になるはず……それをまず飲ませなければと思い、ゆっくりと薬を作る。
もっと教えて貰っておけばよかったと思い、ユニコーンの角を削って薬にしていたと思い出し、少しだけ角を出して削る。
どのくらいの量がいいのか分からないので、ほんの少しだけ鍋に入れてまぜ、透明になったところで冷却の魔法をかける。
角の残りは小さな袋に入れればいいかと、手頃な布袋にいれてポケットにしまい、怪我人のところへ鍋ごと持って行く。
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