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街
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まさか!と言いながら切れ目に手を入れて持ち上げるとスルッと木がシャッターのように開く。
「階段があるよ?」
「とにかく降りろ。明かりは持ってるのか?」
「ある。かなり強めの光にしないと先まで見えないかも」
「ノア、奏太の代わりに持ってやれ」
明かりの棒をノアに渡し、つけてもらった明かりで少しずつ進む。普通の扉がひとつ見えたのでそこを開けると、一面本で埋め尽くされていた。
「似てるな。暖炉があればそこが通路だろう」
暖炉はなかったが大きな絵がかけられていたところが気になり、額をみんなで外すとまた別の入口が現れた。多分木の中心だろうとは思ったが、入口を覗くと今度は部屋ではなく木の中とわかるほどの濃い匂いと、水の匂いに混じって変な匂いがする。
「何だろうこの匂い」
「進むにつれてきつくなってきますね」
途中、自然にできた岩肌から流れる小さな滝のように、木の中なのに同じ現象が起きていてつい指を出して触ってしまう。
「ノア、扉。開けちゃって良いのかな?」
「奏太、兵に開けさせろ。なんの仕掛けがあるかわからんからな」
「でももし怪我したら……」
「何のために兵がお前を守ってると思ってるんだ?」
進んでひとりの兵が扉を開けてくれ、すぐに扉からは距離はとったが何も起きないので中が見えるように照らす。
「ここ、研究室?」
足元を気にしながら少しずつ中に入っていくと、壁にはまたスイッチがあり、押すと電気がついた。
「学校の理科室みたい」
「ベッドも置いてありますね……」
「王子!」
部屋を見て回っていた兵から声がかかり、そちらに行くと、棚の中には小さなホルマリン漬けの瓶が沢山並んでいた。
「うわー!奏太が見ろ。気持ち悪い」
「俺だって見たくないよ!でもこれ、教科書で見たような気がする」
「教科書ですか?」
「そう、何だったかな……」
「早く思い出せ!」
「結月さん、そんな事言われても……あ!あれだよ!人類の誕生がどうのこうの書いてあるやつ!」
「奏太……悪いが、我々は人間界の教科書など知らんぞ?」
「要は、人が形成されていく順番が載ってたんだけど、それにソックリ。えっと、人間の赤ちゃんができるまでの過程」
「そ、そうか……おい、端まで見せろ」
水晶を棚の位置に合わせてゆっくりと動かしていく。ノアもサムもみんなが見入っている後ろで、パリンと何かが割れる音がして振り向く。
後ろの兵が、違いますと手を上にあげているのを見て、サムが確認をしろと命じる。
「お、おい。奏太!一番端の瓶見てみろ」
「何?え?これって……」
「陛下……ですよね?」
「ここで私のクローンを作ってたのかも……何も話さなかった人形にしか見えなかったが。そこの施設は徹底的に調べろ。私の髪や爪、皮膚に至るまで何も残すな!また作られたら困る。あんな気持ち悪いもの……」
「階段があるよ?」
「とにかく降りろ。明かりは持ってるのか?」
「ある。かなり強めの光にしないと先まで見えないかも」
「ノア、奏太の代わりに持ってやれ」
明かりの棒をノアに渡し、つけてもらった明かりで少しずつ進む。普通の扉がひとつ見えたのでそこを開けると、一面本で埋め尽くされていた。
「似てるな。暖炉があればそこが通路だろう」
暖炉はなかったが大きな絵がかけられていたところが気になり、額をみんなで外すとまた別の入口が現れた。多分木の中心だろうとは思ったが、入口を覗くと今度は部屋ではなく木の中とわかるほどの濃い匂いと、水の匂いに混じって変な匂いがする。
「何だろうこの匂い」
「進むにつれてきつくなってきますね」
途中、自然にできた岩肌から流れる小さな滝のように、木の中なのに同じ現象が起きていてつい指を出して触ってしまう。
「ノア、扉。開けちゃって良いのかな?」
「奏太、兵に開けさせろ。なんの仕掛けがあるかわからんからな」
「でももし怪我したら……」
「何のために兵がお前を守ってると思ってるんだ?」
進んでひとりの兵が扉を開けてくれ、すぐに扉からは距離はとったが何も起きないので中が見えるように照らす。
「ここ、研究室?」
足元を気にしながら少しずつ中に入っていくと、壁にはまたスイッチがあり、押すと電気がついた。
「学校の理科室みたい」
「ベッドも置いてありますね……」
「王子!」
部屋を見て回っていた兵から声がかかり、そちらに行くと、棚の中には小さなホルマリン漬けの瓶が沢山並んでいた。
「うわー!奏太が見ろ。気持ち悪い」
「俺だって見たくないよ!でもこれ、教科書で見たような気がする」
「教科書ですか?」
「そう、何だったかな……」
「早く思い出せ!」
「結月さん、そんな事言われても……あ!あれだよ!人類の誕生がどうのこうの書いてあるやつ!」
「奏太……悪いが、我々は人間界の教科書など知らんぞ?」
「要は、人が形成されていく順番が載ってたんだけど、それにソックリ。えっと、人間の赤ちゃんができるまでの過程」
「そ、そうか……おい、端まで見せろ」
水晶を棚の位置に合わせてゆっくりと動かしていく。ノアもサムもみんなが見入っている後ろで、パリンと何かが割れる音がして振り向く。
後ろの兵が、違いますと手を上にあげているのを見て、サムが確認をしろと命じる。
「お、おい。奏太!一番端の瓶見てみろ」
「何?え?これって……」
「陛下……ですよね?」
「ここで私のクローンを作ってたのかも……何も話さなかった人形にしか見えなかったが。そこの施設は徹底的に調べろ。私の髪や爪、皮膚に至るまで何も残すな!また作られたら困る。あんな気持ち悪いもの……」
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