天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
39 / 127
決断

.

しおりを挟む
「ユーリ!」

結月の声とともに拘束され、ノアが枷を外す。

みんなで取り囲み、教えてもらったように手を翳して魔力を吸い上げる。
5人がかりでも中々吸いきれない魔力は小さなボールくらいの大きさから、大玉の大きさまで膨れ上がり、霧散した。

「あ……ま、魔力が……」

「天王、これで全てか?」

「一旦儂は離れる。そのまま吸い上げを続けてくれ」

リアムの近くに行った天王が腹部に手を入れるが、血も何も出ない。
おかしいなと思った次の瞬間、「ぎゃぁぁぁぁ!」とリアムの悲鳴が聞こえたかと思うと、洪水のような汗をかきながらも天王をリアムが睨む。

「何故……」

「魔臓器を破壊した。儂の術がかけてある。元に戻ることは不可能じゃ」

最後の魔力が霧散し、ユーリが弦を解き元に戻る。

「陛下……」

「分かってる。次の段階へと入る……ユーリまだ大丈夫か?」

「何とか」

「リアム、無魔力ではあるが……外界から遮断させてもらう。全ての現象に干渉しない術だ……これを掛ければもう、お前の声は誰にも届かない。何か言いたいことは?」

「殺して……殺してください……」

「駄目じゃ。永遠の時を、狭間で過ごすがよいわ」

「陛下、陣の準備が出来ました」

みんなで魔法陣の真ん中までリアムを連れていき、嫌がるリアムのいう事は聞かず王三人で氷の魔法と遮断魔法などを掛け、ユーリの魔力で狭間への扉が開かれる。

「リアム……お前を殺さずにするにはこれしか無かったんだ。許してくれ」

王3人それぞれが鍵となり、狭間への扉を閉める。
魔法陣から光が消えた瞬間、ユーリが倒れ、ノアが横にして結月に見せる。

「魔力を一気に解放したからだ。しばらくすれば起きるだろう……奏太、兵に運ばせろ。私達は最後にここを閉ざしてから出る」

「分かった」

走って兵を呼びに行き、ユーリを部屋まで運んでもらう。ノアにはついて行ってあげてほしいと頼み、ルーカスと共に、牢が完全に閉じられるのを最後まで見る。
中にはたくさんの魔法陣が書かれ、ほかの壁と変わらないほど綺麗に閉ざされた牢の入口だった所に明かりが二つ左右につけられ、真ん中に各界の紋章が刻まれる。

「ルーカスさん、これでもう出られないんだよね?」

「あの紋章は、三人の王が揃った時にだけ開く。ほかの者からも見えはするが、触れば手が溶けるほどの火傷をするか、凍るか、切れるかだな」

「切れる?」

「天界は風だ。お前の鎌鼬のようなものだと思えばいい」

「各界で特徴があるんだ……」

「まぁな、結月は氷だが元々何でも出来るからなあいつは……っと親父!」

ふらっと倒れそうになる魔王をルーカスが支え、天王を自分が支えるが、結月の疲労もかなりのものだ。

手を貸そうとすると、まだ自分で歩けるから二人を頼むと言われ、みんなで応接間まで戻る。

すぐに飲み物や食べ物が用意され、結月が勢いよく食べるが、流石に王2人は摘むだけでコーヒーや紅茶を飲んでいた。

「ソフィ、ノアを呼んでくれ。代わりにユーリを頼む。食べ終わったらすぐ見に行くから……」

「はい……あの、まさか魔力が枯渇するなんてことは?」

「それは無い。まだ残っていたから大丈夫だ」

ソフィが呼びに行き、魔力ってなくなるの?と結月に聞く。

「魔力の臓器が破壊されれば、魔力は生み出せないし、一気に使い切ると魔力が作られなくなる可能性もあるが、さすがはユーリだな。多少の魔力は温存していたようだ」

「大丈夫かな?」

「大丈夫だ。それより、お前もルーカスも食っておけ。まだこれから帰らないといけないだろう?」

促されるまま食事を終え、今後は各界でリアムの痕跡探しと施設を発見次第破壊。関わったものの尋問等はそれぞれが行うことになり、みんなで王の間へと行き、それぞれのゲートの前に立つ。

ムーたちをエールラに任せ、ルーカスと共に人間界へ。
ノアと天王と共に天界へ。魔王は魔界へ。
それぞれがゲートを潜り、違う世界へと足を踏み出す。

その時に見た結月の顔は少し寂しそうだったが、行ってこいと背中を押されたので、連絡してよね!と言って歩いていく。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

白い彼女は夜目が利く

とらお。
キャラ文芸
真夏の夜、涼しい風が吹くその場所で、彼女を見つけた。 何の変哲もない男子高校生、神埼仄は小学生の頃一目惚れした少女を忘れられずにいた。 そんなある日、一人の少女がクラスに転校してくる。 その少女は昔一目惚れしたその少女とそっくりで……。 それからだった。 彼の身の回りでおかしなことが起こり始めたのは。 ◆ ◇ ◆ ◇ 怪異に恋する現代和風ファンタジー。 貴方はそれでも、彼女を好きだと言えますか? 毎週水・土曜日、20時更新予定!

あやかし旅籠 ちょっぴり不思議なお宿の広報担当になりました

水縞しま
キャラ文芸
旧題:あやかし旅籠~にぎやか動画とほっこり山菜ごはん~ 第6回キャラ文芸大賞【奨励賞】作品です。 ◇◇◇◇ 廃墟系動画クリエーターとして生計を立てる私、御崎小夏(みさきこなつ)はある日、撮影で訪れた廃村でめずらしいものを見つける。つやつやとした草で編まれたそれは、強い力が宿る茅の輪だった。茅の輪に触れたことで、あやかしの姿が見えるようになってしまい……! 廃村で出会った糸引き女(おっとり美形男性)が営む旅籠屋は、どうやら経営が傾いているらしい。私は山菜料理をごちそうになったお礼も兼ねて、旅籠「紬屋」のCM制作を決意する。CMの効果はすぐにあらわれお客さんが来てくれたのだけど、客のひとりである三つ目小僧にねだられて、あやかし専門チャンネルを開設することに。 デパコスを愛するイマドキ女子の雪女、枕を返すことに執念を燃やす枕返し、お遍路さんスタイルの小豆婆。個性豊かなあやかしを撮影する日々は思いのほか楽しい。けれど、私には廃墟を撮影し続けている理由があって……。 愛が重い美形あやかし×少しクールなにんげん女子のお話。 ほっこりおいしい山菜レシピもあります。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

処理中です...