天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

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決断

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「奏太の言う通りだ。俺もなにか引っかかるなと思っていたからずっと見ていたが、そうか……そちらへ魔力を集めていたから、魔法陣によって魔法を使えないから維持出来なくなった訳か……奏太よ、よく見抜いたな」

「魔王様がずっと見ている方を見ていて思い出しただけですから。でも、それと魂の分離ってなにか関係あるのかな?」

「天界に伝わる禁術じゃ……まさか読んでおるとは。いつも儂の部屋に隠しておったのじゃがの?」

「いつも父上は隠し場所を変えていましたから、探すのに一苦労しましたよ」

「禁術をなぜリアムが使える?」

「結月……いや、もう結月陛下ですね。お忘れですか?私もそこそこ魔力が高いと」

「そんなものは知っている。界の禁術自体、普通簡単に扱えないだろうと言ってるんだ」

「まて結月。リアムはもしかして魔界の禁書も読んだのかもしれんぞ?」

「ええ、城の書庫で読ませていただきました。ルーカスに成りすまして城に入るのは容易かったですよ?」

「おまえ!」

「結月陛下がいなくなった時、あなたも散々書庫で本を読んでますよね?なので入りやすかったのですよ」

「マー坊、その禁書がどうかしたのか?」

「本来ならば、魔界の禁書だから話してはならんのだが、今回はそうはいかんだろう。禁書の一つに、魔力増大と言う記述がある。それを使ったのだろう……ただ、長くは持たなかったはずだが。リアム、まさかとは思うが体に入れたのか?」

「いいえ。クローンを作る際に服に縫い付けて魔力を分けました。その時に天界の禁術も一緒に……」

「二つの界の禁術だと?そんなこと出来るわけが無い!」

「結月落ち着け。親父、何とかならないのか?」

「服は取り替えてあるし、手足の枷にも魔力封じはかかってるから……駄目だな。取った途端何をするか分からん」

「昔から頭の回るヤツだったよお前は!溶けた手がなくなって手枷が半減したところで、魔法陣を消すつもりだったんだろ?だがな、俺だって結月やお前といつも一緒にいた訳じゃない。牢自体に魔力封じをかけておいた。保険だがな!」

「ルーカス……お前にそんな知恵があったとは……」

「親父、こんな時に冗談言うなよ。たまには俺も頭は使うさ」

「珍しい……」

「ユーリまで!」

「失礼しました。ならば、私が弦で縛っている間に何とかなりませんか?」

「ユーリ、かなりの魔力を消費するが……」

「変化します。その間に皆さんで無魔力の魔法をかけて下さい。そうすれば、ただの人です」

「無魔力だと?そんな……そんな屈辱を受けるくらいなら殺してくれ!」

「リアムよ。もう決まったことじゃ。それに、お前が関わったとされる者も今頃捕まっておるじゃろう」

「父上、仲間は城だけではありませんよ?」

「民の中にもいるじゃろうが、そんなものどうとでもなる。結月始めてくれんか」

「ユーリ、まず私が上の結界を消す。消えたと同時に縛れ」

「はい」

すぐに部分変化ではなく、完全な変化へと姿を変えたユーリは、いつでもどうぞと手から伸びる触手のように動く弦を牢の前まで伸ばして待機している。
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