天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

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決断

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「居るみたい。パン屋さんぽい人とかいるもん。配ってくれてるのかな?」

ノアの家族の元まで行くと、姉の方が腕に包帯を巻き、それでも魔法で芋を剥いたりしながら、配膳までしている。

「あの!」

「あら、王子様。え?天……王様……ですか?」

「うむ、そなた腕をどうした?ノアの家族と聞いたが」

「姉さん話してください」

「気にせずとも良い、聞かせてくれ」

「はい。ここに来る途中に、母と私と怪我の重い方を見ながら荷馬車で来たのですが、やはり速度も出せずゆっくり来ていたのがいけなかったのか、血の匂いにつられた幻虎に襲われまして。私は弟達とは違い魔力も少ないのですが、身を守ることくらいしかできず、母と怪我をしている方をかばって腕を……」

「どれ、見せてみなさい」

「そんな、畏れ多い……」

「大丈夫じゃ、さっきもノアの腹の擦り傷を直してきたばかりじゃ」

「姉さん……」

「私よりも、他の方を……私はすぐに治りますので」

「ダメだよ!ノアの家族ってみんな優しすぎるよ。ノアもお姉さんもしなくていい怪我しちゃって……」

ノアが姉の腕を掴んで袖をめくる。
すぐ様天王が魔法を流すとみるみるうちに傷が塞がっていく。

「凄い」

「あ、ありがとうございます」と母親が天王にお礼を言い、姉とノアも礼を言う。

「何、ノアは天界では王子と同格。その家族なら親戚のようなものじゃ。ならば儂はできうる限りの治療をしてこようかの」

「そんなに魔力使っても大丈夫なの?」

「休み休みならば。済まんが、一番怪我の重いもののところへと連れてってはくれんか?」

ノアの姉が引き受けて天王を連れていく。
代わりにノアとワゴンを探し出し、母親も連れてスープを乗せて配りに行き、大鍋の方は城の料理人たちに任せる。

「ねえ、魔界の兵士達の分も運ばないと……幻界の人達は慣れてないだろうし。それに魔王様にも休憩がいるんじゃない?」

「そうですね。母さん、魔界の方なんですが……」

「平気だよ!ここについた時親切にしてくれたから持って行ってあげないとね」

兵士達へ休憩してくださいとスープを配り、ノアがうまく転移でワゴンを動かし、空いた容器と入った容器を入れ替えているので、すぐに配り終わった。

「あの、魔王様……スープなんですけど。王様に民と同じ食べ物はと思ったんですけど……」

「おお、奏太か!有難い。腹は減るし人は増えるしでな。頂こう」

良かったと思い、折りたたみだが椅子に座ってもらい、休んでもらう。

「ルーカス達は見たか?」

「はい……あんな怪我させてごめんなさい。ニコルさんもエマさんが居ないのにひどい怪我を……」

「何を謝っておる。奏太のせいでは無いから気に病む必要は無いし、ニコルはお付としてルーカスを守った。それだけの事だ。それに、エマなら笑って許すと思うぞ?」
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