天満堂へようこそ 6

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
9 / 127
即位

.

しおりを挟む
「もう終わった事だし、お前達のお陰で捕まえれたしさ。気にしなくていいよ?でも匂いのことは話した方がいいと思う」

「うん、僕ユーリさんに話してくる」

バチャッと湯船から元気に飛び出した2匹に、ちゃんと乾かしてもらえと声だけかけ、肩までゆっくりと浸かってから上がる。

「ノア、ムーは?」

「兄が姫の元へと連れていきました。今ルーカス様の兵が交代で見張っているのですが、もしも人を興奮させる作用のあるものなら、兵同士が戦ってしまう危険もあると忠告したので」

「そんな事あるの?」

「あります。大抵興奮剤止まりですが、大きな戦いの前など兵に匂いを嗅がせる軍隊もあるので……」

「幻界って平和そうなのになぁ」

「平和ですが、たまに問題が起こる時は兵が動きます。多いのは幻魔獣の群れがいた時ですが……」

「人もあるってことだよね?」

「中にはそのような時も。天界はあまり聞いたことはないのですが、魔界は前のように良く諍いが起きるので、兵に使うこともあるようです」

「俺、争い事とか嫌いなんだけど、今回はやっぱり俺のせいなのかな……」

「気にする必要は無いと思います。それに、リアムさんの思い込みと姫様への思いなどから起こったことですし」

「そうかもしれないけど……」

「さ、何か食べてください。お風呂に入っている時に軽いものを用意してもらいました」

「でも」

「私も一緒にいただきます。幻魔牛の肉は久しぶりですね。パンに挟んでもらいました。美味しそうですよ?」

分かったと一つ取り口に入れる。
お腹は正直で、食べ出すと余計にお腹が減り、結局スープまで沢山食べてしまった。

コーヒーを飲みながら、今後の予定を聞くと、今出しているお触れと共に式典の準備がされ、明日早速即位の儀式が執り行われると言う。

「まさかだけど、あのヒラヒラの服着ないといけないのかな?」

「今回は前にも着た白の上下にベストを着ればいいそうです。お披露目とあまり変わらないと思いますが」

「ベストも派手なんだろうなぁ」

「式典だけですから」

「ノアも着るんだよね?」

「はい。終ったらスカーフでも良いそうです」

「分かった。幻王のお葬式も白なの?」

「天界での礼装になるので白ですが、人間界は全員黒のスーツには驚きました」

「あれね、最初は白だったんだって。でも汚れて黒くなっていくから黒になったって聞いたことがあるよ」

「天界から魔界へいく感じに似ていますね」

「白から黒ってこと?」

「はい。葬儀は姫様も礼装の薄緑のドレスで出られると思います」

「即位は?」

「緑系でしょうが、驚くと思いますよ?」

「派手なのかな?」

「色々とです」

外の廊下から慌ただしい音がしたので、扉を開けてノアと見ると、ルーカスの兵たちが走って通り過ぎて行った。

「何かあったのかな?」

「見に行くにしても、ガウンから着替えないと行けませんよ?」

「そうだ!服、服あるの?俺のボロボロなんだけど」

「用意してもらいました。天界の服ではないのですが」

「どんなの?」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

白い彼女は夜目が利く

とらお。
キャラ文芸
真夏の夜、涼しい風が吹くその場所で、彼女を見つけた。 何の変哲もない男子高校生、神埼仄は小学生の頃一目惚れした少女を忘れられずにいた。 そんなある日、一人の少女がクラスに転校してくる。 その少女は昔一目惚れしたその少女とそっくりで……。 それからだった。 彼の身の回りでおかしなことが起こり始めたのは。 ◆ ◇ ◆ ◇ 怪異に恋する現代和風ファンタジー。 貴方はそれでも、彼女を好きだと言えますか? 毎週水・土曜日、20時更新予定!

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

後宮の記録女官は真実を記す

悠井すみれ
キャラ文芸
【第7回キャラ文大賞参加作品です。お楽しみいただけましたら投票お願いいたします。】 中華後宮を舞台にしたライトな謎解きものです。全16話。 「──嫌、でございます」  男装の女官・碧燿《へきよう》は、皇帝・藍熾《らんし》の命令を即座に断った。  彼女は後宮の記録を司る彤史《とうし》。何ものにも屈さず真実を記すのが務めだというのに、藍熾はこともあろうに彼女に妃の夜伽の記録を偽れと命じたのだ。職務に忠実に真実を求め、かつ権力者を嫌う碧燿。どこまでも傲慢に強引に我が意を通そうとする藍熾。相性最悪のふたりは反発し合うが──

処理中です...