天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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赤と城

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「姫、お久し振りですね。ルーカスも……父上もお元気そうで」

四人が同時に喋るので誰が誰か分からない。

「私たちの目的は、もうここにはありません。準備はすべて整えてあります」

「何をしようとしておる?」

天王が魔法を発動しようとするも、何かに弾かれ発動できないでいる。

「私が何故クローンをたくさん作ったと思ってるんですか?魔力も前の比ではありません。それが4体。ですが、狭間では手間取りました。腕が無いのは困りましたからね」

「どうやって出た?お前、まだ結月のストーカーがしたいのか?」

「あなたには分かりませんよ?ルーカス。今や姫は憎しみでしかありません。あなたの全てを壊そうとずっと狭間で考えてました……
出られたのは簡単な事。もろい部分にずっと魔法をかけていただけです」

「あの檻は外からも中からも干渉は出来ない!」

「出来るんですよ。微量の魔力であの中を1杯にしてしまえば良い。そこに外からの圧力をかけたらドカン!です」

「くそっ!」

「まさか……」

「ふふ……では、我々はこれで。お待ちしてますよ?あの場所で……」

それだけ言うと全員が一気に消え、何事も無かったような静かな空間に戻った。

「おい、あの場所ってどこだ?」

「結月さん?」

「幻界だ……」

「幻界じゃと?」

「ルーカス……一緒に来てくれるか?」

「勿論だ」

「おっさん、こことあの2匹、エマたちのことは任せた。奏太、お前も残っていい……」

「俺も行く!」

「僕もー!」

「行きます!」

「全く!先にエマの薬だけ渡してくる。おっさんゲートの準備を。母にも連絡してくれ」

「わかった」

急いでエマの部屋へと行き、薬を渡す。

エマは体を起こし、「ニコルも連れて行ってください。ルーカス様の補佐はニコルにしかできません」

「エマ……」

「ルーカス様、お供いたします」

「だが……」

「ルーカス様、お願いします。私はここで待ちますので」

「わかった」

「ご無事で……」

みんなで走りゲートへと向かう。

ゲートの前では天王が魔王と話しており、幻界と連絡がとれないと言う。

「親父、魔界からも応援を。俺の部隊を行かせてくれ」

「それは……女王の許可がないと……」

「そんなこと言っている場合じゃないんだ!バカ親父!」

「天界からもお願いする。こちらも兵が割けぬ……リアムを……捕らえて……いや、殺しても構わん」

「殺すって……捕まえたらいいじゃん!」

「もう、我々の知っているリアムでは無い。他界に干渉するのは極刑に価する」

「そんな……」

「サムは王を守れ!ジョナス、ノア、奏太を守れ」

「御意」

「行くぞ───!」

ゲートを潜ると目の前には城、大きな木の近くに平屋建ての家がある。

「夢で見た所と同じだ」

「城はまだ無事だな。俺と結月で行こう」

「まて!出てこい。隠れるのだけはうまいな」

「褒めても何も出ませんよ?それに、幻界にも使者が送り込んであります。まさか奏太さんが伝説の目を持っていたとは予定外でしたが」

「なんでこんな酷いことするの?あんなに優しかったのに!」

「奏太さんに記憶が無いように、私にもなかったんですよ。一時期……思い出した時には驚きました。まさか、隠されたあなたと幼少時に仲良く遊んでいたとは夢にも思いませんでしたから」

「あの写真か?」

「ええ、おもちゃの隠し場所の虚に入れておきました」

「いつから計画を立てていた?」

そう言う結月の手は僅かに震えている。相当怒っているのだろう。

「姫が姿を消した時……ふと、気付いたんですよ。奏太さんが居なければ父を殺し私が王になればいいと。そうすればあなたを嫁にもらうことも出来たんです。でもあなたはいつも私の事を拒み続けた。だからまず一つずつ片付けていこうと奏太さんを狙ったんです」
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