天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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赤と城

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「ニコルさん、先に行って開けてくれる?俺がエマさん押し上げるから、引き上げて」

「奏太様は?」

「何とかなると思う……気がする」

ニコルが先に行き、エマを中に入れてもらってから、自分の人間の時の姿を想像する。
体が変わっていくのを感じながら下をみると、体毛に覆われているが裸と変わらないので早く服が着たい。

何とか梯子を登ってから、すぐにタンスの中を漁って服を取り出して身につける。

明かりをつけて、熱を確認してからどうするか話し合う。

「川とか井戸とかないのかな?」

「あると思いますが、出るのは危険では?」

「でも、エマさん熱あるみたいだし……俺、盾張って行ってくるよ」

「なら、私が行きましょう。その間エマをお願いします」

分かったと盾を張ってニコルを待つ。
外から水を汲む音がするので、井戸か何かがあるのだろう。
ユーリの様に毒があるかないかの判断も出来ない。みんなに守られてばかりで逃げることしか出来ない。なんにもできない悔しさが自分の中で沸き起こる。

「奏太様、旅道具の中に白い棒がありませんでしたか?」

「うん、あれ何?」と袋の中から取り出して渡す。

ニコルが棒の先を水につけ、見せてくる。

「ただ濡れただけなら毒はなしです。これの色が変わったら辞めておけと言うことなんですが、簡易式の毒味みたいなものですね」

「便利なものがあるんだ」

「前の旅ではノアさんがいたので無かったのですが、一応商人や旅をする者達にとっては必需品なんです」

「ノアは分かるの?」

「経験です」

「よく旅してたって言ってた。あ、タオルなくて、ハンカチみたいな布が沢山あったからこれでもいい?」

「こちらでのタオルみたいなものですね。魔界も似たようなものです」

水で濡らして額に置き、首周りの汗をニコルが拭ってから、煙は出さない方がいいか聞くと、見た感じが町外れの様なので、少しにしようとのことになり、窓を開けて旅道具で湯を沸かす。

「袋に芋とか入ってるよ!」

「先に準備してくれていたのでしょう。新しいみたいですから、茹でましょうか」

「うん、お米もあるけど。柔らかいものの方がいいよね?」

「そうですね。同じ食事になってしまいますが……」

「気にしないからいいよ。旅でご飯は何度か炊いてきたから、俺がするよ。味は保証できないけど……」

台所にあった調味料を使い、芋の粥を作る。薄味だが、なにか口に入れないとニコルも体力が持たないだろう。
お椀によそい、エマに食事を摂ってもらう。

その後、眠ってしまったので向こうはどうなっているんだろうと心配になり、その話しをすると意外にも「ルーカス様も私より強いです」と返事が返ってきた。

「みんな怪我とかしてないといいんだけど……」

下の方からガタガタと音がしたので一瞬身構えるが、出てきたのはムーとブラン。結月だった。
ドレスは動きやすい様に短く切られていたが、怪我などはないようだ。

「結月さん!みんなは?」

「バラバラになったんだが、みんな道は頭に入ってる。エマはどうしたんだ?」
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