天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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記憶と夢

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「え……?」

どのくらいの時間自分が放心していたのかわからないが、肩を叩かれ我に返る。

「誰だ!」

「姫様が来いと言ったんでしょう?どうかされたんですか?」

「ユーリか……」

説明よりも見せた方が早いと思い、ロケットを見せる。

城を出た時はまだ明るかったがかなり薄暗くなってきている。そろそろ戻らないとまずいだろう。

「姫様、まだ新しい痕跡があります。これはどこで?」

「虚の中だ。最後に見たのは木にかかっていたから、最近誰かが入れたんだろう。もしかしなくてもそいつがな……」とペンダントを見る。

「まさか……」

「ユーリ、この辺りにまだ魔力の断片はありそうか?」

「いえ、姫様のが強烈なので分かりません」

「そうか。とにかく、城に戻ろう。その後おっさんに見せるしかないな……おっさんなら1人でも中を覗くくらいは出来るだろう」

ユーリの魔力を使い、馬ごと転移して城に戻る。

城についてすぐに奏太の所へと行く。

「姫様、今までどちらに?」とジョナスに聞かれ、野暮用だとだけ言い、一通り診察をする。

「落ち着いてはいるな。ムー、ブラン、いい加減どいたらどうだ?」

「だって……」

「いいから降りろ。奏太も重いと思うぞ?」

「うん……」

「ジョナス、こいつらに飯やって来てくれないか?水もたっぷりとな」

「御意。参りましょうか」

ムーの上にブランが乗り、ジョナスが部屋を出ていくのを見届けてから、ユーリに天王を呼びに行かせる。

「ノア、奏太は1度でも起きたか?」

「何度か……すぐに眠られたのですが、水は少しずつとっています」

「そうか……なるべく飲む様に言ってくれ。その方が早く余計なものが出るからな」

「分かりました」

扉が開く音がしたので、振り向くと天王が奏太の元に来た。

「おっさん、悪いが奏太は相変わらずだ。話がある」

「なんじゃ?」

王に結界を張らせ、今までの事と調べたことを話した後、木の虚から持ち帰ったものを見せる。

「こんな物が中にか?」

「そのペンダントは奏太の記憶の中では木にぶら下がってた。それが虚の中にあったんだ。中を見てくれ……」

カチッと音がし、中が開けられる。

覗き込んだノアは顔を知らないが、王の顔は真っ青になっており、何故?と呟いている。

「そこでだ。狭間を覗きたい……見るぐらいならおっさんだけでも出来るんだろう?」

「出来はするが、かなりの魔力がいるし、ここでは無理だ。せめて地下でないと……」

「なら、見せてくれ」

「他の王の許可も取らんといかん」

「そんなものはどうでもいいわ!ノア、ルーカスとニコルを連れてこい。ここはエマとジョナスに任せる」

「はい、すぐに」

ルーカスが来るまでに、奏太に点滴を取り付け、水の補充もする。
顔色はだいぶと良くなったが、今奏太が知ったら無理にでも動くだろう。
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