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記憶と夢
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その後、ズキズキと痛みだし、周りで誰かが走っている音は聞こえるが、目が開けられない。
顔に水をかけられたような感触があったので、無理矢理目を開けると、ぼやっとブランが見えた。
「奏太君……」
「ブ…ラン?ムーもいる?」
「クキョッ!います!」
ベッドの上に乗せてもらったのだろう、ムーがほっぺたをぺろぺろと舐めてくる。
「怪我ないか?」
「僕達はないよ?ごめんね?一緒にいれば噛み付いたのに」
「いいよ。危ないことはしないで……汗にも毒あるといけないから、舐めちゃダメだよ……」
そのまま意識が薄れ、最後にムーとブランの鳴き声だけが聞こえた。
「__下がれ」
「_が___す。が……」
なにか聞こえるが誰が話しているのかわからない。
「奏太、おい!」
ほっぺたに何かが当たる感じがしたので、目を開けると、結月が見えた。
「おい、聞こえるか?聞こえたらなにか合図をくれ」
目を開けたり閉じたりしているつもりだが出来ていないのだろう。
感覚もないのでただ聞こえているだけだ。
頭の中で話しても通じている様子はなく、どうしたらいいのか分からないでいると、目の端にリアムに似た人が見えた。
それを知らせようにもどうすればいいのかさえわからない。
「ダメだな……麻痺が進んでるんだ」
「そんな……ではせめて薬を打ってください」
ノアの声が聞こえ、諌めるユーリの声も聞こえる。
「ここの薬師のじじいと話して解毒は打ったから効いてると思う。だが、他にも混ざってるのか麻痺が解毒できんのだ!」
「だったら奏太様はどうなるのですか姫様!」
「今から傷口を切る。私の血をメインにみんなの血も混ぜ万能薬で薄め、入れ替える位に血を抜くしかない」
「取ってください!全部とってくれてもいいです!だから……」
その後ノアの声が聞こえなくなったので、大人しくさせられたのだろう。
「奏太、聞こえてるかわからないが、麻酔は打つ。暫く我慢してくれ。だがそんなに急に入れ替えはできないから、解毒の方法も探す。耐えてくれよ?」
心の中で頷き、そして目を閉じる。
*****
白い家の前で大きな木に登ろうとしても登れずにいて梯子を持っている男の子がいる。
男の子は木の虚の中に何かを隠し機嫌良く家の中にはいっていく。
屋根からは暖炉でも使っているのか煙が上がっており、時折井戸に水を汲み行く子供がみえる。
チラッと顔が見えたときに、自分に似ているなと思った。
何があったのかその後に男の子が泣きながら木の前に来て、わんわんと泣いていた。
その後、何年か経ったのだろう。
成長した男の子は今の俺と同じ顔となっていた。
何があったのかは分からないが、真っ白な光に包まれて出て来た姿は、真っ白な角に天使のような翼が生え体は馬のようになっているが、上半身は白い体毛に覆われまるでユニコーンのケンタウロスバージョンのようになっていた。
尻尾もすべてが白く、腕も一部だけ白い毛に覆われている。
その後、老婆が荷物をもって出てきたと思ったら、すぐに白い光に包まれすべてが爆発し崩壊していた。
残った木の枝にはペンダントが悲しげに掛かっており、ゆらゆらと揺れているのだけがはっきりと見えた。
*****
顔に水をかけられたような感触があったので、無理矢理目を開けると、ぼやっとブランが見えた。
「奏太君……」
「ブ…ラン?ムーもいる?」
「クキョッ!います!」
ベッドの上に乗せてもらったのだろう、ムーがほっぺたをぺろぺろと舐めてくる。
「怪我ないか?」
「僕達はないよ?ごめんね?一緒にいれば噛み付いたのに」
「いいよ。危ないことはしないで……汗にも毒あるといけないから、舐めちゃダメだよ……」
そのまま意識が薄れ、最後にムーとブランの鳴き声だけが聞こえた。
「__下がれ」
「_が___す。が……」
なにか聞こえるが誰が話しているのかわからない。
「奏太、おい!」
ほっぺたに何かが当たる感じがしたので、目を開けると、結月が見えた。
「おい、聞こえるか?聞こえたらなにか合図をくれ」
目を開けたり閉じたりしているつもりだが出来ていないのだろう。
感覚もないのでただ聞こえているだけだ。
頭の中で話しても通じている様子はなく、どうしたらいいのか分からないでいると、目の端にリアムに似た人が見えた。
それを知らせようにもどうすればいいのかさえわからない。
「ダメだな……麻痺が進んでるんだ」
「そんな……ではせめて薬を打ってください」
ノアの声が聞こえ、諌めるユーリの声も聞こえる。
「ここの薬師のじじいと話して解毒は打ったから効いてると思う。だが、他にも混ざってるのか麻痺が解毒できんのだ!」
「だったら奏太様はどうなるのですか姫様!」
「今から傷口を切る。私の血をメインにみんなの血も混ぜ万能薬で薄め、入れ替える位に血を抜くしかない」
「取ってください!全部とってくれてもいいです!だから……」
その後ノアの声が聞こえなくなったので、大人しくさせられたのだろう。
「奏太、聞こえてるかわからないが、麻酔は打つ。暫く我慢してくれ。だがそんなに急に入れ替えはできないから、解毒の方法も探す。耐えてくれよ?」
心の中で頷き、そして目を閉じる。
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白い家の前で大きな木に登ろうとしても登れずにいて梯子を持っている男の子がいる。
男の子は木の虚の中に何かを隠し機嫌良く家の中にはいっていく。
屋根からは暖炉でも使っているのか煙が上がっており、時折井戸に水を汲み行く子供がみえる。
チラッと顔が見えたときに、自分に似ているなと思った。
何があったのかその後に男の子が泣きながら木の前に来て、わんわんと泣いていた。
その後、何年か経ったのだろう。
成長した男の子は今の俺と同じ顔となっていた。
何があったのかは分からないが、真っ白な光に包まれて出て来た姿は、真っ白な角に天使のような翼が生え体は馬のようになっているが、上半身は白い体毛に覆われまるでユニコーンのケンタウロスバージョンのようになっていた。
尻尾もすべてが白く、腕も一部だけ白い毛に覆われている。
その後、老婆が荷物をもって出てきたと思ったら、すぐに白い光に包まれすべてが爆発し崩壊していた。
残った木の枝にはペンダントが悲しげに掛かっており、ゆらゆらと揺れているのだけがはっきりと見えた。
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