天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
76 / 99
記憶と夢

.

しおりを挟む
その後、ズキズキと痛みだし、周りで誰かが走っている音は聞こえるが、目が開けられない。

顔に水をかけられたような感触があったので、無理矢理目を開けると、ぼやっとブランが見えた。

「奏太君……」

「ブ…ラン?ムーもいる?」

「クキョッ!います!」

ベッドの上に乗せてもらったのだろう、ムーがほっぺたをぺろぺろと舐めてくる。

「怪我ないか?」

「僕達はないよ?ごめんね?一緒にいれば噛み付いたのに」

「いいよ。危ないことはしないで……汗にも毒あるといけないから、舐めちゃダメだよ……」

そのまま意識が薄れ、最後にムーとブランの鳴き声だけが聞こえた。

「__下がれ」

「_が___す。が……」

なにか聞こえるが誰が話しているのかわからない。

「奏太、おい!」

ほっぺたに何かが当たる感じがしたので、目を開けると、結月が見えた。

「おい、聞こえるか?聞こえたらなにか合図をくれ」

目を開けたり閉じたりしているつもりだが出来ていないのだろう。
感覚もないのでただ聞こえているだけだ。

頭の中で話しても通じている様子はなく、どうしたらいいのか分からないでいると、目の端にリアムに似た人が見えた。

それを知らせようにもどうすればいいのかさえわからない。

「ダメだな……麻痺が進んでるんだ」

「そんな……ではせめて薬を打ってください」

ノアの声が聞こえ、諌めるユーリの声も聞こえる。

「ここの薬師のじじいと話して解毒は打ったから効いてると思う。だが、他にも混ざってるのか麻痺が解毒できんのだ!」

「だったら奏太様はどうなるのですか姫様!」

「今から傷口を切る。私の血をメインにみんなの血も混ぜ万能薬で薄め、入れ替える位に血を抜くしかない」

「取ってください!全部とってくれてもいいです!だから……」

その後ノアの声が聞こえなくなったので、大人しくさせられたのだろう。

「奏太、聞こえてるかわからないが、麻酔は打つ。暫く我慢してくれ。だがそんなに急に入れ替えはできないから、解毒の方法も探す。耐えてくれよ?」

心の中で頷き、そして目を閉じる。

*****

白い家の前で大きな木に登ろうとしても登れずにいて梯子を持っている男の子がいる。
男の子は木の虚の中に何かを隠し機嫌良く家の中にはいっていく。

屋根からは暖炉でも使っているのか煙が上がっており、時折井戸に水を汲み行く子供がみえる。

チラッと顔が見えたときに、自分に似ているなと思った。

何があったのかその後に男の子が泣きながら木の前に来て、わんわんと泣いていた。

その後、何年か経ったのだろう。
成長した男の子は今の俺と同じ顔となっていた。

何があったのかは分からないが、真っ白な光に包まれて出て来た姿は、真っ白な角に天使のような翼が生え体は馬のようになっているが、上半身は白い体毛に覆われまるでユニコーンのケンタウロスバージョンのようになっていた。
尻尾もすべてが白く、腕も一部だけ白い毛に覆われている。

その後、老婆が荷物をもって出てきたと思ったら、すぐに白い光に包まれすべてが爆発し崩壊していた。

残った木の枝にはペンダントが悲しげに掛かっており、ゆらゆらと揺れているのだけがはっきりと見えた。

*****
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

これもなにかの縁ですし 〜あやかし縁結びカフェとほっこり焼き物めぐり

枢 呂紅
キャラ文芸
★第5回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました!応援いただきありがとうございます★ 大学一年生の春。夢の一人暮らしを始めた鈴だが、毎日謎の不幸が続いていた。 悪運を祓うべく通称:縁結び神社にお参りした鈴は、そこで不思議なイケメンに衝撃の一言を放たれてしまう。 「だって君。悪い縁(えにし)に取り憑かれているもの」 彼に連れて行かれたのは、妖怪だけが集うノスタルジックなカフェ、縁結びカフェ。 そこで鈴は、妖狐と陰陽師を先祖に持つという不思議なイケメン店長・狐月により、自分と縁を結んだ『貧乏神』と対峙するけども……? 人とあやかしの世が別れた時代に、ひとと妖怪、そして店主の趣味のほっこり焼き物が交錯する。 これは、偶然に出会い結ばれたひととあやかしを繋ぐ、優しくあたたかな『縁結び』の物語。

天満堂へようこそ 6

浅井 ことは
キャラ文芸
♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚ 寂れた商店街から発展を遂げ、今やTVでCMも流れるほどに有名になった天満堂薬店。 その薬は人間のお客様は、天満堂薬店まで。 人外の方はご予約の日に、本社横「BAR TENMAN」までお越しください。 どんなお薬でもお作りします。 ※材料高価買取 ※口外禁止 ※現金のみ取り扱い(日本円のみ可) ※その他診察も致します 天界で王子のお披露目の最中に起こった出来事。 新王子奏太が襲われ、犯人は過去に捕えられ狭間の世界へと送りこまれたリアムだったが…… 天満堂へようこそ5の続編となります。 ♪¨̮⑅*⋆。˚✩.*・゚

ナマズの器

螢宮よう
キャラ文芸
時は、多種多様な文化が溶け合いはじめた時代の赤い髪の少女の物語。 不遇な赤い髪の女の子が過去、神様、因縁に巻き込まれながらも前向きに頑張り大好きな人たちを守ろうと奔走する和風ファンタジー。

栗花落と姫と妖と……

浅井 ことは
キャラ文芸
偶然の出会い、そして謎の目を持つ二人。 自分たちは何者で何をしていけばいいのか……

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜

菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。 まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。 なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに! この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。

【完結】召しませ神様おむすび処〜メニューは一択。思い出の味のみ〜

四片霞彩
キャラ文芸
【第6回ほっこり・じんわり大賞にて奨励賞を受賞いたしました🌸】 応援いただいた皆様、お読みいただいた皆様、本当にありがとうございました! ❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。. 疲れた時は神様のおにぎり処に足を運んで。店主の豊穣の神が握るおにぎりが貴方を癒してくれる。 ここは人もあやかしも神も訪れるおむすび処。メニューは一択。店主にとっての思い出の味のみ――。 大学進学を機に田舎から都会に上京した伊勢山莉亜は、都会に馴染めず、居場所のなさを感じていた。 とある夕方、花見で立ち寄った公園で人のいない場所を探していると、キジ白の猫である神使のハルに導かれて、名前を忘れた豊穣の神・蓬が営むおむすび処に辿り着く。 自分が使役する神使のハルが迷惑を掛けたお詫びとして、おむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりをご馳走してくれる蓬。おにぎりを食べた莉亜は心を解きほぐされ、今まで溜めこんでいた感情を吐露して泣き出してしまうのだった。 店に通うようになった莉亜は、蓬が料理人として致命的なある物を失っていることを知ってしまう。そして、それを失っている蓬は近い内に消滅してしまうとも。 それでも蓬は自身が消える時までおにぎりを握り続け、店を開けるという。 そこにはおむすび処の唯一のメニューである塩おにぎりと、かつて蓬を信仰していた人間・セイとの間にあった優しい思い出と大切な借り物、そして蓬が犯した取り返しのつかない罪が深く関わっていたのだった。 「これも俺の運命だ。アイツが現れるまで、ここでアイツから借りたものを守り続けること。それが俺に出来る、唯一の贖罪だ」 蓬を助けるには、豊穣の神としての蓬の名前とセイとの思い出の味という塩おにぎりが必要だという。 莉亜は蓬とセイのために、蓬の名前とセイとの思い出の味を見つけると決意するがーー。 蓬がセイに犯した罪とは、そして蓬は名前と思い出の味を思い出せるのかーー。 ❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。.:*:.。.✽.。.:*:.。.❁.。. ※ノベマに掲載していた短編作品を加筆、修正した長編作品になります。 ※ほっこり・じんわり大賞の応募について、運営様より許可をいただいております。

処理中です...