天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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記憶と夢

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「この拡大した写真を見てくれ」

「これって、魔界で見たマーク?」

「お前が書いたものだと思う。それに、この前の家に私が住んでいた。ここに写ってる家の見える所に必ずこのマークがあったんだ。フランス・イタリア・ドイツ……他にも調べさせたが、必ずこのマークがある。なぜだか分かるか?」

わからないと首を降るしかなく、ただ写真を見るが何も記憶にない。

「これはルーカスとも話したんだが……お前の婆さんはかなりの使い手だったと聞く。もしかしたら、私の魔力を取り込んでお前を隠すために側にいたのかもしれない」

「まさか……」

「いや、ありえる話だ。俺達の魔力は多い。結月ならばすぐに気づくだろう。だが、多少取られても気付かずお前を隠すのに結月は最適だったんだろう」

「この頃は色々なことをしていて、魔力も今より安定していない時期だ。うまく使われていても気付かなかっただろう。その魔力で記憶の塗り替えをしていたのなら、魔力が混ざるのも頷ける」

「じゃあ、常にそばに居たって事?」

「そうなる。この写真に関して気付いたことは何でも言って欲しい。明日はお前が前に住んでいた場所に行く。何か木に引っかかっていたんだ。今もあればいいんだが……」

「そんなのもうないんじゃない?」

「かなり外れにあったようだから、そればかりは分からんが」

「っと、時間切れだ!ノアにはまだ何も言うなよ?今日は食事だけだから、明日ユーリとノアに話す」

「聞かれたら……」

「結界は張るし、ちょうどジョナスもいるから都合がいい」

「分かった」

その後部屋に戻るとムーとブランは洋服を着せられ、ごねて逃げまくって何とか今の格好でいさせてもらえることになった時には、もうグッタリとしていた。

「ノア、もう疲れたよ……」

「あと少しの辛抱ですよ。ですが、きっと大きなお風呂を作ったと言っていたのでそこにみんなで行くことになりそうですが」

「忘れてた……ノア達はちゃんと話できた?」

「はい。ありがとうございます。父は今、姫様の方の警護へと行きましたが」

「うん。みんなが仲良くいてくれるのが俺の一番の望みだから」

係の人かはわからないが迎えに来てくれたので、後について食事の会場へと向かう。
晩餐とは聞いていたが、大広間みたいなところでするのかと思ったら、中庭に出た。

「あの、どこで……」するのか聞こうとしたら、ズキッとする痛みと共に、腕から血が流れていることに気づく。
目の前にはノア。
係と思っていた人は2人とも剣を出しているのをノアが1人で止めている。

ガサガサっと音がし、周りを見ると囲まれている。みんな顔は隠しているが、全員剣を持っているのでノアひとりでは無理だ。

「ノア……」

「道を作ります。その間に逃げてください」

「逃げられないよ。何人いると思ってるの?俺も戦う!」

「ダメです!お披露目の前に王子が人を殺めたとなっては民への信頼が薄れてしまいます」

だったら!とノアと自分を覆うように盾を張る。
こうして移動していけば相手は何も出来ないだろう。
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