天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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記憶と夢

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「この近くって何かあるの?」

「田舎ですから、うどん蕎麦のお店ぐらいしかみてませんが」

「そこでいいよ。何か食べないと倒れそう」

歩いて免許センターを出るとすぐうどんやさんがあり、かなり古いお店だったが空腹には耐えられずに店の戸を開ける。

「年季入ってるね」

「いらっしゃいませ」結構歳のいった老夫婦でしているのか、お婆さんが注文を聞きに来た。

「えっと、天ぷらうどんのセット」

「私も同じものをお願いします」

「少しお待ちくださいね」

おじいさん天ぷらのおうどんセット二つね。と中のおじいさんに言っているのだろう。中からは「はいよ」と聞こえてくる。

「あ、結月さんに連絡しないと」

「しておきました」と頭を指す。

「何だって?」

「車はこちらに来ているので、食べたら一度屋敷のほうへ帰り、天王が全員をゲートで通してくれるそうです」

「やっぱり王様の魔力って凄いの?」

「それはもう。奏太様と姫様の次ぐらいではないかと思います」

「普段魔法なんて使うことないと思うんだけどなぁ?」

「そうですね。女性は料理などで魔法を使いますよ?芋の皮を剥くのも食器を洗うのも。鍋まで魔法で混ぜていますから器用だと思います」

「全部一度にするってこと?」

「ええ。うちの母や姉もしていますよ。それで私たちも忙しいとか言われると驚きを通り越してあきれますが」

「日常生活でそれなら他も人もそうなのかな?」

「民の方はそこまで魔力が多いわけではないので殆どが手作業ですよ。こちらの人間界の方が発展しているくらいです」

そんなことを話していると、お待たせしましたとうどんが来る。並べられたのは素うどんに、ご飯と漬け物。
別で天ぷらが盆に乗っており、塩が添えられている。

「なんか思ったのより豪華なんだけど」

「そうですね。温かいうちにいただきましょうか」

いただきますと、うどんの汁を飲む。

「美味しい」

「ですね」

そのまま半分の海老とししとうはうどんにいれ残りはご飯のおかずとして塩で食べる。

「だめ。お腹いっぱいだよ」

「私もここまで満腹なのは久しぶりです」

「ご馳走さまでした」

「茶はいかがですかな?」

「あ、有難うございます。結構量が多いですね」

「ほら、うちは自動車の所の前でしょう?あの中は売店ぐらいしかないそうで、若い子達がたくさん来てくれるんですよ。なので自然にご飯も大盛りになってしまって。ごめんなさいねぇ」

「いえ、天ぷらも美味しかったし、うどんもおつゆも美味しかったです」

「そうですか、それはよかった」

時計を見てお会計を頼むと、二人で1600円と安かった。

車に乗り家に向かう間に結月から聞いたことを話す。

「なるべくお側から離れないようにしますが、もし離れるときは姫様や兄、ルーカス様といてください」

「うん。ムーとブランも部屋から出さないようにする。なるべくだけど」

「後、私の父が姫様の護衛として天界に来るそうですので紹介したいのですが」

「本当に?いいのかな?」

「はい。姫様とは御姉弟ですので、父も私が奏太様に付くことになったときは喜んでくれました」
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