天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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仕事復帰

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使用人の持ってきた朝食をゆっくりと食べ、コーヒーを飲む。

「ムーとブランは?」

「暫くいたのですが、姫様に連れていかれました」

「また手伝いかな?」

「それもありますが、ブランさんの魔力がムーさんよりもあるそうで、今から色々と教えると言っていましたが」

「変なこと教えないといいんだけど……」

「大丈夫だと思います。気になるのはまた実験台にならないと良いのですが……」

「たまにお腹壊すからね」

「兄の薬は効きましたか?」

「あの水色の薬何?」

「水色ならば気持ちを落ち着ける効果があります」

「ユーリさんも作れるんだ?」

「幻界ではよく使われる薬なので、私でも作れます」

「そうなんだ。甘かったよ?」

「味は人それぞれ感じ方が違うのです。甘ければ疲れている、動揺しているなど。辛くなればなるほど症状は重いと考えてください」

「辛くなくてよかったよ。リアルな夢だっただけだから」

朝食を済ませて会社まで行くと、しっかりとガラスケースに入れられた、昨日より大きいポスターがでかでかと貼り付けられている。

そのポスターと自分とを見る目が気になったので、足早にエレベーターに乗って部屋まで行き、ノアと手分けして企画書のコピーを取り、お昼の準備もしておく。

お昼を少し過ぎてから、二階の食堂に行くと、いつものおばさんが「副社長さん、あのぽすたーなんだけどね、女の子が離れんのよ……何とかならんやろか?」

「あ!」

窓の方にガラスケースに入ったポスターがあり、その前にビル内の会社の女性が群がっている。

「ごめんね、俺注意してくるから、コーヒー二つと、オススメのおやつも二つお願いね」

群がる女性達に、「あの……」と声を掛けるが、無視されてしまう。

大きく息を吸い、「あの、昼休み終わってますけど!」と言うと、社員達が振り向いたと思った瞬間、空気が凍りついたと思った。

「え?」

「キャーーーー!本物よ!」と囲まれ、身動きが取れないでいると、どこから入ってきたのかノアが目の前に立ち、女性達を睨みつけている。

「これ以上副社長に近付くことは許しません!そして、制服から各会社と名札から名前と顔の方は覚えさせていただきましたので、報告させていただきます!」

「やだぁ。あの人もイケメンなのに態度わるぅい!」そう言って散り散りにオフィスへと戻っていく。

「有難うねぇ。これでお昼の片付けが出来るよ。まだ交代で食べに来る人もいるから困ってたんだ。これ、前に食べてくれたわらび餅。少ないんだけど食べておくれな」

「良いんですか?ありがとうございます」

お礼を言って窓際に座り、先に電話をかける。
出たのはユーリだったので、すぐに食堂のポスターを撤去して欲しいと頼み、わらび餅をノアの分と半分に分ける。食べながら、迷惑だ!と散々愚痴を言いながら食べ、食器を返却口に返してから、1階の警備室へと向かう。

流石に警備の者は顔を知っていたのか、驚いた顔で敬礼してくる。

耳元で「幻界の狼です」と教えられ、狼人間かと思い顔を上げる。
確かに体付きは2人とも大きい。

「如何されましたか?おう……副社長!」

「昨日の夕方……17:00~19:00までの防犯カメラの映像が見たいんだけど」

準備をするので隣の部屋で待っていてほしいと言われ、ノアと椅子に座って待つ。
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