天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

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仕事復帰

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バーを出て、車に乗り自宅へと帰る。

食堂で田中さんに預かったものを渡し、夕飯をお願いする。

「ブランは?」

「先程また泥んこになってましたのでお風呂に。そしたら寝てしまいました」

「あのさ、その臭いやつって、門の前とかにも撒けるの?」

「可能ですが……」

「じゃあさ、撒いておいてよ。前みたいなことになったら嫌だから」

「承知しました」
お食事をお持ちしますと裏へ行ったので、席を立ち手を入念にキッチンで洗う。

「まだ臭う気がする。二度と触りたくないものの一つに加えておく」

「あれは私も初めて臭いを嗅ぎました。もっと匂いの少ないものだったと思ったのですが」

「ノアも知ってるものなの?」

「野菜など作る際にも周りに撒きますから。庭小人がたまに野菜を持っていくので。でも、特別な配合のようでしたし、その薬草は貴重なのかもしれませんね」

「大事な薬草なら高価なのかな?栽培することが珍しいけど」

「あちらのものは人間界では育ちませんから、相当な時間がかかっていると思います」

「今度見てみようかな」

食事が並べられ、頂きますと食べ始める。
今夜のメインはチキンの香草焼きだった。
サラダもチキンもとても美味しかったが、やはり匂いが気になる。

「ご馳走様」

お腹いっぱいではなかったが、とにかくお風呂に入りたくて、地下に出来たと聞いた浴場へと行く。

「何で旅館みたいに、男湯と女湯ってあるのさ……」

着いて見たものは旅館でよく見る暖簾。

「家の風呂なんだからいらないだろ?」

そう言いながらも脱衣所で服を脱いで中に入ると、洗い場から旅館の大浴場にしか見えず、また何かの影響なのかと呆れてしまう。

「これを俺ひとりで使うのも嫌だから、ノアも入ろうよ」

「ですが……」

「あ、田中さんも呼んだらいいじゃん!ノア呼んでよ」

「わ、分かりました」

呼ばれた田中さんはかなり驚いていたが、仕事も今落ち着いているからと付き合ってくれた。

みんなで背中を洗いっこしてから、のんびりと湯に浸かる。

「はぁー。気持ちいい!これも温泉なの?」

「左様です。本来このあたりの土地には温泉が出るようですが、人間は気づいていないようで、使い放題なのです」

「だからかけ流しなのか……」

「少しは適温にするために水を使っていますが、外で水道水をさらに濾過して使っていますので、お湯が柔らかいかと」

「うわ、贅沢。今の時代は気づきそうだけどなぁ?」

「あの森がありますでしょう?あそこが源泉なのですよ。それを、桐谷家と天満家と繋いでおります」

「あの森って公園になってたよ?」

「それも買い取ってあるので問題はありませんし、そこ以外からは温泉は出ていないので、他の家には温泉など無いでしょう。
この隣にも温水プールが出来ています。冬限定ですが」

「この家どれだけ地下掘るつもりなの?大丈夫なのかな?」
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