天満堂へようこそ 5

浅井 ことは

文字の大きさ
上 下
19 / 99
仕事復帰

.

しおりを挟む
「なになに?らん……」

「LAND ROVER。その中でも種類があって、RANGE ROVERのこれが欲しいんだ。ほんとはこのもうひとつ高いグレードの……」

「全くわからん!ユーリ、これをコピーして明日車屋に行ってきてくれ」

「はい。奏太さんはMTを取られますが……その仕様でいいのですか?」

「あればその方がいいけど」

「色は?」

「黒」

「では、車が来るまでお楽しみにしていてください。ほかの車はいいのですか?」

「え?1台でいいよ?」

「いえ、姫の気が変わらないうちにと思いまして」

「ならさ、他は小ぶりのヤツ1台任せるよ。軽自動車でもいいかな」

「ではその様に」

「結月さん、後さ自転車買ってもいい?折りたたみのなんだけど」

「いつ使うんだ?」

「庭も広いし、ムーとブラン追いかけるの大変そうだから。ドッグランの所もサイクリングコースあったし、家の近所の森公園にもあったからそこで使うよ」

「良いだろう。自転車も好きなのを買ったらいい。薬そ……いや、高校の卒業祝いらしいものもしてなかったからな」

「そうだったっけ?」

「ところで、チームはいつから動く?」

「明日顔合わせできると思う。だから、帰ってから企画書まとめたいんだ」

「じゃあ、帰ったら爺にこれを渡しておいてくれないか?」

「何これ?」

中を見ようとすると、やめておいた方がいいと言われたが、気になったので袋を開けてみる。

「臭っ!何これ。あの変な果物とは違うみたいだけど」

「それも薬草の一つだ。少し混ぜてあるが」

「何に使うの?ノア、ビニール頂戴!ほんとに臭いからコレ」

「だからやめておけって言ったのに……」

「また何かの冗談だと思ってたからさ。まだ鼻の周りが臭い。自分も臭く感じる!」

「それはな、簡単に言えば魔除みたいなものだ」

「この世のすべての何よりも結月さんのが怖いけど?」

「あのなぁ。魔除けと簡単に言ったが、別にお化けよけとかではない。ムーとブランが敷地にある薬草のビニールハウスに入らないように、周りにこれを撒くんだ。そしたら動物や虫は入ってこない」

「風で飛ばされたりとか、薬草に臭いが移るとかないの?」

「これは撒いたらすぐに土に吸収されるし、毒ではない。撒いた場所には匂いが残るが、それがわかるのは動物や虫だけで、私たちにはわからないから大丈夫だ」

「撒くまでが強烈なんだ」

「私だって使いたくないさ。ただ、今作ってる薬草はやっと育ったものだから、奴等の遊びで駄目にしたくない」

「わかった。渡しておく……」

「姫様、お食事は?」

「今日はガマ親分と食事してから帰る。奏太もと言われたんだが、病み上がりだと言っておいた」

「また今度誘ってくださいってちゃんと言っておいてよね?印象悪くなると嫌だからさ」

「親分はお前を気に入ってるぞ?玉藻もだがな」

「だんだん人間から離れていく気がするよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

目が覚めたら夫と子供がいました

青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。 1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。 「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」 「…あなた誰?」 16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。 シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。 そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。 なろう様でも同時掲載しています。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

後宮の記録女官は真実を記す

悠井すみれ
キャラ文芸
【第7回キャラ文大賞参加作品です。お楽しみいただけましたら投票お願いいたします。】 中華後宮を舞台にしたライトな謎解きものです。全16話。 「──嫌、でございます」  男装の女官・碧燿《へきよう》は、皇帝・藍熾《らんし》の命令を即座に断った。  彼女は後宮の記録を司る彤史《とうし》。何ものにも屈さず真実を記すのが務めだというのに、藍熾はこともあろうに彼女に妃の夜伽の記録を偽れと命じたのだ。職務に忠実に真実を求め、かつ権力者を嫌う碧燿。どこまでも傲慢に強引に我が意を通そうとする藍熾。相性最悪のふたりは反発し合うが──

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

処理中です...