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異界
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「雪翔下がっていなさい」
「ダメだよ冬弥さん!」
「那智と檪と先に行きなさい。はぐれても必ず見つけますから。那智、頼みましたよ」
「分かった。無理するなよ」
そう言って、那智が無理やり檪の背中に乗せてきたので、そのまま走る形で冬弥から離れ先に進む。
「まって、下ろして!」
「ダメだ。冬弥から欠片をもらったとはいえ俺もそんなに長くは持たない。雪翔、離れて安全なところについたら集中しろ!頼りはお前だけなんだから」
「そんな……」
後ろを振りかえると、既に冬弥の姿は小さくなっており、那智も檪も全力でその場を駆け抜けるので、檪にしがみつくしか無く、ようやく止まったと思ったら、集中しろと那智に言われる。
目を閉じて、巻物に触れた時の感覚を思い出しながら集中すると、何故かなにかに呼ばれているような感覚になり、檪に伝えて自分が思う方向に進んでもらう。
「真っ直ぐ……止まって!」
「何かあるのか?見た感じ何も無いが」
「ある。ここに……」
檪から下りて周りを見渡して目を瞑る。
目を閉じたまま白に頼んで進んでもらうと、見えない壁のような感触があり、思った場所に手を置くと、ズボッと手首まで入り一瞬引っ込めてしまう。
「あるんだな?」
「分からないけど、手が……」
「雪翔、急かしたくないんだが……」
「分かってる」
そう言って先ほどと同じように手を入れると、指先に硬いものが当たったのでソレを掴んで手を引き出す。
長さは20cmちょっと。
紫色に金の刺繍があしらわれた布に入っており、中をみると刀だった。
「これって刀だよね?」
「長さからして一尺無いと思うから、短刀だな」
「短刀?脇差みたいなの?」
「脇差ならもう少し長い。小太刀と言うこともあるが、分類的には短刀と思っていいと思う。俺も詳しくないんだが……」
「柄の部分ていうのかな?彫り物が……これも星のマークが付いてる」
「これだけか?」
「手に当たったのはこれ。もう一度顔入れてみる!」
おい待て!という那智の制止を振り切り、頭から中に顔を突っ込んで目を開ける。
体は白が支えてくれているので大丈夫だと安心していたが、手の当たったであろう場所より奥に、黒い箱が置いてあり、両手を伸ばして手に取って空間から出る。
「那智さんこれ……」
「何だこの箱」
「開けてみる?」
みんなが何も言わないので、真ん中にかかっていた紐を解き蓋を開けると、今までよりも分厚い本が中には入っていた。
それと同時に周りが光に包まれ始め、背後から冬弥の気と、九堂の気を感じ、冬弥の手を取り強く握る。
ドサッ____
「いったー!」
手には短刀と本の入った箱。
周りは暗く、誰の気配も感じない。
「白?檪、冬弥さん、那智さん?」
「私はここに」
「白。良かった……みんなは?」
「分かりません。はぐれてしまったようです」
「手……掴んだのに……」
「私が抱えますので、ここから離れましょう。少しですが、他の方々の気を感じられます」
白に運んでもらってみんなのところに戻ると、那智も冬弥もその後に無事合流でき、檪も問題ないと戻ってきた。
車椅子に座らせてもらってから、良かったと一安心して本を手に取る。
前と同じ様に言葉などが頭の中に流れ込み、その後はどこの場所か分からなかったが滝が鮮明に映像のように頭に映し出された。
「雪翔?」
「航平ちゃん……」
「箱と刀閉まっておけってみんな言ってるけど……」
「う、うん。それよりあの人どうなったの?」
「すいません。また逃げられてしまいまして。時間がと焦っていたので、何かあったんだと思います。それよりもここから出ましょうか」
白を戻して周太郎に背負ってもらい、地上に出てから前に行った洞窟の近くの社へと行き、一旦体を休めることになった。
その間に、お茶を飲みながら中の様子を話、冬弥の話も聞いてこれからどうするかという話し合いに変わっていった。
「巻物は四つ。残り一つは九堂の手にあります。まずはこの四つを調べた方がいいと思うので、浮遊城に行きませんか?」
「ダメだよ冬弥さん!」
「那智と檪と先に行きなさい。はぐれても必ず見つけますから。那智、頼みましたよ」
「分かった。無理するなよ」
そう言って、那智が無理やり檪の背中に乗せてきたので、そのまま走る形で冬弥から離れ先に進む。
「まって、下ろして!」
「ダメだ。冬弥から欠片をもらったとはいえ俺もそんなに長くは持たない。雪翔、離れて安全なところについたら集中しろ!頼りはお前だけなんだから」
「そんな……」
後ろを振りかえると、既に冬弥の姿は小さくなっており、那智も檪も全力でその場を駆け抜けるので、檪にしがみつくしか無く、ようやく止まったと思ったら、集中しろと那智に言われる。
目を閉じて、巻物に触れた時の感覚を思い出しながら集中すると、何故かなにかに呼ばれているような感覚になり、檪に伝えて自分が思う方向に進んでもらう。
「真っ直ぐ……止まって!」
「何かあるのか?見た感じ何も無いが」
「ある。ここに……」
檪から下りて周りを見渡して目を瞑る。
目を閉じたまま白に頼んで進んでもらうと、見えない壁のような感触があり、思った場所に手を置くと、ズボッと手首まで入り一瞬引っ込めてしまう。
「あるんだな?」
「分からないけど、手が……」
「雪翔、急かしたくないんだが……」
「分かってる」
そう言って先ほどと同じように手を入れると、指先に硬いものが当たったのでソレを掴んで手を引き出す。
長さは20cmちょっと。
紫色に金の刺繍があしらわれた布に入っており、中をみると刀だった。
「これって刀だよね?」
「長さからして一尺無いと思うから、短刀だな」
「短刀?脇差みたいなの?」
「脇差ならもう少し長い。小太刀と言うこともあるが、分類的には短刀と思っていいと思う。俺も詳しくないんだが……」
「柄の部分ていうのかな?彫り物が……これも星のマークが付いてる」
「これだけか?」
「手に当たったのはこれ。もう一度顔入れてみる!」
おい待て!という那智の制止を振り切り、頭から中に顔を突っ込んで目を開ける。
体は白が支えてくれているので大丈夫だと安心していたが、手の当たったであろう場所より奥に、黒い箱が置いてあり、両手を伸ばして手に取って空間から出る。
「那智さんこれ……」
「何だこの箱」
「開けてみる?」
みんなが何も言わないので、真ん中にかかっていた紐を解き蓋を開けると、今までよりも分厚い本が中には入っていた。
それと同時に周りが光に包まれ始め、背後から冬弥の気と、九堂の気を感じ、冬弥の手を取り強く握る。
ドサッ____
「いったー!」
手には短刀と本の入った箱。
周りは暗く、誰の気配も感じない。
「白?檪、冬弥さん、那智さん?」
「私はここに」
「白。良かった……みんなは?」
「分かりません。はぐれてしまったようです」
「手……掴んだのに……」
「私が抱えますので、ここから離れましょう。少しですが、他の方々の気を感じられます」
白に運んでもらってみんなのところに戻ると、那智も冬弥もその後に無事合流でき、檪も問題ないと戻ってきた。
車椅子に座らせてもらってから、良かったと一安心して本を手に取る。
前と同じ様に言葉などが頭の中に流れ込み、その後はどこの場所か分からなかったが滝が鮮明に映像のように頭に映し出された。
「雪翔?」
「航平ちゃん……」
「箱と刀閉まっておけってみんな言ってるけど……」
「う、うん。それよりあの人どうなったの?」
「すいません。また逃げられてしまいまして。時間がと焦っていたので、何かあったんだと思います。それよりもここから出ましょうか」
白を戻して周太郎に背負ってもらい、地上に出てから前に行った洞窟の近くの社へと行き、一旦体を休めることになった。
その間に、お茶を飲みながら中の様子を話、冬弥の話も聞いてこれからどうするかという話し合いに変わっていった。
「巻物は四つ。残り一つは九堂の手にあります。まずはこの四つを調べた方がいいと思うので、浮遊城に行きませんか?」
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