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出てきた秋彪は白い卵のようなものの中に入っており、立ったまま眠っているかのようにも見える。
「秋彪さん……無事なの?」
「眠ってもらってるだけです。ただ、外との関わりはたってもらってますが」
そのまま無言の時間だけがしばらく続いていたが、突然「周太郎!」と冬弥が言った瞬間爆発が起こり、その砂埃に乗じて周太郎が走って入ってきた入口に向かう。
「そうはさせません!」
男が何をしたのかは見えなかったが、ピシッと鞭のような音がしたと思ったら、小さく唸る声が聞こえ、周太郎になにかしたことだけは分かる。
その後木の箱などが男に投げつけられ、それを避けた隙にまた周太郎が走って出ていくのが見えたので、誰かを呼んできてくれると思い冬弥の後ろからこっそりとキーホルダーを握りしめ、ダメでもやってみようと『白龍、黒龍、どちらか来て。一人は周太郎さんを守って』と強く念じる。
『雪……僕達は箱を守ってるから出られない』
『うん、見付けたのもちゃんと入れておいてね』
金が影に消えたのを見て前を向くと男の頭上に黒龍がいた。
見ている方向は秋彪の入っている卵の入れ物。
どうしようと思いながらも冬弥と男は睨み合ったままだ。
「ねえ、おじさん。おじさんが僕のこと欲しいって前言ってた時に理由は聞いたんだけどさ、おじさんは強いの?」
突然話しかけたから驚いたのか、こちらを見てニタッと笑い、「そちらの方よりは強いと思いますよ?」と自慢げに言う。
「雪翔?」
「僕、おじさんの名前も知らないし、今回も僕達のあと付けてきたんでしょ?それって卑怯だよね?自分では探さないでさ……」
「名前ですか?あるにはありますけど、下手に名乗ると呪を掛けられてしまいますから、九堂(くどう)とでも呼んでください」
「今、おじさんは本体?」
「勿論。これだけの力を使うのには本体でないと無理なのでね」
その間舌なめずりをしていないということは、もしかしたら本当なのかもしれない。
今までは話す度に舌なめずりをしてからかうように言っていたが、前に話した時も冗談を交えずに話す時はしていなかった。
そして今もしてはいない。
本体ならばと思い、話しながら冬弥の背中に指で文字を書く。
[うえにくろがいる]
[はなしてるあいだに たまご うばって]
「僕でないと巻物が開かないって言ってたよね?」
「そうですね」
「本当なら、なんで直接僕のところに来なかったの?」
「普通に家に行ったらつまらないじゃないですか。私、暇だったんですよ。それに卑怯でもなんでもないんですよ?無駄な労力を使わない賢い方法だと思ってほしいですね」
「秋彪さんを巻き込まなくてもいいじゃないか!」
そう言っている間に、玲と那智も来たとわかり、二人の気を消しているのが白龍だと感じた。
[ふたりもきたよ]
『黒龍そのおじさんを捕まえて!白龍秋彪さんをみんなで。逃げて!』
冬弥の背中を少し押したのが合図になったのか、玲と那智の姿も露になり、一気に男に飛びかかる。
「玲さん行って!」
那智と二人で担ぎ、後方を白龍が守る形で秋彪は奪還できたが、今まで見たことのないような形相で男が怒っている。
「貴様ら……」
冬弥が男に対して掌から光る狐火のようなものを飛ばして攻撃し、周りはビリビリとした空気に変わる。
「秋彪さん……無事なの?」
「眠ってもらってるだけです。ただ、外との関わりはたってもらってますが」
そのまま無言の時間だけがしばらく続いていたが、突然「周太郎!」と冬弥が言った瞬間爆発が起こり、その砂埃に乗じて周太郎が走って入ってきた入口に向かう。
「そうはさせません!」
男が何をしたのかは見えなかったが、ピシッと鞭のような音がしたと思ったら、小さく唸る声が聞こえ、周太郎になにかしたことだけは分かる。
その後木の箱などが男に投げつけられ、それを避けた隙にまた周太郎が走って出ていくのが見えたので、誰かを呼んできてくれると思い冬弥の後ろからこっそりとキーホルダーを握りしめ、ダメでもやってみようと『白龍、黒龍、どちらか来て。一人は周太郎さんを守って』と強く念じる。
『雪……僕達は箱を守ってるから出られない』
『うん、見付けたのもちゃんと入れておいてね』
金が影に消えたのを見て前を向くと男の頭上に黒龍がいた。
見ている方向は秋彪の入っている卵の入れ物。
どうしようと思いながらも冬弥と男は睨み合ったままだ。
「ねえ、おじさん。おじさんが僕のこと欲しいって前言ってた時に理由は聞いたんだけどさ、おじさんは強いの?」
突然話しかけたから驚いたのか、こちらを見てニタッと笑い、「そちらの方よりは強いと思いますよ?」と自慢げに言う。
「雪翔?」
「僕、おじさんの名前も知らないし、今回も僕達のあと付けてきたんでしょ?それって卑怯だよね?自分では探さないでさ……」
「名前ですか?あるにはありますけど、下手に名乗ると呪を掛けられてしまいますから、九堂(くどう)とでも呼んでください」
「今、おじさんは本体?」
「勿論。これだけの力を使うのには本体でないと無理なのでね」
その間舌なめずりをしていないということは、もしかしたら本当なのかもしれない。
今までは話す度に舌なめずりをしてからかうように言っていたが、前に話した時も冗談を交えずに話す時はしていなかった。
そして今もしてはいない。
本体ならばと思い、話しながら冬弥の背中に指で文字を書く。
[うえにくろがいる]
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「そうですね」
「本当なら、なんで直接僕のところに来なかったの?」
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「貴様ら……」
冬弥が男に対して掌から光る狐火のようなものを飛ばして攻撃し、周りはビリビリとした空気に変わる。
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