下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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四社巡り

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順調に回復し、予定通り退院する。

「お世話になりました」

車に荷物を入れて家に戻ってゆっくりとお風呂に入る。

「気持ちいい……」

「ひーたんも!」

「翡翠入るの?いちごのお洋服じゃなくなるよ?」

「むー!」

「分かったよ。足だけ洗おうか」

プニプニと洗うのは気持ちいいのでつい長くぷにぷに感を楽しんでしまう。
足拭いてねーと言っている間に逃げ、大抵漆に捕まり首根っこを掴まれている。

「最近漆さんよく出てくるね」

「琥珀様と交代で社に行かれてますよ?ひーちゃんは漆様に懐いてますから」

「そうなの?」

「ジージと呼ぶと漆様が……」

「様が?」

「紫狐からは言えません!あれ見てくださいあれ!」

脱衣所でジージと呼ぶ翡翠に、デレデレした漆。流石にこれは見た目からは想像ができない。

「漆さーん!」

デレデレデレっとしていて完全に聞いていない。が、冬弥が呼ぶとシャキッとする差はなんだろう?

「しーちゃん、タオル貸して。もう出るよ」

軽く体を拭いてからでないと、前に滑りそうになったので怖い。

拭いてから脱衣所でちゃんと体を拭き服を見ると、上下セットのジャージが出されていたので着てみる。

ちょっとダボッとしているので、傷に当たらずチクチクしない。

そのままリビングに行って、ズボンの裾直しをしている栞に声をかける。

「隆弘さんの?」

「少し直しただけだからすぐ終わったわよ?隆弘くんも背が高いから那智様に体型が近いのね」

「全部直したの?」

「少しずつね。家が呉服屋だから縫い物は得意なの。今度翡翠ちゃんにも作ってあげるわね」

「ピンクの苺柄ないかなぁ?翡翠苺好きだから」

「今度見てくるわね。あ、薬塗った?」

「届かなくて……」

ソファでズボンを下ろして塗ってもらい、カーゼで止める。

「早く肌色に戻るといいんだけど」

「お風呂でマッサージしてくださいって。まだ触ると痛いから避けちゃってて」

「痛みが引いてからでいいかも。傷は私も怖くて触れないし」

「うん」

ご飯の連絡が来たので食堂に行くと、美味しそうな鍋の香りと、たくさんのご馳走が並んでいて、退院おめでとうと言われる。

ありがとうと言って真ん中に座り、もつ鍋を堪能し、冬弥特製ポテトサラダを沢山食べる。

「病院のご飯美味しくないんだもん」といいながら、野菜も沢山食べ、海都とゲームをして遊ぶ。

「あ、待て!その亀投げるな!」

ピューんと飛んでいくゲーム内の亀は追跡型で確実に海都のカートにあたり脱線させる。

「レアはとっておくべしー!って言ってたよね?」

「だからってお前、ゴール前でずるい!」

お菓子を食べながら遊んでいたら、「海都、四月までの猶予だぞ?」と賢司が面白がって言ってくる。

「学校違っても教師だなんて。生活指導とかぜーーーーーったいにならないでよ?」

「ならないよ。新任だぞ?」

「うう……それでも自由がなくなっていく……」

「でも心強いでしょ?」

「それはまぁ……」

「受験勉強ももうしてるの?」

「俺の場合、毎回やばいからなぁ。バイトもしたいし。でも成績上がってきてるからやれるだけやって見るよ」

「うん」
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