下宿屋 東風荘 3

浅井 ことは

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次の日からは検査続きだったので、結果まで大丈夫だと言ってのんびりしようと思っていたが、那智がずっと見張っているかのようについてまわるので、おちおち本も読むことが出来ない。

「那智さん、僕大丈夫だよ?」

「わかってはいるんだがな……この届いた車椅子は前のを直してもらって、防水もかけておいてもらった。もう心配ないと思うが、気になることもあってな……」

「なに?」

「今はまだ二月に入る前だ。説明会と校舎案内、それと判決が終わってからどうするつもりだ?」

「え?三月からは暇だから勉強しようと思ってた。棟梁にも学校の話したら趣味で彫り物してればいいって言ってくれたし、のんびりしようかなぁなんて考えてたけど」

「俺の考えなんだが……」

「待って!いやーな予感しかしない……」

「嫌ではないと思うが、妖街にこないか?」

「お爺ちゃんの所?」

「いや、南の俺のところだ」

「行ってみたいけど聞かないと」

考えておいてくれと言われ、残りの検査を受けてから点滴の交換が終わったあとぐっすりと眠った。

起きた時は丁度夕飯が配られているところで、トイレを済ませてベッドに戻る。

「雪翔君、ご飯置いておくからね」

「ありがとうございます」

メニューは焼き魚と味噌汁に柔らかめのご飯と漬物に少しの煮物。

量が少ないので食べ切れるが、病院のご飯にはいつまで経ってもなれない。

「下宿のご飯が食べたいなー」

そう言いながらも全部食べてから車椅子に乗って返しに行き、テレビを見て時間を潰す。

全ての検査が終わって結果を聞くのに冬弥と栞と那智、それに秋彪と玲まで来た。

「えーと……多すぎ?」

「俺と兄貴は顔を見に来ただけだ。すぐ熱引いてよかったな」

「うん。先生も雨に濡れたからだろうって言ってたし」

「では、私達は聞きに行ってきますけど、雪翔は行かなくていいんですか?」

「行く!」

「じゃあ俺達は帰るけど、これ渡しておく。兄貴の札な」と小さな守袋を一つくれる。

「ありがとう」

「本来は、私の名前を呟いてくれるだけで聞こえるんですけどねぇ……」

「ねえ、翡翠たち元気?」

「元気も元気、うちの影が世話してますが、琥珀と漆にも平気で絡みに行ってます」

「怒ってない?」

「漆が泣くと怒るんですよ。そしたらピタリと泣きやみますねぇ」

「それ、怖がってるの間違いじゃない?」

「かもしれません」

早乙女さんと看護婦さんに呼ばれたので四人で診察室まで行く。

中に入ると何事だと言った顔の先生がひきつりながらも説明を始めてくれる。
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