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カラーエブリデイ その3

63色 パーティーの催し

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 パーティー会場に入場すると沢山の人達が中にいた。 その人の多さにわたしは呆気に取られてしまった。 その人達の身嗜みを確認すると、ここにいる人達は全員様々な会社の上層部の人達なのだろうと確信出来た。

「さすが、大企業のトップが集まる行事だな」

 マコトも少し驚いていたが冷静にいう。

「お前達の席はあそこだが、自由に食事や会話を楽しむといい」

 スズヒコは席に案内してくれた。 わたしたちは席に着くけど、スズヒコは席に着かなかった。

「では、ワタシはこの後、少しだけスピーチがあるもので失礼させてもらう」
「あ、そうなんだ」

 てっきりわたしに付きっ切りになるものだと思っていたわたしは少し驚いた。

「まあ、主催者なら当然じゃろうな」
「スズヒコ様! ワタシが護衛いたしますわ!」
「お前はここでじっとしてろ」

 スズヒコに着いて行こうとしたミルクをマコトが止める。

「よし、黒崎よくやった」

 そう一言いってスズヒコは急いで立ち去る。

「ちょっと、マコト! ワタシとスズヒコ様の恋路を邪魔する気!? はっ!? まさか、アナタもスズヒコ様を狙ってるのね!?」
「はあ!? ふざけるな!? なんで俺があのナルシスト男とそんなことにならんといかん!」
「まあ、そうなったら作品が変わってまうのう」

 そんな訳のわからない争いをしていると、スズヒコが舞台の上に立って、スピーチをはじめた。

「皆様、本日はお忙しい中お集まり頂き誠にありがとうございます」
「お、始まったようじゃのう」

 スズヒコのスピーチに会場の人達は耳を傾ける。

 そして、自分の会社の紹介やこれからの方針を一通り話すと話を締めくくる。

「今のワタクシの会社がやってこられているのは様々な人との関わりやワタシの大切な人への愛があってこそかもしれませんね」

 スズヒコの冗談に会場の人達はクスクスと笑うが、わたしは心当たりがありすぎて苦笑い。

「では、冗談はさておき長話はこれぐらいにして皆様是非とも楽しんで行って下さい」

 スズヒコのスピーチが終わり周りの人達は食事や会話をはじめた。

「アイツ……この場でもなにいってやがる」
「社長さんらしいでいいと思うがのう」

 呆れながらいうマコトにピンコは笑いながら返す。 そして、わたしは溜息を付く。

「……まったく……もう」

 いつもなら全然気にしないけど、沢山の人の前でそんなことにを言われ、わたしは恥ずかしくなる。

「あのすみません」
「えっ、はい」

 突然、話しかけられたわたしは驚きながらも声のした方を振り返ると、スーツ姿の男性が数名いた。

「もしかして、天海葵さんですか?」
「はい、そうです」

 わたしが返事をすると、後ろの男性たちが「おおっ!」と互いの顔をみながらざわつく。

「やはりそうでしたか、噂通りお美しい!」
「は、はあ……」

 とてつもなく鼻につくセリフをいわれ、わたしは苦笑いで返してしまう。

「なんだ? 貴族のナンパか?」

 それを見ていたマコトが前に立つ。

「いえ、違います! 勘違いなされたのなら申し訳ありません。 ワタクシこういうものでして」

 男性の一人が胸ポケットから名刺ケースを取り出し、そこから一枚の名刺をわたしに渡す。

「『魔導具販売企業代表取締役』って、かなりのお偉いさん!?」
「はい、ですが、そんなに固くならなくても大丈夫です。 ワタシ達は只、アナタと話がしたくて参りました」

 わたしと? なんて思いながらも、すぐに思い出した。

「あ、もしかして、スズヒコ……じゃなくて、オウマ社長が言っていたのは、アナタ達ですか?」

 わたしはスズヒコにいわれことを思い出しながらいう。

「はい、天海さんの技術はとても素晴らしいので、是非とも、天海さんのお話を聞きたくて」

 男性達はわたしにすごい期待の眼を向けてくるが、突然のことにわたしは「あはは……」と愛想笑いしかできなかった。

「残念だか、そいつに技術面や何故そんな物が造れるって聞いても無駄だぞ」
「え?」

 そんなわたしを知ってか知らずかマコトがいう。

「確かに、マコトさんのいう通りじゃのう」
「そうね」

 マコトの発言に二人も頷く。

「そもそもそいつは自分の凄さを分かってないし、今まで大ヒットした魔道具も弟と妹の為に造っただけで、それ意外、基本、何にも考えてないただのブラシスコン製造機だ」
「なんだよ! 人をバカみたいに言いやがって! ミズキとランを愛してるのはホントだけど!」

 マコトの発言にわたしはカチンときて言い返す。

 それをみていた男性達はポカンとしていた。

 まあ、こんな話を聞かされたら当然だよね。

「…………素晴らしい」
「え?」
「素晴らしいです!」

 しかし、何故か男性たちに尊敬の眼差しを向けられわたしは困惑する。

「やはり世界を変える天才というのは、当たり前のことを実現出来る人なんですね!」
「え、えっと?」
「確かに、誰しも大切な人を幸せにしたいという気持ちがあります。 ですが、それをなかなか実行出来る人はいません。 それに自分のことしか考えてない人もいくらでもいます。 それを大切な兄弟の為に実現出来るなんて! これが王真社長の仰っていた『愛があってこそ』という発言の真の意味なんですね!」

 男性達は口々に感嘆の声をあげる。

「これはまた、いい感じの解釈をしてくれたのう」
「……はは」

 あまりの持ち上げられ方にわたしは乾いた笑いを出す。

 その後、さんざん持ち上げられて男性達は他の社長の人達に挨拶があるとのことでわたしたちに一言挨拶をした後去って行った。

「……はあ……疲れた……」

 人に持ち上げられるのが、思ったより疲弊するものだと思いしらされたわたしは机に手をつく。

「嵐のようだったな、大丈夫か? これでも飲め」

 普段わたしを貶しまくっているマコトが珍しく心配をしてくれて水を渡してくれた。

「ああ、ありがとう」

 わたしは一言お礼をいって水を受け取る。

「マコトさんも普段からあのぐらいシーニさんを褒めたらどうじゃ?」
「それはそれで気持ち悪いからいいよ……」
「おい、まだなにも言ってないのに酷い言い方だな」

 渡された水を飲み一息つく。

「はは、水ってこんなにおいしかったんだね」
「結構来とるのう」

 遠い眼をしだしたわたしにピンコはツッコム。

「あのすみません」
「!?」

 またきた!? と内心身構えて振り返ると、わたしの予想とは違い、黄緑色ドレスに身を包んだ可愛らしい少女がいた。 そして、その隣にスーツというより執事姿のミズキたちと歳のあまり変わらなさそうな少年もいた。

「あれ? フウムちゃん!?」

 意外な人物だったので、わたしは驚く。 そこには綺麗なドレス姿のフウムちゃんがいたのだ。

「はい、ご無沙汰しておりますわ。 シーニさん」

 フウムちゃんはスカートの裾を少し上げて、ザ・お嬢様といった挨拶をする。

「シーニさん、随分とお疲れのようでしたが大丈夫ですか?」

 疲弊しているわたしをみて、心配そうに聞いてくるフウムちゃんに手をブンブンと振り返す。

「全然大丈夫だよ! あまり慣れてなくて少しびっくりしちゃっただけだからさ」
「なら、よかったですわ」

 わたしの返しにフウムちゃんは安堵の表情を浮かべる。

「そういえばフウムちゃんはなんでここにいるのかな?」

 わたしは素朴な疑問を聞いてみる。 いると分かってたらアカリたちも誘っていたのに。

「ワタクシは、お父様宛てに届いた招待状でご招待頂き参加させて頂いていますわ」

 なるほど、詳しくは知らないけど、確か、フウムちゃんはお嬢様だったよね?

「へぇーすごいね、わたしよりしっかりしてるね」
「いえ、そんなことありませんわ」
「そんな謙遜なさるな。 その歳でこんな大きなパーティーをこなせるとはすごいことじゃ」

 わたしとピンコの感嘆の言葉にフウムちゃんは謙遜して返す。

「ありがとうございます。 ですが、『魔力なし』のワタクシはこのような事でしか家族の助けが出来ませんので」
「は? なんでそこでそんな話が出る?」

 フウムちゃんの発言にマコトは聞き返す。

「お主、しらんのか? 貴族は魔力が高い人が産まれやすいんじゃ、それで『魔力なし』となったら、相当酷な目にあってしまったことは想像に難くないじゃろう」

 ピンコは眉を顰めながらマコトに説明する。

「すまんな、フウムさんこやつが失礼を」
「いえ、ワタクシが勝手に口走っただけなので、こちらこそ申し訳ありませんわ」

 謝罪するピンコにフウムちゃんは頭を下げて返す。

「そんなことで差別されるとは貴族ってのは古い考えのやつなんだな」
「こら! マコトさん、周りに聞かれたらどうするんじゃ!?」

 ピンコは慌ててマコトの発言を止める。

「そうね、魔力なんてあってもなくても変わらないわよ」

 今まで話を興味ないといわんばかりに食事を口にしていたミルクがいう。

「そういえば、お前も『ほぼ魔力なし』だったな」
「ほぼ?」

 マコトの発言にフウムちゃんは首を傾げながら返すと、ミルクは一度、フォークを机に置くと、口を開く。

「まあ、ワタシの場合は浮遊魔法や魔弾といった基本魔法がほぼほぼ使えないだけで『身体能力に全振り』してるだけね」
「え? そうなんですの?」
「こいつは脳筋だからな」

 マコトの発言にミルクは全く気にせずに続ける。

「アナタ、みる限り、相当カラダを鍛えてるわね」
「は、はい」

 ミルクはフウムちゃんを一瞬眺めるとすぐに口を開く。

「それだけ出来てるなら十分よ」
「え?」
「魔力なしだからといって何もかも諦めて生きるより、何かで補おうとするアナタの姿勢、とても素晴らしいと思うわ。 自信を持ちなさい。 それも一種の『才能』よ」
「…………」

 フウムちゃんは驚いた顔をしていたけど、すぐに笑顔になり口にする。

「ありがとうございます。 ワタクシのやってきたことが無駄じゃなかったって改めて思えましたわ」
「改めて?」
「はい、『彼』にも同じことをいわれて救われたことがあったので」

 彼? 誰のことだろう?

「お嬢様、そろそろお時間です」

 なんて考えてるとフウムちゃんの後ろにいた少年がフウムちゃんにいう。

「あら? もう時間ですの? ……シーニさん、そして、ご友人の皆様申し訳ありませんが、そろそろ失礼させて頂きますわ。 それと、ありがとうございました。 シーニさん、天海さん……いえ、水奇さんと緑風さんにも、よろしくとお伝えください」

 フウムちゃんはもう一度、ザ・お嬢様といった挨拶をすると優雅に去っていった。

「心配無用じゃったか」
「え?」

 去っていったフウムちゃんをみたピンコは笑いながらいう。

「彼女は強い子じゃ」
「お前がいうとBBA臭いな」
「そういうお主も彼女の為に言ったんじゃろう?」

 ピンコの質問にマコトは「ふん」と一言だけ返す。

「ミルクさんも良いこと言ったのう、もしかして、境遇が『似ていた』からかのう?」

 今度はミルクに聞くと、お皿のものを食べながら「まあ、そうね」と一言だけいう。

「あれ? そういえば、ミズキはともかくなぜクウタくんにもよろしくなのかな?」
「まあ、そういうことじゃろうな」
「え? どういうこと?」
「は? どういうことだ?」
「どういうことよ?」
「お主ら鈍すぎじゃろ……」

 三人首を傾げて返すわたしたちにピンコはため息をつく。

 おいしい食事を味わったり、また、いろんな人に持ち上げられたりしながらも、わたしはパーティーを楽しんだ。
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