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本のマモノ編
42色 黒いナニかの正体
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今日も快晴の空の下、わたしは家兼、研究室での仕事が一段落したので、紅茶を淹れて一服する。
「うーん、自分でいうのもなんだけどうまいねー」
なんて自画自賛していると。
「アオイいるか」
中性的な男性の声が背後から聞こえる。
「ねぇ、キミは一体いつになったら礼儀をわきまえてくれるのかな?」
わたしは笑顔で振り返るけど、額に青筋を立てながら、人の家兼、研究所にズケズケと入ってきた顔だけはいい男にいう。
「文句があるならまず戸閉まりをしっかりとするんだな」
文句をいうわたしにマコトはやれやれと云わんばかりに返す。 その態度に額の青筋がピキッと音を立て濃くなる。
「キミさ、顔はいいけどモテないでしょ?」
「は? なに意味の分からないことをいってるんだ?」
「なに? 逆にそれはあてつけ? 無自覚ならなおさら性格悪いね」
「俺はこんなくだらない会話をしにきたんじゃないぞ?」
わたしがなぜ怒っているのか、全く分かっていないマコトはやれやれとため息を吐く。 それをみて、ぶん殴りたくなったが、ここは大人なわたし、我慢して話を続ける。
「もしかして、アノ件?」
「分かってるなら早く話すぞ」
……よし、落ち着けわたし、持っているマグカップを降ろそうか。 投げたくなる気持ちはわかるぞ? だが、落ち着け。
「ホント無自覚ってイヤだよね……丁度紅茶を淹れたからとりあえず座っていいよ」
マコトの無自覚な煽りにイラッとしながらも席に着くようにいう。
「コーヒーにしてくれ」
席に座ったマコトはそう一言いう。
「…………ホント、キミって奴は」
さらに額の青筋を増やしながらも、コーヒーを淹れてやる。
「はい」
「ああ」
マコトはそう一言いうと、コーヒーの入ったマグカップを受け取る。 下剤でも入れてやろうと思ったけど、さすがにそこまで大人げないことをしたくなかったので、ギリギリで思い止まった。
「ついでにこれもね」
ついでに彼の目的でもあったあるものを渡す。 マコトはそれを受け取り、確認すると眉を顰める。
「やはりそうか」
冷静にそういうと、コーヒーを一口啜り一度それを机におく。
「わたしもびっくりしたよ。 それを間近で確認した時もナゾの魔力《チカラ》を感じたけど、レンズを通したら禍々しいモノがみえたからね」
わたしがマコトにみせたのは一枚の写真だ。 ただの写真ではなく、魔力を可視化出来る様にするカメラで撮ったモノだ。
「回収は出来なかったのか?」
マコトが険しい顔で聞いてくる。 数週間、あの時はクーのことで話が持ち切りだったけど、クウタくんの口にした言葉がどうも気になって、同じく気にしていたマコトと相談したのち、その本について独自で調べていたんだ。
「わたしもキケンかもしれないから預かるって言ったんだけど、彼が大丈夫って言ったから無理に取り上げることができなくってね」
机に置かれた写真を手に取り確認すると、言葉を付け足す。
「それに、この本というか魔力っていうのかな?『生きてる』感じがしたんだよね」
「ぶぼぉ!なに!?」
マコトはコーヒーを吹き出しながら目を見開く。
「うわあああ!?なにやってるんだよ!きたないなぁ!」
突然、マコトの口からまき散らされた、黒い液体に反射的に絶叫する。
「げほっげほ……わるかった……それよりそれは本当か!?」
マコトは咽ながらもいう。
「うん、あくまでわたしの感じた感想だけどね」
返事を返しながら、研究室の洗い場のタオルを取りに行く。
「マジか……それなら思っていたよりも厄介だな……直ぐに上に報告するか? いや、ことを大きくするとさらに面倒になる……」
マコトは右手を口にあてながらブツブツと考え出し、その間にわたしはマコトのこぼしたコーヒーを拭き取っていく。
「とりあえず、お前がモノに宿っている魔力を読み間違えると思えないのは分かっているが、俺が動きにくくなるから、このことは落ち着くまで上には報告しない」
「そう、そうしてくれるとありがたいよ」
わたしは布巾を洗いながら返す。 そして、もう一杯コーヒーをいれてやるとマコトはそれを「すまん」と一言いい受け取る。
「わたしも考えなしで回収しなかった訳じゃないからね」
手を洗い終え、席に戻る。
「ああ、分かっている」
言葉を返しながら、マコトはもう一度写真に目を通す。
「彼の話によると、その本をかなり昔から所持してるみたいだったから、彼にあずけておく方が安全かなと思ってね」
「お前がそのくらい考えていることは分かっている。 だから今は様子見ってところだな」
「おーけー、キミってムカツクけど、そうゆうことはたよりになるからね」
わたしの言葉にマコトは「ふん」と返すとコーヒーを口にする。
「それを踏まえて、聞いてほしいんだけど、キミも気がついてると思うけど、多分『マモノ』が宿ってるよね」
マコトはコーヒーを飲みながら、眉を顰め答える。
「だろうな、それを上に報告したら問答無用で『祓う』だろうから、確信が持てない今は見守ることしかできない」
『マモノ』っていうのは魔力に命が宿ったモノのことで、いわゆる『つくもがみ』みたいなものだ。 一種の呪いとして世間では知れ渡っているけど、『マモノ』といってすべてが悪とは限らない。 確かに、おおくは人間に対する恨みで生まれてしまうものもあるけどそうとも限らないのだ。
「お前のその甘さが仇とならないといいがな」
「それに付き合ってくれるキミもなんだかんだ甘いんじゃないかな?」
「…………」
マコトはなにもいわずコーヒーを飲む。
「うーん、自分でいうのもなんだけどうまいねー」
なんて自画自賛していると。
「アオイいるか」
中性的な男性の声が背後から聞こえる。
「ねぇ、キミは一体いつになったら礼儀をわきまえてくれるのかな?」
わたしは笑顔で振り返るけど、額に青筋を立てながら、人の家兼、研究所にズケズケと入ってきた顔だけはいい男にいう。
「文句があるならまず戸閉まりをしっかりとするんだな」
文句をいうわたしにマコトはやれやれと云わんばかりに返す。 その態度に額の青筋がピキッと音を立て濃くなる。
「キミさ、顔はいいけどモテないでしょ?」
「は? なに意味の分からないことをいってるんだ?」
「なに? 逆にそれはあてつけ? 無自覚ならなおさら性格悪いね」
「俺はこんなくだらない会話をしにきたんじゃないぞ?」
わたしがなぜ怒っているのか、全く分かっていないマコトはやれやれとため息を吐く。 それをみて、ぶん殴りたくなったが、ここは大人なわたし、我慢して話を続ける。
「もしかして、アノ件?」
「分かってるなら早く話すぞ」
……よし、落ち着けわたし、持っているマグカップを降ろそうか。 投げたくなる気持ちはわかるぞ? だが、落ち着け。
「ホント無自覚ってイヤだよね……丁度紅茶を淹れたからとりあえず座っていいよ」
マコトの無自覚な煽りにイラッとしながらも席に着くようにいう。
「コーヒーにしてくれ」
席に座ったマコトはそう一言いう。
「…………ホント、キミって奴は」
さらに額の青筋を増やしながらも、コーヒーを淹れてやる。
「はい」
「ああ」
マコトはそう一言いうと、コーヒーの入ったマグカップを受け取る。 下剤でも入れてやろうと思ったけど、さすがにそこまで大人げないことをしたくなかったので、ギリギリで思い止まった。
「ついでにこれもね」
ついでに彼の目的でもあったあるものを渡す。 マコトはそれを受け取り、確認すると眉を顰める。
「やはりそうか」
冷静にそういうと、コーヒーを一口啜り一度それを机におく。
「わたしもびっくりしたよ。 それを間近で確認した時もナゾの魔力《チカラ》を感じたけど、レンズを通したら禍々しいモノがみえたからね」
わたしがマコトにみせたのは一枚の写真だ。 ただの写真ではなく、魔力を可視化出来る様にするカメラで撮ったモノだ。
「回収は出来なかったのか?」
マコトが険しい顔で聞いてくる。 数週間、あの時はクーのことで話が持ち切りだったけど、クウタくんの口にした言葉がどうも気になって、同じく気にしていたマコトと相談したのち、その本について独自で調べていたんだ。
「わたしもキケンかもしれないから預かるって言ったんだけど、彼が大丈夫って言ったから無理に取り上げることができなくってね」
机に置かれた写真を手に取り確認すると、言葉を付け足す。
「それに、この本というか魔力っていうのかな?『生きてる』感じがしたんだよね」
「ぶぼぉ!なに!?」
マコトはコーヒーを吹き出しながら目を見開く。
「うわあああ!?なにやってるんだよ!きたないなぁ!」
突然、マコトの口からまき散らされた、黒い液体に反射的に絶叫する。
「げほっげほ……わるかった……それよりそれは本当か!?」
マコトは咽ながらもいう。
「うん、あくまでわたしの感じた感想だけどね」
返事を返しながら、研究室の洗い場のタオルを取りに行く。
「マジか……それなら思っていたよりも厄介だな……直ぐに上に報告するか? いや、ことを大きくするとさらに面倒になる……」
マコトは右手を口にあてながらブツブツと考え出し、その間にわたしはマコトのこぼしたコーヒーを拭き取っていく。
「とりあえず、お前がモノに宿っている魔力を読み間違えると思えないのは分かっているが、俺が動きにくくなるから、このことは落ち着くまで上には報告しない」
「そう、そうしてくれるとありがたいよ」
わたしは布巾を洗いながら返す。 そして、もう一杯コーヒーをいれてやるとマコトはそれを「すまん」と一言いい受け取る。
「わたしも考えなしで回収しなかった訳じゃないからね」
手を洗い終え、席に戻る。
「ああ、分かっている」
言葉を返しながら、マコトはもう一度写真に目を通す。
「彼の話によると、その本をかなり昔から所持してるみたいだったから、彼にあずけておく方が安全かなと思ってね」
「お前がそのくらい考えていることは分かっている。 だから今は様子見ってところだな」
「おーけー、キミってムカツクけど、そうゆうことはたよりになるからね」
わたしの言葉にマコトは「ふん」と返すとコーヒーを口にする。
「それを踏まえて、聞いてほしいんだけど、キミも気がついてると思うけど、多分『マモノ』が宿ってるよね」
マコトはコーヒーを飲みながら、眉を顰め答える。
「だろうな、それを上に報告したら問答無用で『祓う』だろうから、確信が持てない今は見守ることしかできない」
『マモノ』っていうのは魔力に命が宿ったモノのことで、いわゆる『つくもがみ』みたいなものだ。 一種の呪いとして世間では知れ渡っているけど、『マモノ』といってすべてが悪とは限らない。 確かに、おおくは人間に対する恨みで生まれてしまうものもあるけどそうとも限らないのだ。
「お前のその甘さが仇とならないといいがな」
「それに付き合ってくれるキミもなんだかんだ甘いんじゃないかな?」
「…………」
マコトはなにもいわずコーヒーを飲む。
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