29 / 124
アカリとフシギなタマゴ編
29色 アカリの試練4
しおりを挟む
「ねえ、クロロン。 クロロンとシアンって幼馴染なんだよね」
「あれ? デジャブかな?」
屋上にむかいながら、わたしはクロロンにもう一度聞いてみる。
「シアンってむかしからあんなにボーとしてたの?」
「うーん、そうだね。 むかしから基本あんな感じだけど、しっかりと自分の《いし》はちゃんと持っていたよ」
「自分のいし?」
「《いし》っていっても、色んな意味があると思うけど、相手を思う《意思》、目標をしっかりと持っている《意志》とか、お医者さんの《医師》とかね」
たぶん最後のはなにか違う気がするけど、気のせいかな?
「みっくんはいつもボーっとしているけど、ちゃんと周りもしっかりとみれているんだ」
「シアンのこと信頼してるんだね」
「そうだね。 ちょっと言い方は気持ち悪いかもしれないけど、お互いのことを知っているからこその信頼かな」
「全然気持ち悪くないよ! むしろすごいうらやましいよ! 裏山に住む浦山さんなみにうらやましいよ!」
「うらやまさんってどなたかな?」
「とにかく、二人が固い友情で結ばれているってことだよね!」
「そういってもらえると少し照れくさいけどうれしいな」
そうこう話している内に屋上のドアの前に着いた。
「ここだね」
「そうだね」
「さて、シアンはいるかな?」
わたしはウキウキしながらドアを開けた。
すると、そこにはシアンはいなかった。
「あれ? いない?」
屋上を見回すけどシアンはどこにもいなかった。
「もしかして間違えちゃった!?」
「……ここ」
「え?」
声のした方に振りかえると、シアンが屋上のドアの屋根のところに座っていた。
「シアン! そんなところにいたんだね」
「まあ」
「みっくん空の眺めはどうかな?」
クロロンがシアンにそう尋ねると、シアンは屋根から降りてきた。
「やっぱり《本物の空》がみたい」
「そういうと思ったよ」
「え? 《本物の空》?」
わたしはすごく驚きながら聞く。
「ぼくたちと同じ様にこの場所というより空間も造られたモノなんだ」
「え!? そうだったの!?」
二人の言葉にに驚きながら空をみるけど、どう見ても、キレイな青空だった。
「アカリ、これ」
「え?」
空から顔を戻すと、シアンはわたしにカケラを手渡した。
「ええ!? もらっていいの!? 試練は?」
「終わった」
「ええ!?」
さっきからわたし『え!?』ばっかりいってる気がするけど、気のせいじゃないよね。
「どういうこと?シアン」
「《探す》それだけ」
頭にハテナをつけながら首をかしげる。
「えーっと、みっくんの言いたいことをまとめると、いろのさんがみっくんを『みつける』のが、みっくんからの試練だったみたいだね」
クロロンが補足してくれる。
「それとめんどくさかったから」
「正直だね」
軽くツッコムクロロンだったけど、シアンが「……でも」と続ける。
「……アカリなら、すぐみつけてくれると思ったから……それだけ」
どういうことだろう?
「やっぱりみっくんもいろのさんを信頼しているんだね」
「……」
シアンはなにも答えなかったが、クロロンはシアンの考えていることを理解している感じだった。
「じゃあ、行く」
「え? もう行っちゃうの?」
「終わったから」
「そうだけど、もうすこしお話したいな」
わたしはシアンを呼びとめる。
「また、今度」
そう一言だけシアンは無表情ながらもすこし嬉しそうに微笑んでいる気がした。
そして、その場から姿を消した。
「行っちゃったね」
わたしはシアンのマイペースさに呆気にとられていた。
「口数は少ないけど、ああみえてみっくんいつもいろのさんと話していて楽しそうにしてるんだよ」
「そうなの?」
「うん、だから帰ったらみっくんといっぱいお話してあげてほしいな」
クロロンがシアンの行動を丁寧に説明してくれた。
「わかった! 帰ったらみんなといっぱいお話しよう! もちろんクロロンともだよ」
「! ……あ、ありがとう」
わたしの言葉になぜかクロロンは驚いた顔をした。
「じゃあ、全員分カケラを集め終わったし神獣さんを探しに行こうか」
「あれ? まだ全員分集まってないよ?」
「え?」
「後はクロロンだけだね」
「え!? なんでわかったの!?」
クロロンはさらに驚いた顔をする。
「なんでって、今までわたしの大切なトモダチからだったから、クロロンももっているかなと思って」
逆になんで驚いているのかわからなかったから、わたしは首を傾げる。
「ぼくはただの案内役ってことは考えなかったのかな?」
クロロンはフシギそうに質問してくる。
「あ、そういえばそうだったね。 でも、それでも関係なかったかな」
わたしは「だって」と言葉を続ける。
「この試練は《人と人とのかかわり》をみているんだよね? だったら、クロロンが関係ないなんて思わなかったな」
クロロンはすこし顔をさげて考えごとをしている感じだったけど、すぐに顔をあげた。
「さすがいろのさんだね……ちょっとだけ、歩きながら話さないかな?」
「うん、いいよ」
わたしたちは屋上を後にした。
「あれ? デジャブかな?」
屋上にむかいながら、わたしはクロロンにもう一度聞いてみる。
「シアンってむかしからあんなにボーとしてたの?」
「うーん、そうだね。 むかしから基本あんな感じだけど、しっかりと自分の《いし》はちゃんと持っていたよ」
「自分のいし?」
「《いし》っていっても、色んな意味があると思うけど、相手を思う《意思》、目標をしっかりと持っている《意志》とか、お医者さんの《医師》とかね」
たぶん最後のはなにか違う気がするけど、気のせいかな?
「みっくんはいつもボーっとしているけど、ちゃんと周りもしっかりとみれているんだ」
「シアンのこと信頼してるんだね」
「そうだね。 ちょっと言い方は気持ち悪いかもしれないけど、お互いのことを知っているからこその信頼かな」
「全然気持ち悪くないよ! むしろすごいうらやましいよ! 裏山に住む浦山さんなみにうらやましいよ!」
「うらやまさんってどなたかな?」
「とにかく、二人が固い友情で結ばれているってことだよね!」
「そういってもらえると少し照れくさいけどうれしいな」
そうこう話している内に屋上のドアの前に着いた。
「ここだね」
「そうだね」
「さて、シアンはいるかな?」
わたしはウキウキしながらドアを開けた。
すると、そこにはシアンはいなかった。
「あれ? いない?」
屋上を見回すけどシアンはどこにもいなかった。
「もしかして間違えちゃった!?」
「……ここ」
「え?」
声のした方に振りかえると、シアンが屋上のドアの屋根のところに座っていた。
「シアン! そんなところにいたんだね」
「まあ」
「みっくん空の眺めはどうかな?」
クロロンがシアンにそう尋ねると、シアンは屋根から降りてきた。
「やっぱり《本物の空》がみたい」
「そういうと思ったよ」
「え? 《本物の空》?」
わたしはすごく驚きながら聞く。
「ぼくたちと同じ様にこの場所というより空間も造られたモノなんだ」
「え!? そうだったの!?」
二人の言葉にに驚きながら空をみるけど、どう見ても、キレイな青空だった。
「アカリ、これ」
「え?」
空から顔を戻すと、シアンはわたしにカケラを手渡した。
「ええ!? もらっていいの!? 試練は?」
「終わった」
「ええ!?」
さっきからわたし『え!?』ばっかりいってる気がするけど、気のせいじゃないよね。
「どういうこと?シアン」
「《探す》それだけ」
頭にハテナをつけながら首をかしげる。
「えーっと、みっくんの言いたいことをまとめると、いろのさんがみっくんを『みつける』のが、みっくんからの試練だったみたいだね」
クロロンが補足してくれる。
「それとめんどくさかったから」
「正直だね」
軽くツッコムクロロンだったけど、シアンが「……でも」と続ける。
「……アカリなら、すぐみつけてくれると思ったから……それだけ」
どういうことだろう?
「やっぱりみっくんもいろのさんを信頼しているんだね」
「……」
シアンはなにも答えなかったが、クロロンはシアンの考えていることを理解している感じだった。
「じゃあ、行く」
「え? もう行っちゃうの?」
「終わったから」
「そうだけど、もうすこしお話したいな」
わたしはシアンを呼びとめる。
「また、今度」
そう一言だけシアンは無表情ながらもすこし嬉しそうに微笑んでいる気がした。
そして、その場から姿を消した。
「行っちゃったね」
わたしはシアンのマイペースさに呆気にとられていた。
「口数は少ないけど、ああみえてみっくんいつもいろのさんと話していて楽しそうにしてるんだよ」
「そうなの?」
「うん、だから帰ったらみっくんといっぱいお話してあげてほしいな」
クロロンがシアンの行動を丁寧に説明してくれた。
「わかった! 帰ったらみんなといっぱいお話しよう! もちろんクロロンともだよ」
「! ……あ、ありがとう」
わたしの言葉になぜかクロロンは驚いた顔をした。
「じゃあ、全員分カケラを集め終わったし神獣さんを探しに行こうか」
「あれ? まだ全員分集まってないよ?」
「え?」
「後はクロロンだけだね」
「え!? なんでわかったの!?」
クロロンはさらに驚いた顔をする。
「なんでって、今までわたしの大切なトモダチからだったから、クロロンももっているかなと思って」
逆になんで驚いているのかわからなかったから、わたしは首を傾げる。
「ぼくはただの案内役ってことは考えなかったのかな?」
クロロンはフシギそうに質問してくる。
「あ、そういえばそうだったね。 でも、それでも関係なかったかな」
わたしは「だって」と言葉を続ける。
「この試練は《人と人とのかかわり》をみているんだよね? だったら、クロロンが関係ないなんて思わなかったな」
クロロンはすこし顔をさげて考えごとをしている感じだったけど、すぐに顔をあげた。
「さすがいろのさんだね……ちょっとだけ、歩きながら話さないかな?」
「うん、いいよ」
わたしたちは屋上を後にした。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~
Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
他作品の詳細はこちら:
『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】
『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】
『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』
【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった
お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。
全力でお母さんと幸せを手に入れます
ーーー
カムイイムカです
今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします
少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^
最後まで行かないシリーズですのでご了承ください
23話でおしまいになります
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた
杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。
なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。
婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。
勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。
「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」
その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺!
◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。
婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。
◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。
◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。
◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます!
10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる