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アカリとフシギなタマゴ編

14色 トレーニングもいいけど、女子会でもしようか

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「おじゃましまーす」
「ピュルーン♪」
「お、きたね、まってたよ」

 今日、わたしたちはシーニの研究所にきていた。

「お邪魔致しますわ」
「お邪魔します」

 もちろんフラウムとレータたちもね!

「よくきたね! ミズキとクウタくんはもう先にきてるよ」

 何日か同じことをしたり、タコの高さをかえたりしてクーの特訓を続けていたわたしたちだけど、クーが急に大きくなりはじめた理由はレータが果物のおにいさんから聞いた話だと、タコに流している魔力をクーが吸っているのが、原因かもしれないらしくて、そのせいか今はクーの大きさは高さが30センチぐらいにまで成長したんだ。 それで、これ以上外の特訓はかなり人目を集めちゃうかもしれないからってことでシーニが特訓の場所を『造ってくれた』らしくてそれで今日はここにきたんだ!

「ひさしぶりじゃのうアカリさん」
「あ、魔女のおねえさん!」

 研究所の中にある机の前のイスに座っているおねえさんが手をふっている。

「どうしておねえさんがここにいるの?」

 わたしが魔女のおねえさんに駆け寄って聞くと、おねえさんはクスリとやさしく笑い答えてくれる。

「シーニさんの紅茶を飲みにきたのじゃよ、シーニさんの淹れた紅茶は実に美味じゃからのう」
「ほめてくれるのはうれしいけど、ここは喫茶店じゃないよ」

 シーニは苦笑いする。

「すみません、失礼を承知でいいますが、ワタクシもその美味しい紅茶を頂いても宜しいでしょうか?」

 紅茶という言葉に反応したフラウムが遠慮しがちにいうけど、期待の眼を向ける。

「え? いいけどそんなたいしたものじゃないよ? それにお茶っ葉だって市販のものだし」
「大丈夫ですわ、ワタクシ紅茶には目がなくて」
「わたしもシーニの紅茶のみたい!」

 わたしも飲みたいと手をあげてアピールする。

 魔女のおねえさんのいう通りシーニの淹れた紅茶はすごく美味しいのだ。

「そう、ならちょっとまっててね」
「あの、僕は先に彼らの所に行ってもいいですか?」

 レータがすこし遠慮しがちにいう。

「ごめん、そうだったね。 レータくんだよね? 先にキミとクーを案内するよ」

 そういうと、シーニはレータとクーをとあるドアの前に案内した。

「これは?」

 そう聞くレータにシーニは「入ればわかるよ」と笑顔で返し、中にはいるようにうながした。

「はあ……」

 すこし疑問げにレータはいいながら、そのドアの中にはいって行った。 すると、レータの姿が消えた。

「メガネが消えましたわ!」
「なかなかのパワーワードじゃのう」
「レータとメガネがきえたよ!」
「彼とメガネは別々の扱いなのかのう?」
「大丈夫だよ、ミズキとクウタくんもこの中にいるから」

 驚くわたしとフラウムにシーニは説明してくれる。

「このドアはね、わたしが発明した『魔空間ルーム』っていうもので、空気中の魔力と魔法卵の魔力を使ってこのドアの先に仮想空間を造りだして、そこにわたしたちの体を転送しているんだ」
「なるほど、そんな高度な技術を実現出来るなんてやはり貴方は噂以上の天才ですわね」
「そりゃそうじゃ、シーニさん以上の天才をわたしゃは生まれてこの方みたことないからのう」
「へ~そうなんだ」
「あら? 珍しくアカリさんが理解出来てますのね?」
「うん! つまりどういうこと!」

 わたしがゲンキよく返事をすると3人ともずっこけてしまった。

「少しでもアカリさんに関心したワタクシがバカでしたわ」

 フラウムはおでこに片手をおく。

「まあ、仕方ないじゃろう、実際かなり難しいことを云っておるからのう」

 おねえさんも「ははは」と笑いながら体勢を直す。

「えーと、そうだね、わかりやすく説明するにはそうだな~」 

 シーニは「う~ん」と唸り考える。

「そうじゃのう、解りやすく云うとこれじゃな」

 魔女のおねえさんは空間に魔法陣をだすとそこから一冊の本を取り出した。

「こうやってこの魔法収納を使ったりはせんかのう?」

 出した本をわたしに見せる。

「シーニがよく使ってるやつだね」

 わたしはシーニがいつもやっていることを思い出す。

「そうじゃ、原理はそれとほぼ同じで、これを沢山の魔力を使って先程シーニさんが説明した魔空間ルームを造りだしておるんじゃ」
「そうなんだ! すごいねシーニ!」

 わたしはやっと少し理解出来た気がした。 気がした!

 その後、シーニが紅茶を淹れてくれた。

「これは……市販のものとは思えないほど香りもよくとても美味しいお味ですわ」
「じゃろじゃろ」

 フラウムは紅茶の味に目を見開いて驚き、魔女のおねえさんはそれを自分のことかのように喜ぶ。

「やっぱりシーニの紅茶はおいしいね!」
「『シーニの淹れた紅茶』と商品に出来るレベルじゃろ?」
「うん、『シーニ茶』絶対売れるよ!」
「スポンサーは我が黄瀬財閥が持ちましてよ」
「こらこら勝手に話を進めないで」

 わたしたちは女子会で盛り上がっていた。

「すみません、シーニさん」
「ん? なに?」

 ふと、なにかを思い出したのかフラウムはシーニに話かけた。

「実は、今日ここのお伺いしたのはクーさんのこととは違う理由がありまして……」
「?」

 フラウムはすこしいいづらそうだけど意を決して口を開いた。

「ワタクシに魔法が使える様になるアイテムを造っていただけませんか?」
「いいよ、ていうかそういうアイテム確かもう造ってた気がするよ」
「ええ!?」 

 平然というシーニにフラウムは驚く。

「ちょっとまっててね」

 研究所においてあった大きな箱の前に行くと、それを開けてシーニはなにかを探しはじめた。

「あ、あったあった」

 シーニはなにかを箱から取り出すとそれをフラウムに渡した。

「これは……ポーチですわね」

 フラウムとわたしはポーチをフシギそうにのぞき込む。

「そう、それはねポーチの中に魔力を少し溜めてほんの少しなら魔法が使えるんだ」
「一体どのような?」

 フラウムは期待の眼を向ける。

「大きな魔法は使えないけど、お湯を沸かすだったり扇風機ほどの風をおこすだったりかな」
「もはや便利家電じゃのう」

 おねえさんはツッコミをいれる。

「でも、本来は身体能力強化アイテムだけどね」
「身体能力強化?」
「うん、本来の使い方はそのポーチに溜めた魔力をカラダに纏って身体能力を底上げするアイテムなんだけど、カラダへの負担が大きいから没にしたものなんだよね」
「どれほどの代償が?」

 今度はゴクリとつばを飲む。

「筋肉痛がすごいんだよね」
「それは地味に嫌じゃのう」

 またも、おねえさんはツッコム。

「まあ、でもキミなら大丈夫だと思うけどね」
「?」
「お主、今まで体力面を沢山努力して鍛えておったのじゃろう?」
「! どうしてそれを!?」

 おねえさんの言葉にフラウムは目を見開きながら驚くとおねえさんはやさしい笑顔をむけながらいう。

「視れば判るのじゃ、お主は残念ながら魔力は一切感じられぬが、その努力したカラダが語っておる」

 おねえさんの言葉にフラウムは頬を赤くしてとても嬉しそうな笑顔になる。

「よかったねフラウム」

 わたしはなんだか嬉しくなってきた。

「ええ、あの、代金のほうはお幾ら」
「ぜんぜんいいよ! どっちかというと試作品みたいなものだし、逆になにかあったら改良するから教えて欲しいな」
「ありがとうございます。 大事に使わせて頂きますわ」 

 フラウムは深く頭をさげた。

「ねえ、シーニ、その箱のなかみてもいいかな?」
「いいよ、でもそんなたいしたものははいってないよ」

 わたしはシーニの発明が気になって箱のなかをいろいろと探してみた。

 すると、あるものが目にはいってそれを手に取った。

「ん? これって? ねえ、これみてー」

 机にいる三人の前にそれをおいた。

「こ、これは……」

 それをフラウムが覗き込んですこし固まった。

「これは、写真じゃのう」
「ずいぶんなつかしいのがでてきたね」

 そう、わたしが取り出したのは写真立てにはいっている1枚の写真だった。

 そこには、二人の小さな男の子と一人の小さな女の子が並んで写ってた。 女の子のほうはだれだかわからなかったけど、二人の男の子は一目でわかった。

「もしかして、これって小さい時のシアンとクロロン? キャーカワイー!」
「可愛いですわね」
「でしょでしょ! うちのミズキとクウタくんは昔からかわいかったんだから、こんなところにあったんだね」
「無くしておったのか……」
「たぶん、発明品とかと適当にしまっちゃってたみたいだね」
「ズボラじゃのう」

 シーニは頭をかきながら笑ってそれをおねえさんが呆れたようにみる。

「クロロンの顔ってむかしっからあんまりかわってないんだね」
「今日はワタクシにとってある意味収穫日ですわ」

 フラウムはなぜか小さくガッツポーズをする。

「ところで、この緑風さんの隣にいる女性はどなたですの?」
「あ、そうそうわたしも気になってた」

 このクロロンの隣にいる女の子がだれなのかシーニに聞いてみる。

「それはね、はーちゃんだよ」
「はーちゃん?」

 聞き覚えのない名前にわたしとフラウムは首を傾げる。

「うん、ハヅキちゃんっていうミズキとクウタくんの幼馴染なんだ」
「緑風さんに天海さん以外の幼馴染がいたとは……」
「今は遠くに引っ越しちゃって確か10年ぐらいかな、会ってないけど3人すごく仲がよかったんだよ」

 シーニは懐かしそうに話す。

「しかも、ハヅキちゃんはクウタくんのことが大好きでね、いつもクウタくんにくっついてたんだ」
「キャー! それってそれってクロロンからしても初恋かもしれないってことだねー! キャー!」
「! 初恋」

 フラウムがカラダをピクリと反応させる。

「ま、まあ、まだ子供の時ですから初恋だと感じてないと思いますわよ」
「青いのう」

 これはもしかしてもしかして甘酸っぱいコイバナの予感!? なんてわたしがコーフンしているとドアの開く音がしてわたしたちはそっちをみるとドアからシアンたちがでてきた。

「二人ともまだ飲んでたのかい?」 

 レータがすこしイヤミっぽくいってくる。

「あ、いろのさんときのせさんこんにちは」

 その後ろからのほほーんとした雰囲気で頭にクーを乗せたクロロンがいう。

「……ん」

 シアンは相変わらず眠たそうにしている。

「クウタさんそれ重くないのかのう?」

 魔女のおねえさんがクーを頭に乗せたクロロンに聞く。

「ちょっと重いですけど、クーくんが喜んでくれるので平気です」

 クロロンは曇りひとつない笑顔で返す。

「あ、そうだ! シアン、クロロンこれみてよ!」

 わたしはさっきみていた写真を二人にみせた。

「ねえねえ、この女の子おぼえてる?」
「……うん」
「?」

 シアンは首を縦にふったけどクロロンは首を傾げた。

「クウタ覚えてないのか?」
「え? ……うん、みっくんはこの女の子しってるの?」

 クロロンはフシギそうに聞く。

「クウタくん、ハヅキちゃんだよ覚えてない?」
「いつも、クウタにくっついてた」

 クロロンの反応が意外だったのか、シーニがすこし驚きながら聞きシアンもそれに続く。

「う……ん? ごめん、なぜか思い出せないな……なんでだろう……」

 クロロン本人が一番困惑しているみたい。

「もしかしたら、10年も前で御二人が小さかったから記憶の差があるんじゃなくて?」
「まあ、有り得なくはないね」

 困っているクロロンにフラウムがフォローをいれ、そこにレータも言葉を足した。

「そうなの……かな?」

 クロロンは腕を組みながらいい「だけど……」と言葉を続ける。

「うまくいえないけど、なんというか、えーっと……記憶にはまったくないけど、でも、なつかしいような? ……なんかスッポリと抜け落ちてる? ……ような?」
「?」

 わたしたちがクロロンの言葉に首かしげていると魔女のおねえさんが「……ほう」と小さく呟いたような気がした。

「まあ、無理に思い出さんくっても良いじゃろう。 それに、そんなに頭を悩ませては体に悪いからのう」
「そうだね、まあ、昔の事だから覚えてなくても不思議じゃないしね」

 シーニはなにかを察したのか「問い詰めるみたいになってごめんね」とクロロンに謝り、クロロンも「こちらこそすいません」と頭を下げた。

「おっと、そうじゃ、丁度全員集まっとるならチョイと面白いものを見せようかのう」
「おもしろいもの?」

 魔女のおねえさんがふと思い出したのかいう。

「この前、わたしゃがクーさんを調べるために数本ハネをもらったじゃろ? それで、おばあちゃんと一緒に調べておったら面白いことが分かったんじゃよ……」

 ピンポーン♪

 おねえさんの話しの途中でシーニの研究室のインターホンがなった。

「おや? 誰か観えたみたいじゃのう」
「お、来たみたいだね」
「タイミング悪いな……」

 話の腰を折られたというレータに「ある意味ナイスタイミングかもね」とシーニはいい、「話を続けてていいよ」と玄関にむかった。

「よし、気を取り直して話を続けるかのう」

 咳ばらいをして話はじめ、ふところから一本のキレイなハネを取り出した。

「ここに前、貰ったハネがあるじゃろう? これに魔力を流すと不思議なことが起こるんじゃ、見とるんじゃぞ」

 そういうと、おねえさんがハネに魔力を流すとハネがピンク色に輝きだした。

「わあ、キレイだね」

 わたしたちはその輝きに感動する。

「面白いのはここからじゃ、アカリさんやお主も一度試してみるのじゃ」
「え? うん」

 おねえさんにもう一つのハネを渡され、わたしもすこし魔力を流してみた。

 すると、さっきと違って赤色に輝きだした。

「あれ!? さっきと色がちがうよ!?」
「そう、それが面白いことじゃ」
「なるほど、人によって魔力の色が違う様にハネの色も人によって変わるということですか。 かなり良いタイミングで来れたみたいですね」
「!?」

 後ろか声が聞こえ、振り返るとシーニの隣に赤髪の女の子がいた。
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