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目の前にアパートが見えてきた。元は綺麗なイエローだっただろう壁は、今では薄汚れて黄みがかった灰色にしか見えない。
ジェフは足を速めた。

後ろから馬鹿でかい排気音が聞こえてきた。
煩いなと思った途端、急ブレーキと共に目の前にシルバーセダンが止まった。

「このっ……危な!」
「はい、ジェフ、探してたのよ。」

ジェフが抗議の声を上げる前に運転席側のパワーウィンドウが下げられ、中から金髪にサングラスをかけた女性が顔を出した。

「シルビア?なんで?」
「仕事の依頼。まずは乗ってよ。」

彼女の慌ただしい様子についつられて助手席に乗り込むジェフ。
車はそのまま勢いよく発進した。


「一体……」
「難しい仕事じゃないわ。今夜パーティーがあってね。私のパートナーを務めて欲しいの。」
「パーティー?なんの?」
「まあ、地元の名士たちの集い?パートナー必須のパーティーなの。頼めるわよね。」

シルビアは前方を見つめたままジェフを振り返りもせず話を続けた。

「服はある?ないなら今から店に行くけど。」

既にアパートからはかなり離れている。車はまっすぐマイアミビーチに向かっていた。

「支払い任せてもいいのかな?俺ニセントしか持ち合わせ無いんだ。」
「いいわよ。それと昼食代も引き受けるわ。パーティー終了まで付き合って貰って三百ドルで如何?」

ー服で八百以上はいくだろうから、まあ引き受けても損はないだろう

「かなり叩かれた気がするけど。ま、いいよ、他ならぬシルビアのためならば。
だけど珍しいね、君ってそんなにパーティー好きじゃなかったよね。」

ジェフの知るシルビアはどちらかというと仕事大好き人間だ。パーティーに出ている時間に電話が何本掛けられる?と考えるタイプの女性だ。

ー何か裏があるのか?

「実はね。今夜のパーティーに、狙ってる人が来るのよ。」
「それはもしかして、結婚したい相手とか?それなら俺じゃなくてパパと行った方がいいんじゃないか?」

ジェフみたいなジゴロがパートナーでついていったら逆に印象を悪くするのではないか?ジェフはその綺麗な眉をひそめた。

「パパは今出張中。貴方は私の大学からの友達。今夜のパーティーは金持ちの独身女性も結構来る。私はパーティーに参加できるし、貴方は北欧マダム以来のお相手を探せる。何か問題がある?」
「全くないね。」

お互いにウィンウィンの関係なら気楽だ。

「お店はオーブリーでいいかしら?」
「任せるよ。」

高級紳士服を取り扱う店の名前を告げると、シルビアは更にアクセルを踏み込んだ。



スーツ一式を購入し、ついでに普段着と靴も揃えた後、ジェフとシルビアは彼女がチェックインしている部屋に移動した。
ジェフは買い物をその辺に適当に積み上げるとシャワールームに飛び込んだ。
熱い湯でキャリアウーマンと肌をあわせた名残を消していく。ついでに投げつけられた嫌みも。
泡を立ててジュニアも優しく洗ってやる。次第に長く首をもたげてくるそれを手に取り、やっぱり短くはないよな、最後の踏ん張りが苦手なだけでさ、とひとりごちた。


シャワーを終えて部屋に戻るとシルビアがベッドの上で雑誌を広げていた。
靴を脱いだ素足が赤のスリット入りドレスから大胆に覗いている。
ジェフにいたずら心が沸く。

そっとベッドの端に座り、ふくらはぎに唇を寄せた。

「ばか、くすぐったい。」

クスクス笑いながらも嫌がっている様子はない。ジェフはそのまま舌を出してゆっくり舐め始めた。

「大事なパーティーの前に男の匂いつけていく気は無いわよ。」

口ではそう言いながらシルビアはジェフの舐めている足を持ち上げ、頭を越えて踵を彼の背中に置いた。

「匂いは付かないよ、舌だけなら」

ジェフはベッドに上がり、体を彼女の足の間に納めた。彼女の足を背中に乗せたままもう片方の足を開かせ、その先に舌を進めていった。

ーこれが友達関係って言えるのか?

そう、友達には違いない。
これは金銭収受した分の行為ではないから。
あれこれ買わせた分のお礼でもない。単に今ジェフが女の体に触れたかっただけ。
彼女にしたところで、今ジェフがしていることに文句を言わないどころか、甘い息を漏らしている。ということは彼女自身も気持ちよくなりたいと思っているのだ。

ーでなけりゃ男が風呂に入ってるってのに、無防備にベッドの上で足を見せているはずがない

上目遣いにシルビアを見る。彼女は雑誌を放り投げ、恍惚の表情で唇を震わせていた!
ジェフは既に満足だった。彼はなにより女の喜ぶ顔を見るのが好きなのだ。彼の父親がそうだったように。
手を彼女の尻に回す。柔らかい弾力が更にジェフを刺激する。

この関係を言葉にするならセックスフレンド、つまり友達、だ。ジェフは自分に都合良く解釈して更に舌を進めていった。
彼女の弱いところはどこだろう。挿入を意識しなくていいなら、とことん遊べるジェフだ。

パンティのラインに沿って舌を這わせる。
一瞬、リリーの荒れた手が頭に浮かんだ。
ジェフの舌が止まる。そして軽く頭を振った。

ー彼女は間違いなく俺の友達。こんな真似は絶対にしない

そう思った途端、ジェフの下半身に充血感が走った。慌ててリリーを意識の外に飛ばす。

ー今はこの体に集中だ。

ジェフの舌の動きが速くなった。




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