ルカとカイル

松石 愛弓

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私って、美味しそう?

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 のどかな昼下がり。
 鴨の親子が大きなお尻を振りながら、のんびりと草原を歩いていました。

 なぜか、親鴨は鍋や白菜、長ねぎ、シイタケなどの野菜を背負っていました。
 10羽の小鴨たちは、親鴨の後ろを楽しそうについてゆきます。
 そんな鴨親子を、ギラギラと目を輝かせ、よだれを垂らしながら、大勢の肉食獣が見つめていました。

 親鴨のプリプリとした大きな肉厚のお尻と、丸々とした美味しそうな腹肉に、皆の目は釘付けです。
 一匹の肉食獣が食欲を抑え切れず、親鴨に向かって走り出しました!
 それを皮切りに他の肉食獣たちも、おたまと菜箸とコンロを持って走り出します。
 鴨鍋にする気、満々のようです!

「カイル、鴨親子が!」
「助けよう!」
 パパにおつかいを頼まれ、空を飛んでいたルカとカイルは魔法を発動しました。

 瞬間移動で鴨親子の所へ行き鴨たちを抱き上げると、すぐに空へと身を隠しました。
 地上では、突然消えた親子鴨を必死で探す肉食獣たちが、すったもんだの大騒ぎです。
 おたまと菜箸とお茶碗が乱れ飛んでいます。

「危ないところを助けていただいて、ありがとうございました!」
「「「「「「ありがと~ごじゃいました!」」」」」」
 小鴨の輪唱?がとても可愛いです♪

「なんでこんなに狙われるのかしら? 皆、ギラギラした目で私を見るんです」
 不思議そうな顔の親鴨さん。

 そりゃあ、よく太った美味しそうな鴨さんが野菜や鍋を背負って歩いてたら、鴨鍋にしてくれと言ってるようなものかもしれませんね。
 と、ルカとカイルは思ってしまいました。

「とにかく、この格好で歩くのは危険ですよ!」
 とりあえず、ルカが注意すると、
「「「「「「きけん、でちゅよ!」」」」」」
 小鴨たちもそう思っていたらしく同意しました。

「今日は野菜と鍋を買ってくるようにお使いを頼まれたんです。でも、鍋にするにも肝心の肉がありませんよね?ハイエナさん、どうするつもりなのかしら?」

 ハイエナさんのお鍋の主役は、きっとあなたですよ。
 とは言えないルカでした。

 このまま、ハイエナさんの家へ鴨親子を行かせるわけには。
 ルカとカイルはハイエナさんの家まで付き添うことにしました。

 ハイエナさんの家に着き、ドアをノックすると、
「鴨さんかい? 自分でドアを開けて入ってきてくれ」
 と、ハイエナさんのワクワクしたうわずった声が聞こえてきました。

 どうも、不自然。

 と思ったルカとカイルは、鴨親子を木陰に隠してからドアを開けました。その瞬間、

 バサァッ!!!

 ドアを開けると大きな網が飛んできて、ルカとカイルを捕えてしまいました。

「やっぱり、鴨親子を食べる気だったのね!」
 地引網で捕まった魚の気持ちが少し分かった気がした、ルカとカイル。

 すぐに風の刀で網を破壊し、ハイエナを抑え込み、赤ず〇んちゃんのおばあさんに分けてもらった、善い事をしたくなる腕輪をハイエナに嵌め、お使いの野菜と鍋を置いてハイエナの家を出ました。

「あ~、背中が軽いわ~。鍋やら白菜やら重かったのよ~」
「「「「「「のよ~~」」」」」」
 羽をパタパタさせて凝りをほぐす親鴨さん。真似をする小鴨ちゃんたち。

「鴨さんたちの家まで送りますよ」
 鴨親子のよちよち歩きは可愛いけど心配です。

「「「「「「らっき~~♪」」」」」
 小鴨たちは大はしゃぎで喜んでいます。
 ルカは小鴨たちを背中に乗せて飛び、カイルは親鴨を背負って飛びました。

 飛行中、イケメンカイルにドキドキした親鴨がカイルの背中で卵を産み始めました。
 鴨池に到着すると、卵をお腹の下で温めている親鴨に、みんなビックリです。
 7羽の小鴨が増えるようです♪

「「「「「ばいば~~い!また会おうね~!」」」」」
 小鴨たちの可愛い声に見送られて、清々しい気持ちでルカとカイルは夕焼けの美しい空を飛んだのでした。
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