動物たちの昼下がり

松石 愛弓

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洗濯は最高♪

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 よく晴れた日、アライグマは川で洗濯していました。
 10mくらいの川幅に、豊かな清水がゆったりと流れています。

「あら、アライグマちゃん。洗濯してるのね」
「うん。ぼくは洗うことが趣味なんだ。よかったら、猫さんの服も洗ってあげるよ」
「本当? 私、水が苦手だから助かるわ~♪ あっ、アライグマちゃん、何か飛んで来たわ!」
「人食魚だ!」
「えぇっ!?」
 猫は1秒で20発繰り出せる高速ネコパンチで、次々と飛んでくる人食魚を叩き落しました。
「あたたたたたたたた!!」
「猫さん、すごい!」
 さらに飛んでくる人食魚を、アライグマは洗濯中の大きなタオルで包み獲りました。
「うわぁ! 人食魚がいっぱい獲れちゃった!」
「さっそく、焼いて食べましょうよ♪ じゃなくて、人食魚がいる川で洗濯なんて危ないじゃないの!」
「だって、不思議の森の川って、どこでも何かいそうだし、人食魚って白身魚でとっても甘くて美味しいんだよ! 揚げ物にすると最高なんだ♪」

「このお鍋って、揚げ物にも使えるかしら?」
 美味しい揚げ物の話を聞きつけた、通りすがりの鍋を背負った鴨親子がアライグマに尋ねました。
「大きなお鍋ですね! このお鍋なら、一度にたくさんの人食魚を揚げれそうだ♪」
「「「「「わ~~い!」」」」」
 子鴨ちゃんたちは、もう人食魚をもらえると思って大喜びです。

 不思議の森にある油の木から鍋に油を汲んできて、魔法で温め、人食魚を揚げ始めました。
 ジュワ~~ッ!!
 油と魚の焦げる香ばしい良い匂いが辺りに漂ってゆきます。
 匂いにつられて、ネズミたちも集まってきました。

「「「「「「アライグマさん、大きなお皿を持ってきたよ!」」」」」」
 数十匹のネズミたちは、よいせよいせとお皿を担いできたのでした。
「おっ! 用意がいいね♪」
 アライグマは大きなお皿に、揚げた魚をどんどん盛ってゆきます。
「「「「「「わ~~い♪」」」」」」
 揚げた魚をふうふう冷ましながら、皆は大喜びで噛り付いています。
「みんなで食べると美味しいね♪」
「「「「「「うんっ♪」」」」」」
 満腹になって、ポンポコリンのお腹でアライグマたちが河原で寝そべっていると、川面が大きく揺らぎました。

「「「「「人食魚デラックスだ!!」」」」」」
 ネズミたちが騒ぎはじめました。

 4mはありそうな、大きくて太い人食魚が近くで泳いでいるようです。
「なんでこの川にこんな大きな魚がいるの?」
「川底は魔界とつながっているからね!」

 ザバァッ!! のしのし…。
 魔界の魚には足が生えてる魚もいるようです。
 白くて太い大根足を惜しげもなく披露しながら、人食魚デラックスが陸に上がって来ました!

「「「「「うっそぉ~~~っ!!」」」」」
「人食魚デラックスさん! お肌がすごく白くて綺麗ですね!」
「そこまで太るのは勇気がいったでしょう!」
 なんとかおだてて?その場をしのごうとしますが、人食魚デラックスはどんどん迫ってきます!
 
 鴨が捕まりそうになった時、偶然通りかかった怪獣が人食魚デラックスを背負い投げして助けてくれました。
「怪獣さん、ありがとう! ぼく、人食魚デラックスを料理します!」
 料理すれば味見できる♪と思ったアライグマは、さっと手を上げました。

「うむ。美味しく調理してくれよ」
 怪獣さんは大皿の前にどっかと座り、期待に満ちたキラキラお目めでアライグマを見つめました。
「まかしといてください!」
 袖もないのに腕まくりのポーズを決め、アライグマはマイ包丁(名前入り)で、どんどん調理してゆきました。
 大きな人食魚は、大量の刺身やスープや煮付けやマリネや焼き魚や揚げ物に調理されました。不思議の森で収穫してきた果物やミルクで作った、デザートのフルーツポンチやフルーツパフェ、フルーツケーキ、果実汁まで並んでいます。

「おぬし、なかなかやるな!」
 怪獣はゴキゲンで食べ始めました。そしてもちろん、猫や鴨やネズミもご相伴にあずかっています♪

「おっ! 今日は何のパーティーなんだい?」
「うわ~っ! おいしそう!」
 森の仲間がどんどん集まってきました。
 みんなで舌鼓を打ち、笑い声が溢れます。
 喜んで踊りだす動物たちも。

「やっぱり、洗濯は最高だね♪」
 アライグマは満足そうに、シマシマ尻尾を揺らしたのでした。
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