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色とりどりのフルーツが宝石のようにキラキラ輝く大盛りのタルトがずらりとガーデンテーブルに並べられ、紅茶が良い香りを漂わせていた。
「こんなにたくさん」
美味しそうなタルトに感動し、すっかり心を奪われてしまったエミル。 聖女の頃は、スィーツにもあまりお目にかかれなかった。
「さぁ、どうぞ」
フランツ王子に促され、着席する。
「すごく美味しそうです。太っちゃいそう」
などと言いながら、太ってもいいから完食しようと心は決まっていた。
タルトをフォークで刺して少しずついただく。
濃厚な生クリームと甘い果実とタルト生地のコンボが美味しすぎる。
あぁ、幸せ♪
甘いタルトの世界にどっぷり浸かってゆくエミルを、微笑ましく見つめながらフランツ王子が話しかけた。
「エミルさんの魔法、ダイナミックで凄かったです! 僕にも教えていただけますか?」
キラキラ輝くフランツ王子の少年のような瞳に、
「私でよければ」
すっかり美味しいスィーツに胃袋を掴まれているエミルは快諾する。
「エミルさんがサファリナ王国を救うためにダーク魔術師と戦ってくれた時、エミルさんには無関係なことなのに命懸けで戦ってくれて、困ってる人を放っておけない優しい人なんだなって、僕、感動したんです!」
フランツ王子はエミルを熱い眼差しで見つめた。
「そんな、私なんて……」
聖女の頃、どんなに頑張っても褒められることなど皆無だったエミルは、褒められても何と答えていいのか分からなくて、頬を染めた。
「実は僕も困ってるんです。 エミルさん、助けてくれませんか?」
フランツ王子が、ずぃっと近づいてきて、あまりに真直ぐ見つめるので、エミルは恥ずかしくなってきた。
「何を、困ってらっしゃるのですか?」
王子が近づいた分だけ、後ずさりしてしまう初心なエミル。
「あなたを想うと、胸が苦しくなるんです。 楽にしてくれませんか?」
「?」
恋愛経験が乏しいエミルには、どういう意味だかさっぱり分からない。
エミルの不思議そうな表情を見て、遠回しな表現は通じないと悟ったフランツ王子は直球でいくことにした。
「あなたが好きです! 僕の妻になっていただけませんか?」
紅潮した頬で告げられたフランツ王子の真剣な告白を、すぐには信じられなくて、
「本当ですか?」
思わず確認してしまう。 婚約破棄された時、もう自分は結婚に向いていないのだと思い込んでいた。 なのに、晴天の霹靂だ。
「本当です。 僕では、無理でしょうか?」
急にしょんぼりしてしまったフランツ王子を見ていると、なんだかエミルまで悲しくなってきた。
フランツ王子には、笑っていてほしい。
そう強く思う、自分の気持ちに気付いてしまった。
「そんなことありません。よろしくお願いします」
「エミルさん!」
一瞬にして立ち直ったフランツ王子は、輝くばかりの笑顔をエミルに向けた。
(こんなに大切に想ってくださるなんて。 私もこの方を幸せに出来たらいいな)
優しいフランツ王子と微笑み合い、エミルはとても暖かい気持ちに満たされたのでした。
end
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
毎日、しおりをはさんでくださった方がおられて、うれしかったです。
「こんなにたくさん」
美味しそうなタルトに感動し、すっかり心を奪われてしまったエミル。 聖女の頃は、スィーツにもあまりお目にかかれなかった。
「さぁ、どうぞ」
フランツ王子に促され、着席する。
「すごく美味しそうです。太っちゃいそう」
などと言いながら、太ってもいいから完食しようと心は決まっていた。
タルトをフォークで刺して少しずついただく。
濃厚な生クリームと甘い果実とタルト生地のコンボが美味しすぎる。
あぁ、幸せ♪
甘いタルトの世界にどっぷり浸かってゆくエミルを、微笑ましく見つめながらフランツ王子が話しかけた。
「エミルさんの魔法、ダイナミックで凄かったです! 僕にも教えていただけますか?」
キラキラ輝くフランツ王子の少年のような瞳に、
「私でよければ」
すっかり美味しいスィーツに胃袋を掴まれているエミルは快諾する。
「エミルさんがサファリナ王国を救うためにダーク魔術師と戦ってくれた時、エミルさんには無関係なことなのに命懸けで戦ってくれて、困ってる人を放っておけない優しい人なんだなって、僕、感動したんです!」
フランツ王子はエミルを熱い眼差しで見つめた。
「そんな、私なんて……」
聖女の頃、どんなに頑張っても褒められることなど皆無だったエミルは、褒められても何と答えていいのか分からなくて、頬を染めた。
「実は僕も困ってるんです。 エミルさん、助けてくれませんか?」
フランツ王子が、ずぃっと近づいてきて、あまりに真直ぐ見つめるので、エミルは恥ずかしくなってきた。
「何を、困ってらっしゃるのですか?」
王子が近づいた分だけ、後ずさりしてしまう初心なエミル。
「あなたを想うと、胸が苦しくなるんです。 楽にしてくれませんか?」
「?」
恋愛経験が乏しいエミルには、どういう意味だかさっぱり分からない。
エミルの不思議そうな表情を見て、遠回しな表現は通じないと悟ったフランツ王子は直球でいくことにした。
「あなたが好きです! 僕の妻になっていただけませんか?」
紅潮した頬で告げられたフランツ王子の真剣な告白を、すぐには信じられなくて、
「本当ですか?」
思わず確認してしまう。 婚約破棄された時、もう自分は結婚に向いていないのだと思い込んでいた。 なのに、晴天の霹靂だ。
「本当です。 僕では、無理でしょうか?」
急にしょんぼりしてしまったフランツ王子を見ていると、なんだかエミルまで悲しくなってきた。
フランツ王子には、笑っていてほしい。
そう強く思う、自分の気持ちに気付いてしまった。
「そんなことありません。よろしくお願いします」
「エミルさん!」
一瞬にして立ち直ったフランツ王子は、輝くばかりの笑顔をエミルに向けた。
(こんなに大切に想ってくださるなんて。 私もこの方を幸せに出来たらいいな)
優しいフランツ王子と微笑み合い、エミルはとても暖かい気持ちに満たされたのでした。
end
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
毎日、しおりをはさんでくださった方がおられて、うれしかったです。
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