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殺気の花火

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 銀猫の姿に変身しシャルルの部屋へ瞬間移動すると、シャルルは無事だった。

「銀猫ちゃん!」
 僕を見つけるなり駆け寄って抱きしめる、シャルルの体温に安堵する。
 室内にエミリーさんが居ないことを確認してから、僕はシャルルにつぶやく。

「今すぐ、この部屋に結界を張ります。じっとしてて」
 突然しゃべりはじめる銀猫に、シャルルは驚きを隠せない。
「えっ? 今の声、サファーロ…?」

 結界を張ると同時に、

 バチィッ!!

 殺気が結界にぶつかってくる音が聞こえた!
 やはり、僕の婚約者であるシャルルも狙われているのか。
 間一髪、間に合ってよかった。

 不思議そうに僕を見つめるシャルルと目が合う。
 ちゃんと説明しないといけないな。

 シャルルを見つめ、話し出す。
「王様の殺害計画を邪魔したことを恨まれて狙われている。宮殿外の加担者たちをまだ捕まえていないから、その者たちから放たれた殺気が集まってきているんだ。多分、刺客も送られている。僕の部屋がかなり荒らされていたから、シャルルが心配で来た。今夜は、結界を張ったこの部屋で君を護衛するから」

 冷静に話す僕を見ながら、自分たちが命を狙われていると知ってシャルルの瞳が怯えだす。

「それから…君が以前、町で出会った銀猫を愛でているのを見て、君の愛情を受けていた銀猫がうらやましくなって…時々、銀猫に変身して君のそばに現れてしまいました…。猫にまで嫉妬して、猫の振りをして、すまなかった…」

 僕はシャルルの腕からするりと降りて着地し、前足をきちんと揃えて頭を下げた。猫の土下座は珍しいかもしれない。
 シャルルは、そんな僕をすぐに抱き上げ、やさしく背中を撫でてくれた。

「謝らなくていいんです。だって、銀猫ちゃんがサファーロに似てたから可愛がっていたのですもの」
 優しく微笑むシャルル。
 
 なんだ。
 僕は自分に嫉妬していたのか。
 銀猫といる時も、シャルルは僕を想ってくれていたんだ。
 猫の振りをしてしまった罪悪感が一気に軽くなり、代わりに嬉しさが込み上げてくる。

 僕はソファに座らせてもらい、サファーロの姿に戻った。

 その時。
 突然、部屋の灯りが消えた。シャルルが怖がって僕の腕を掴む。

 部屋に張った結界には幾つもの殺気がずっとぶつかっていて、摩擦で火花をあげていた。

「花火みたいだね…」
 僕は結界を破られないように、さらに強固な魔法をかけながらつぶやいた。

「私…サファーロが心配です。あなたが命の危険にさらされるくらいなら、今からでも逃げましょう?」
 悲壮な顔で僕の腕を捕まえ、シャルルが懇願する。

「そんな無責任なことは出来ないし、今から逃げても命を狙われることに変わりはない。僕は王様を殺そうとした人たちを捕まえたのだから」

「…でも、私、サファーロを失いたくない。無責任と言われても、あなたが生きて私のそばにいてくれるなら、王太子の話も断って宮殿を出て、安全な所で暮らしたい…」
 僕にしがみつき、震えるシャルル。そんな彼女をなだめるように背中を撫でる。

「大丈夫。心配しないで、シャルル。確かに、こんなに多くの殺気や刺客の相手は僕ひとりでは手に負えない。だから、父に魔法使いを20人ほど派遣してもらうことにするよ。即急に宮殿外の加担者たちを全て捕まえたら、穏やかに暮らせるようになるさ」

 不安に揺れる瞳で見つめるシャルルに言いきかせる。

「こんな状態は長くは続かない。僕は何があっても、一生きみを守るから。信じて」
「…はい」

 僕は不安に震えるシャルルを抱きしめた。
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