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白亜の宮殿で   シリアス風

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 白亜の宮殿の門前に、ひとりの美しい青年が佇んでいた。

「パパ~!」
 どう見ても20代にしか見えない青年の胸に、少女は飛び込んでゆく。

「私ね、湖で溺れて、この人が助けて家まで送ってくれたの!」
 青年は少女の言葉を聞きながら、愛おしそうに抱きしめた。

「サーシャを助けていただき、ありがとうございました。こんな山奥まで登るのは大変だったでしょう。ぜひ、休憩していってください」
 白銀の長い髪をかきあげる姿が麗しい。長身のモデルのような彼は、僕たちを門の中へといざなった。

 門からエントランスまでも長距離だったが、廊下もかなり長そうだ。
 高すぎる天井、豪華な絵画、立派な調度品、たくさんの大きなシャンデリアに煌めく室内。
 こんな山の上に、こんなに広い敷地、豪華な宮殿…魔法で造った宮殿なのだろうか?

 客間に通されると、執事や侍女が紅茶やお菓子を用意してくれた。
 見たこともないような煌びやかなお菓子たちがずらりと並ぶ。
 まるで、スィーツバイキングみたいだ。

「どうぞ召し上がってください」
 麗しい笑みを浮かべて、サーシャの父が勧めてくれる。

「ありがとうございます!」
 モーリスとエミリーは、嬉しそうにスィーツバイキングを始めてしまった。

「すみません。気を使っていただいて」
 僕が遠慮がちに言うと、

「娘の命を助けていただいたのです。よかったら今夜はここへ泊っていかれませんか? 何か力になれることがありましたら言ってください。 
 ああ、でも、サーシャがこんな凄い美男子をうちに連れてくるから、恋人だと紹介されるのかと思ってドキドキしてしまいましたよ」
 悪戯っぽく、サーシャ父が笑った。

「パパったら~! 私はパパが一番好きだよっていつも言ってるのに、焼きもち焼きなんだから~♪」
「パパもサーシャが一番好きだよ~♪」
 ラブデレっぷりが半端ない、幸せ親子だ。でも、若いお父さんだな~。

「それにね! サファーロさんは美男子だけど、今後、女装する予定らしいの! サーシャはもっと普通の感覚の人が良いから~!」
「これ!そんな失礼な言い方をするものじゃありません! でも、なんで女装なんて?もったいないですよ?」

 不思議顔のサーシャ父に、モーリスが説明する。
「それは、愛のためなんですよ! サファーロ様は愛する人の趣味のためなら女装もいとわない方なのです!」
「そうです。愛する人のためなら、それくらい」

 ふっと微笑む僕に、モーリスは感涙する。
「サファーロ様、カッコイイ…」
「泣くな、モーリス…」
 シャルルが、「後で百合の誤解をキッチリ解いておかないといけないわね」と思っていることは、知らなかった。

「ところで、僕たちは白竜の宝玉を探しているのですが、白竜の住処をご存知ありませんか?」

「…白竜の宝玉や住処を探して、どうするのです?」
 急に、冷ややかになったサーシャ父の声色に驚く。

「白竜の宝玉が病に効くと聞いたので、シャルルのおばあさまに届けてあげたいと思って探しているんですが…」

 サーシャ父はシャルルに目を向け、霊視しているようだ。
「…なるほど。おばあさまには、赤色の宝玉が効きそうですね…」

「そんなことまで分かるのですか?!」
 僕が不思議に思っていると、

「実は、白竜の宝玉は私が管理しているのです。今、隣国の王族に貸していますから、一時的にサファーロさんに貸すように話をしましょうか?」と言ってくれた。

 信じられないような申し出に、僕は深く頭を下げる。
「いいんですか? 是非、お願いします!」

「わかりました」
 サーシャ父が、パチンと指を鳴らすと、一瞬で執事が隣国の使者を連れてきた。

「この方に、白竜の赤の宝玉を貸し出すように」
「御意」
 平身低頭の隣国の使者は、僕たちに一緒に受け取りにくるように言った。

「国境を超えるので手続きをしてもらってください。宝玉は、使用後は早めにこの人に返してくださいね」
「はい! まさか、宝玉をこんな形で貸していただけるとは…。助かります。ありがとうございます!」
「いえ。お役に立てて、私も嬉しいですよ。おばあさまの病が治るといいですね」
 サーシャ父は、優しく微笑んで僕たちを見送ってくれた。

 僕たちは、隣国の使者と一緒に王の宮殿へと瞬間移動した。

 エントランスの前では豪華な噴水が美しい水飛沫を上げている。

 ずっと気になっていたのか、モーリスがつぶやいた。
「サーシャちゃんのお父さんって、一体、何者なんでしょうね? 若過ぎるし、山の上に不自然な豪華すぎる宮殿に、白竜の宝玉の管理まで任されているなんて…」
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